第4話

第4話 邂逅遭遇(1)

「私、行くよ」


 お昼にサンドウィッチを食べた後、お礼に私は、おばあちゃんと旦那さんの畑の仕事をお手伝いした。



畑仕事なんて生まれてからやった事がなかったけれど、収穫の時期を終えた畑は、土を均して、生えている雑草や蔦を焼くことで、次の収穫のための準備をするのだと教わった。



なので、私の仕事は、雑草や蔦などを引き抜いては、火の元へ集めることだった。



 しばらくして、今日の仕事が終わった。辺りは夕日で真っ赤に染まる。そうして今に至る。おばあちゃんは私の言葉に静かに頷く。



「そうかい、どこに行くんさね。」



「分かんない、だけど行かなきゃいけないところがあるんだ。」



私は夕日を背にし、真っ直ぐに畑を見つめる。ほんのちょっぴり手伝った畑は、先ほどとは打って変わり、均されている。私が均した土は、私に勇気をくれた。



「あんたはまだ若い。好きなように生きなさい。」



「生きなさい。」それは、昨日の私が諦めてしまった“今”を乗り越えるための力強い

声援エールとなった。



振り返り、おばあちゃんと向き合う。



「おばあちゃん、ありがとう!」



「ばあちゃんは何もしてないよ。あんたが頑張ったのさ。」



おばあちゃんはそう言うと、変わらぬ歩幅で私に近づき、私の手に手を重ねる。重ねられた手は何かを握らされた。



「気をつけてな。」



「ありがとう、おばあちゃん、聞きたいことがあるんだ。この辺りに川とか背の高い草木が生えてる場所知らない?」



「川ならこの道を真っ直ぐ行ったら見えてくるよ。そこが行くべきところかい?」



「多分そうなんだと思う。だから行くよ。」



「そうかい、そうだ。あんたの名前教えてな。ほら、どこに行ったか教える時、必要かもしれないべ?」



「私は翼、中川翼!」



おばあちゃんは私の名前を全身に染みわたらせるかのように何度も頷きながらニコリと笑う。



「いい名前じゃ、大事にしなよ。」



そう言われ、私は少し後悔する。一時だけでも、別の名前を騙ったこと…そんな愚かな過去…私は反省する。そして決意する。



「うん。大事にするよ。おばあちゃんの名前は?」



「私は、佳代かよ。佳代じゃ」



「佳代…佳代おばあちゃん。絶対忘れない。」



「それ、もう行きんしゃい。」



そう言うおばあちゃんの目は潤んで、今にも決壊しそうだった。



「うん、またね。佳代おばあちゃん」



「ああ、また会おう、翼」



こうして私とおばあちゃんは別れた。手の中には佳代おばあちゃんの暖かさが詰まっている。



何かを握らされたが、広げたら佳代おばあちゃんが逃げてしまいそうで、開けることはできなかった。

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