第3話 外柔内剛(2)

 私が部屋に入るのを確認してから男も部屋に入る。この部屋は…



部屋の中は暗く、上の方にある小窓からうっすらと入る光は部屋を頼りなさげに照らしていた。中にはマットや病室用のベッドなど入院患者用の道具が所狭しと収納されている。



ガチャッという音が後方で鳴り、慌てて振り返る。部屋の鍵を閉められた!



「まあ、座れよ」



男は私の後ろにあるベッドを指差した。本当は逃げ出したいけれど、唯一の逃げ道である扉は男の後ろにあるため、どうすることもできない。仕方なく男から距離を置いて座る。



「そんなに警戒するなよ、ただゆっくり話そうってだけさ。」



「…何の話ですか」



「色々さ、色々」



そういうと男は立ち上がり、私に向かってきた。



「いや!来ないで!」



「あ?」



私の強い拒否反応に、男は低い声で怒りをあらわにした。私はその声にすくみ上がる。男は更に歩を進め、私との距離を人1人分空けて、ベッドに座る。私は固まったまま、顔だけは下を見ている。



「今俺さ、仕事が忙しくてさ!イライラしてるんだよね。」



そういうと、私の膝の上に男が手をのせてくる。触られている。ゾッと嫌な感じが、身体中を巡り、胃から込み上げてくるモノや感情を抑え込む。



 私が抵抗しない事を良しとしたのか、男の手はさらに伸びて、私の胸のあたりをまさぐり始める。



強い力で掴まれ、痛みが先行し、思考を刺激する。私は恐怖で声が出せない。



行為はどんどんエスカレートしていき、男は私の首筋に顔を近づけ、首を舐める。皮膚に感じるヌメっとした感覚を妙にはっきりと感じて、私の思考は真っ白になった。



自然と涙が溢れ出る。



「泣いてるの?いいね、そそるじゃないか」



そういうと、男は私の上に覆い被さって、私の胸を弄っていた手を徐々に下げていく。



私の腹部の辺りに固いが擦り付けられた。抵抗しようにも覆い被さられている為、動けず、恐怖も相まって何もすることができなかった。



男の手が腰のあたりに触れた時だった。



「いってぇ!」



そう言って男は飛び上がると、ベッドの上から離れる。その際、ベッドの脇に重ねられていた机や小道具が飛び散る、四散したモノは様々な音を響かせながら踊り出す。



「てめー!何しやがった!?」



男は私の身体を弄んでいた手を抱え、私を睨みつける。息は上がり、目は血走っていた。しかし、私も何が起きているのか分からない。



「ぐるるる…」



急に私の後ろ、つまりベッドが置いてある場所から更に奥の陰から唸り声が聞こえる。なんで!?後ろは壁のはず…



 すると、陰からドスッ、ドスッと大きな足音と、黒く歪んでいるが出てきた。徐々に陰から出てくる全体に、私は驚愕する。

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