第2話 女神様のチュートリアル

 世界を救う勇者。


 確かにそう言った。


 俺の目の前に突然現れた女神ー、いや、俺のほうがこの女神様の前にのかもしれないが、とにかくこの俺に「勇者になれ」と、そう言ったのだ。



「ええっと、つまり、要するに、最近よく聞く異世界転生?いや、転移?ってやつですか?」


「うむ、理解が早くて助かる」


「と言うことは、まさか魔王とか倒す系ですかね?」


「いや、そういったたぐいでは無い。そなたには『悪しき炎』を鎮火ちんかしてもらいたいのだ」



 そう言って女神ヴィアンテ様が胸の前に手をかざすと、半透明の立体地図のような物が現れた。



「まずはこれを見よ。これはスペルマップ、これからお主に出向いてもらう街の地図だ」



 よく出来たジオラマを3Dで表示したような地図だった。


 その地図の一部から、黒い煙のようなものが立ち上っている。



「これは?」


「これがお主を呼んだ悩みの種、世界を滅ぼしかねん『炎』だ」


「これを俺が消すって事ですか」


「そう、この『炎』を消せるのは勇者のみ。勇者のみが使える『聖なる塔』の力で『炎』を鎮火して欲しいのだ!」



 なるほど、ちょっと整理してみよう。


①スペルマップで『炎』の出現してる場所を探して現場へ行く。


②勇者である俺が『聖なる塔』とやらの力を使って炎を消す。


 ……という事か?



「うむ、おおむねその通りだが、間が少し抜けておる。お主には『炎』の現場へ行って鎮火活動ちんかかつどうをしてもらうのだが、お主一人では『炎』は消せんのだ」


「えっ?それはどうして……」


「それは『炎』の存在している本当の場所が同じ現実空間では無いからだ」


「ええっ……と、つまりわかりやすく言うと?」


「うぅむ…わかりやすくか。簡単に言うと……『炎』の場所は空間を一枚隔いちまいへだてた別次元にあるのだ。だからこちら側からは触れる事もできん。だが『炎』が大きく育ってくると、その『熱』エネルギーだけはこちらの次元にも影響を及ぼし、焼いてしまうのだ」



 まぁ、なんとなく言わんとしてる事は理解できた。


 いろんな漫画、アニメ、ラノベに触れている現代っ子で良かった。



「そこでだ。その別次元の『炎』を消すために、次元の壁にあなを開ける協力者が必要なのだ」


「なるほど!その協力者が穴を開けている間に俺が、空間の向こう側の『炎』を消すわけですね?」


「そういう事だ」



 というわけで、さっきの手順を少し修正して、こうなる。



①スペルマップで『炎』の出現してる場所を探して現場へ行く。


②『協力者』が次元の壁に穴を開ける。


③俺が『聖なる塔』とやらの力を使って穴の向こう側の『炎』を消す。



 というわけだな!?



「その通りだ。今回はあらかじめ、穴を開けられる協力者を用意しておいた。私も時折サポートするので、さっそく鎮火活動ちんかかつどう鎮火活動ちんかつをお願いしたい!」


「ま、まぁ、そんなに難しい仕事でもなさそうですし……わかりました!」


「かたじけない。ではこれよりお主を今回の現場であるサンブルク王国に転移させる。詳しい話はそこで協力者から聞いてくれ」



 ヴィアンテ様が俺に手をかざすと光が溢れだし、俺はサンブルク王国とかいう国へと転移させられた。

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