第31話 親衛隊

貧民窟に戻ると、明らかに別人になったナオを見てみんなが驚いていた。


ぼさぼさだった髪は整えられ、服もボロボロのものでなくなっている。


「じゃあ、これが私のギルド証だから」

私は自分のギルド証を手渡す。これが身分証明書になる。


「ありがとな。・・・じゃなくて、ありがとうございます」

「そうだね」

ついお互いに笑みがこぼれた。


ふと私はあることに気付いた。

「ちょっと待って」

「なんだよ?」


私はナオの腕を手に取る。

「なにこの傷。こんな傷だらけで都に行けないでしょ」

「仕方ないだろ。病院に行くお金もないんだから」

「待って。私が今治す」


私は白魔法を使いナオの傷を一瞬で治した。もちろん無詠唱。


「おいおいまじかよ。あんた魔法使いだったのか」

「まあね。でもこのことは秘密」

私は人差し指を唇に当てて答える。


「わかった。秘密は守る。だけどこれも何かの縁だ。他の人たちのこともその魔法で治してくれないか?なあ頼むよ」

「高くつくけどいい?」

「なんだよケチだなモモコは」


そんな冗談を挟み、結局私は貧民窟にいる全員の傷を治して回った。

口止めするのを忘れずに。




三日後、都からギルドへ使いがやってきた。

「私は王様の親衛隊隊長のキンジだ。それでオセロを開発したものは誰だ?」


「それはこちらの者です」

ギルド長はナオを連れて行った。


「お前がオセロを開発したのか?」

「はい、そうでございます」

「名は?」

「モモコでございます」


しっかりと私が教えてた通りの言葉遣いが出来ている。


「ではついてこい。王様がお待ちである」

ナオは複数の兵に囲まれて、ギルドを出て行った。








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