第32話 パイプ
ナオが都に行ってから一週間後、ようやく彼女は戻ってきた。
「うわっ!まさかそれが褒美・・・?」
私は後ろの荷車を指さす。
「そう、これ全部王様から貰ったもの。もう一度モモコにきくけど、本当にあたいが全部貰っていいんだよな?今更やっぱなしとかなしな?」
「もちろん、それは全部ナオのものだよ」
そういうと、ナオは小さくガッツポーズをした。
私はナオと貧民窟に来た。
結局、褒美はナオの取り分を除き、全てを貧民窟のみんなにあげることにした。
「これで少しはましな生活が送れるだろ」
「案外ナオもいい奴なんだ」
私はナオを見直した。
その後、私たちは飲食店に来ていた。
「今日はあたいのおごりだ。好きなだけ食っていいぞ」
「どこかで聞いた言葉・・・」
料理を食べながら私は尋ねた。
「それで都はどうだった?」
「そりゃあ、大きかったぜ。それに人もたくさんいたぞ」
「王様とは会った?」
するとナオは鼻の下を指でさすった。
「もちろん。でも想像していたのと全然違った」
「結構なおじいちゃんだったの?」
「その逆さ。若くて美男子だったんだ。あれはモテるだろうね、うんうん」
ナオは腕を組みながら何度も頷いていた。
「ここでモモコに一つ報告がある」
「なに?」
「この度、あたいは宮中で働くことになりました!」
「えっ!!それ本当!?」
「やだなー、嘘なんかつかないって。まあ働くとしてもモモコとしてだけど。もしかしてあたいにやきもち焼いてる?」
「ううん、おめでとう!心から祝福するよ」
素直に私は嬉しかった。理由は二つ、ナオが以前の生活から脱却できたこと。そしてもう一つは・・・
「それでナオに頼みが一つあるんだけど」
「いいよ、なんでも言っちゃって」
「宮中の様子を逐一私に報告してほしい」
ナオは唸って考え込む。
「無理だった?」
「わかった。その頼み、あたいが引き受けた」
「ありがとう」
よし、これで宮中とのパイプが出来た。
「もとはといえば、私が宮中に入れたのもモモコのおかげだしな。それでどんな情報が欲しいんだ?」
「バラガンって人がいると思うんだけど、その人の情報が欲しい」
「バラ・・・ガン・・・。わかった」
「理由は―――」
「どうせ人には言えない事情があるんだろ?分かってるって」
「ありがとう」
三日後、再び都から使いが来て、ナオは私に見送られながら都へ向かった。
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