第30話 貧民窟
都から使いがやってくる三日後までに、私の替え玉を見つけなければならない。
役人の子供ではすぐに替え玉だとばれるだろう。
替え玉にするならやはり身寄りのない子供が一番だ。
そう思って私は、町の外れにある貧民窟にやってきた。
ここに住んでいる人たちはみなやせ細っている。
私のような身なりの者がここを訪れることは珍しいようで、みなじろじろと見てきた。
と、その時私ほどの年齢の女の子を見つけた。私と同じ黒髪のショートカットだった。
「ねえ、ちょっといいかな」
私は優しく声をかける。
彼女は警戒した目つきで睨んできた。
「大事な話があるんだけど・・・?」
まだ警戒心は解かれない。
「私がご飯をおごるからさ、話だけ聞いてくれないかな?」
彼女はご飯という単語に反応を示した。
これはもう一息だ。
「ね、お願い。好きなだけ食べていいからさ。話だけ聞いてくれない?」
こうして私は彼女を説得することに成功した。
近くの店により、私はしばらく彼女のたべっぷりを眺めていた。
すでに三人前は食べている。
私もお腹が空いていたが、このままではお金が足りなくなりそうだったので、飲み物だけ注文した。
「それで話をしてもいいかな?」
「うん」
彼女は食べながら返事した。
私は事の経緯を説明した。そして替え玉になってほしいと頼むとあっさりと了承してくれた。むしろ都に行けることに喜んでいた。
「私が褒美を全部もらってもいいんだよな?」
「うん。それが今回の依頼の報酬ってことで」
「褒美って王様からの褒美だろ?」
「たぶん」
「そんじゃ、あたいは一生遊んで暮らせるぜ」
彼女は嬉しそうだった。
「いい?今日からあなたはモモコとして生きるのよ」
「わかってるって。あたいは今日からナオじゃなくてモモコ」
「そのあたいってのもやめて。私って言って」
「はいはい。私はモモコ」
店を出た後、私とナオは服を買って貧民窟に戻った。
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