第10話 試験
「じゃあ、まずは私と組手をやろう。君の力量を図る」
ギルド長は私に向かって構えた。
私も構える。
「いきます!」
お父さんとお母さんがいなくなってから四年、私はただ過ごしていたわけではない。
魔法の存在を知った私は、前世の知識を生かして魔法の勉強に励んでいた。
この世界には四色の魔法があるらしい。それは赤、青、緑、白。
そしてこの魔法は、一人一色までしか持てないようだが、私は赤と白魔法を習得した。これが転生の特権ってやつだ。
もちろん無詠唱まで極めた。
が、今この状況で魔法を使えば、きっと後々面倒くさいことになるのはわかっている。
私は子供らしくギルド長の足を叩いた。
「ほら、どうした?もっとこい!」
ギルド長が煽ってくる。
しかし、ここで本気を出す訳にもいかないので、私は足を叩き続ける。
「君の力量は分かった。一応聞くけど魔法は使えるのかい?」
「いいえ、使えません」
これは嘘。
「剣は?」
「握ったこともありません」
これも嘘。
「そうか。なら試験はこれで終わりだ」
「私は合格ですか?」
「あぁ、合格にする。後で受付に来てくれ」
我ながらひどい演技だと思ったが、本当に合格するとは。
どうやら私はついているみたい。
受付に行くとさっきの受付嬢がいた。
「あなたにはギルドはまだ早かったみたいね」
「いえ、私、合格しましたから」
どや顔で彼女に言ってやった。その時の驚いた顔は傑作だった。
ギルド長から会員証を貰った。
「今回君を合格させたのはその諦めない心に惹かれたからだ。その若さで私に立ち向かってくるその度胸、雄姿を高く評価させてもらったよ」
私はこれで合点がいった。
「ただ、君はまだ十歳だから、受注できる依頼にも制限がかかるだろう。最初は簡単なものから始めるといい」
「はい。ありがとうございます」
これで私はギルドの一員になった。
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