第2話 ぶつかる
最近のちょっとしたこと。タンスの角に小指をぶつけるのと似ているが、ちょっと違う。
週明けの二日目、火曜日。同じ混雑の通勤線。ちょっと近すぎるような気がしていた。
しばらく違う人と自分の持ち物と、皮膚がなんというかつながったというか、溶けていたような気がした。いつもの混雑とは、すくなくとも先月6月あたりとは違う感じ。
触るというか、忍び寄るというか、なんなのだろう。自分の意味?そして社会と全体の宇宙の事?そういうイメージが差し込まれた。通勤時間の32分少々のところどころだが。
ここは東京都品川区。通勤線を下車し会社までの会社の路上コンベアに乗ったところすこしは外気に触れて自分に戻った気がする。
作った自宅、仲間の会社、国家の土地などと、単に外気、つまりは地球の環境と比べると、体と気分が「開ける」気がするのは、どういうわけなのか忙しすぎて、すくなくとも今日は考えられない。
でもだんだんと範囲というか、狭いと感じる感覚は、考えられないと決めたところで、「ある」のだ。
ふわふわといい匂いと音と爽やかない人工的な風のオフィスに入ると、「ある」ことはキャンセルされる。
潜った自ら出た自分を撮影した動画を、逆再生したようなものじゃないか?と先日生まれたペルソナが叫ぶ。
なるほど、生まれた子供が老人の首筋を歯ブラシで皺を広げる作法がどうこう言われるならば、アメンボウが2日かかった書道の展覧会制作準備原稿が、影に立てかけた大きな体をした女装家の故郷から持ってきたサスマタが左側に倒れたはずみで破れてるので、慌てて庇おうとした右手の小指が無残にも骨が折れるほど折れ曲がる痛みをしばし休止できるはずなんだと、ここにいる竹山純生はブツブツ言いながらもオフィスの飲み物をすすった。
混ざってきている。
突然、防災放送が「動かぬように」と繰り返した。¥
ふと見ると、自分の座る姿がフロアに溶け込み、腕が前方の数人の腕と接続、肋骨が円弧を構成しているのに気がついた。
溶けていっている。
折り返しすることはできない。警告なしである。
意味がしばらくあったようだが、それはまた次回。
未達のふたつ 個玉疎音 @SoinCodama
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