未達のふたつ

個玉疎音

第1話 すれちがう

閃光が逆転して、時間が前に戻った。そして意味がわかった。取り戻したことにもなる。

 行為者「(トリガーを押す、で)ぐぉぉーぬ、、、なは」

 対象者「え」

 ソギル「、、、ふっ」

失われた世界という事象ではなく、移動したのは僕とその連結のふたつという考えが正しい。構成している時空を測定し直し、監察官ソギルは僕に接続し同調成功は、直前だった。

衝撃音は物質を引きちぎり、生命兆候消失を畳み掛ける。起こった事はこうだ。

行為者アテルガニ(仮名)は彼が年齢243年5ヶ月12日の朝に宇宙暦1343D14ダイゴ駅を通過する時刻にコミューターに仕掛けたイントルーダーを起動させ、乗客乗員そしてダイゴ駅周囲の住民を含む416名を巻き込む重犯罪は、アテルガニによると記録されている。


行為者への同調と隔離は間に合わないと判断された。それは事実上犯罪者への罰則適応である。犯罪者は救わずとするのである。

そして僕の移動を最優先するとされたのであるが、それを思うとソギルはこのところ癖になりそうな苦虫顔になった。その僕が救護対象だと判断する権限がないのはわかる。だが誰がそう判断しているんだ?ソギルは片方を歪めた唇を震わせた。


所属亜体時空局にある記録には、イントルーダーが416名を、生きていた位置から引き込み消失させ、首都ヒッターの200/3/4にある郊外クリガイェは、僕が住んでいた。僕の時空価値数は、分岐点敷設に達するので、救護するのである。価値数は、僕が73年2ヶ月5日後にロッソコルサ軍の指導者として寒門の乱を勝利に導く点が大きい。

僕の名前は、カローヴァ・ヤング。女性である。彼女は自分を僕と呼ぶのである。


同調し、ダイゴ駅から1駅前ビノー駅で下車させた。手順は次の通り。

彼女は学友3名とダイゴ駅から通学機に乗る約束をしていたのだが、ソギルは車内レストランでコーヒーを購入した男の足元を軽くすくって、彼女と隣席者の服にこぼさせた。隣席者はコーヒーの男に激昂し二人は乱闘、仲裁するカローヴァはコーヒーの男から証人となるべく、ビノー駅で駅員への立会を求められる。小さな失敗から大きな暴力への連鎖は彼女の嫌う所であることがわかっていたので、学友へ連絡し下車する。

時点1343D14でカローヴァは生き残った。分岐は接続された。


時点1343D14寒門の乱の新たな記録をソギルを知ることになったのは、自分がダイゴ駅行コミューターに乗っていたとき、日課にしている時空フィードバックを行っていた時驚いてコーヒーをこぼしてしまった時である。


カローヴァとアテルガニ(仮名)が同じ存在であり、アテルガニの時空価値数報告書が意図的に不達のまま秘匿された事、カローヴァは、後の寒門の乱おいてアテルガニがロッソコルサ軍参謀となっている事、ふたりは自然法に反したふたつである事。


ソギルは、こぼしそうになったコーヒーを手で受けて、目の前に座っている二人にかからないようにした。よく見ると、カローヴァの隣席者は、アテルガニ(仮名)だ。

ソギルは、ふたりと失われた世界の416名になることを選択した。


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