一日一善??

******

2009年の別ブログより(加筆修正あり)。これは、いま思い出しても、なかなか経験できないことだったと思います。あまりに現実感がない。でも、物証はある。

******

さる情報筋によると、結婚式や披露宴の列席代行という仕事があるらしい。確かに、「結婚式代理出席」などで検索すると出て来る。。。


関連記事を眺めつつ、私のアタマの中には、今までもふとした時に何度も思い出してきた、不思議な出来事がまたしてもフツフツとよみがえって来ました。

それは、もしかして夢だったんじゃないか?いや、でも、写真が残ってるから現実だ。という感じの、何とも言えない感触の出来事だったのでした。


始まりは、ひょんなことからA子という人物と出会ったところから。

A子は初対面の私に、ずいぶんとプライベートな話をして来た。そして、なぜか再び会う機会があって、そこから私たちは急速に個人的に仲良くなった。当時、A子は、結婚を考えてる相手がいて、その実現に精力的に奔走してるようだった。


ほどなく、結婚式の案内が来た。その瞬間は、私たちは仲が良かった、というか、A子は本当にいい人で、ちょっとしたことで親切にしてくれたりしていたので、喜んでお祝いしてあげたいと思い、知り合ったばかりではあったけど、出席することに。


案内状には、披露宴(祝賀会)だけでなく、式の方にも出席してほしい旨、書いてあった。キリスト教式の式に出るのは好きだし…、その時間に行くと返事した。


当日。

朝も早よからJRに乗って、とある地方都市へと向かう。

駅からもけっこう歩いて、早くも多少疲れたうえ、知ってる人は誰もいないので、近くの人に軽く自己紹介のあいさつをしてから式が始まるまで、私はポツネンと華やいだ人々の様子を眺めていた。


やがて、式が始まるアナウンス。

ゾロゾロと式場に移動する人々に混ざって、私も歩き出した。

そして、廊下を進み、いくつか角を曲がった時…

♪ぴょ~~ ひょろひょろりぃ~♪みたいな音楽(?)が聞こえ始め、明らかに「神前式」で執り行われることが判明。私はひるんだ。

手違いだ。

手違いで、私に「式に列席するように」という案内が来てしまったのだ。。。

慌てて立ち去ろうとする私に気づいた人が、「いいんですよ。そのまま進んでください!」と言う。

「いえ、私、親族じゃないんですっ!」

「いいんです、ぜひ、出席してください」

なヌっ!?


親族以外が神前式の式に出席するなんて、あり!?(※実は、あるらしいけど…)


オロオロするままに、神様の部屋へと、否応なく流されて行く私。

しかも、なにげに押されて、「どうぞどうぞ」と、新郎新婦の後ろに用意された一列の親族席に通されそうになる。

青くなってアタフタした私は「ですから、わ、私は親族では…」

「いいんですよ!」

って、いったいどこの世界に、この前知り合ったばかりの者が、親族席にドッカリって…ありえない。。。


ふと見ると、先ほど、新婦の友人だと言っていた人が親族席にいるじゃあ、ありませんか!!

なヌっ!?

しかし、私は固辞。

っていうか、ワケがわかんない~っ!!


ソソクサと、最後部のその他大勢立ち見席に隠れるように紛れ、一息つきながら、コトの成り行きを見つめる。。。

式次第が進み、親族紹介。

新郎側は、着席コーナーの親族がちゃんと親族としての続柄(?)を言って名乗って行く。

そして、新婦側。

両親、兄夫婦の次、なんといきなり、元の職場の上司とか、友人(さっきの人だ)などなど。そして、席が一つ空いている。。。

後ろのその他大勢席も紹介されることになり、それが全員新郎の親族で、最後の最後に「新婦友人」として名前が呼ばれてしまう私。。。

場違いな気分が拭えず、「あ、いや、ど~も~」みたいにしか言えず。。。


何とか終わって、額の汗を拭き拭きしてると、次に祝宴の間に案内されました。

ここまで来たら想定しておくべきだったのだが、あまりのことにそんな知恵も湧かないままに通された席が、なんと、今度は新婦の両親の隣。

なヌっ!?バリバリの親族席じゃあ、ありませんか!!

もう一人のご友人と私で、ご両親を挟んでいる。なんでやねん。。。


まったくの初対面のご両親のお相手をさせていただき、一つも気が抜けないままに、宴もたけなわ。新郎の父のスピーチが止まらず、会場を縦横無尽に移動しいしい涙ながらに語る浪花節さながらの身の上話に、あちこちからすすり泣きが。。。

そういえば、会場内は、テーブル一つにおさまってる新婦側親族(+友人)以外は、全部、新郎関係者なのだった。。。


そして、最後に、「新郎新婦が全員に当たるように心を込めて選んだプレゼント」の大抽選会。

次々と名前を呼ばれて前に出て、二人から包みを渡される列席者の方々。家電が当たってる人が何人かいたりして、あちこちから歓声が上がる。けっこう豪華だ。

私のテーブルも全員呼ばれ、「あれ?呼ばれました??」と私に集まる視線。

「いえ、まだ。。。」

私も周りも、何となく心配になって来たところ、最後の最後に私の名前が。。。

ご両親、「残り物には福があるから、きっと一番いいモノよ~!」と。

「恐縮です~」と言いながら前に進み出て、小さな包みを受け取って席に戻る。


見たところ細長い箱なので、お母様が「ネックレスかしら~?」なんて言ってしまうのもムリはない。開けるように促されて包みから取り出したモノを見て、全員のアタマの上に「???」が並ぶ。。。

果たしてそれは、プラスチックの持ち手にステンレスの細かい刃を並べた長ネギカッターだった。。。


「あらっ!!」と声をあげたお母様、「ごめんなさ~い。それじゃあ、あんまりだから、よかったらこっちも持って行ってください」と、自分に当たったお菓子の箱を渡そうとするので、「いえ、そんなけっこうです。カッターは、あれば使うモノですから(しかし、今だに未使用)、うれしいです。。。」

しかし、お母様はムリヤリ、私の引き出物の紙袋にお菓子の箱を押し込んだ。


なんだか、ヘンにじっとりとした疲労感に包まれる中、お開き。

あいさつをして、帰り際のロビーで、もう一人のご友人と一息ついていると、お父様がやって来た。「今日は遠い中、本当にありがとうございました」と深々と頭を下げ、「少ないですが、お車代の足しにしてください」と封筒を差し出す。そういえば、あちこちでそういう受け渡しらしき光景が展開されていた。


「ありがたく、駅までタクシー乗っちゃおうかな~」と内心つぶやいたのもつかの間、お父様と古くから顔見知りらしいもう一人のご友人が「そんな、お気づかいなく。車で来てますから」と封筒を受け取るのを拒否した。

お父様は二人分の封筒を持っていたのだけど、その一言で「あぁ、そうでしたか。それでしたら…」みたいな感じで、「気をつけてお帰りくださいね。これからも、○○子と●●男をよろしくお願いしますね」と、私もひっくるめてだったらしいあいさつを終えて去って行ってしまう。


えっと~、あのぉ~!?

私、このご友人とも初対面で、いっしょに来たわけでも、これから送っていただくわけでもないんですけどぉ??

とは、もちろん言えないので、アレレ~??なまま、私は一人、駅までの道のりを、お菓子で重くなった引き出物袋と着替えの一部と長ネギカッターを持って、死んでもタクシーには乗らず、ダラダラと歩き、ぐったりとJRに乗り込んだのであった。


その後は、新婚旅行のお土産と結婚式の日の写真を送っていただいたり、近況が年賀状で2年間届いたりしたのだけど、いつしか音信は途絶えました。


今思い出しても、その日一日の出来事は、まるでキツネにつままれたみたいに現実感がない。

けど、写真には私が写ってるし、それを見ると、あのヘンな疲労感と、♪ぴょ~~ ひょろひょろりぃ~♪の音、それとともに感じた衝撃だけはよみがえる。

そういえば、台所の引き出しに未使用の長ねぎカッターも確かに入っている(私は長ねぎが大の苦手!)。


っていうか、ホントのところ、いったいぜんたいあれはナンだったんだろ??

その日一日、いいことをした、ということで、いいのだろうか。。。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る