(文字通り)降りかかった災難。

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2005年にヨソに書いたものから転載。お食事中の方にはおすすめしません。

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昨日ほどついてない日はなかった。


「思い立ったが吉日」とばかりに思いつきで宝くじを買うことに。でも、売り場がいやにすいてると思って、買った後に窓口の人に「ちなみに、今日の暦は何ですか?」と訊いてみたら、「仏滅です♪」とのお答え。あちゃー。


そして、仏滅のことなんかすっかり忘れた夜。

髪を切りに行って、いつものようにヘンな頭になったのも、もういつものことなのでどうでもいいやと思いながら、帰りの電車。


座ったら、隣のグループが大騒ぎで、何度も体にぶつかってくるので、大量の空席が出た駅で、別の場所に移動したら、今度は、斜め向かいにこっちをジッと見る女性が。

気づいて私が見返すと、あからさまに視線をそらすけど、また見る。私の髪、そんなにヘン? でも、だからって、そんなに見なくっても…と、不快に感じ、間に立ってる人の陰になるように、少しズレて座り直したら、なぜか、その立ってる人も少しズレて、全然効果なし。

ジッと見られることがとてもイヤだったので、降りる駅に着くだいぶ前に、もうドアのところに行っちゃおうと思って立ちました。降りるのにちょうどいいドアに行くには、ジッと見る女性の前を通らなくてはならないし、その時、そのドアの前には中学生のグループが陣取ってたので、しかたなく一つ手前のドアのところに行きました。


思えば、これが非常にいけなかった。


降りる駅。少し遠いドアから下りたので、改札への階段に向かってホームを歩くこと数メートル。この数メートルによる時間のロスが運命を左右したのでした。


すでに人でいっぱいの階段を下り始めて間もなく。すぐ後ろでゴホッという音が聞こえたと思ったら、私の脚になにやら液体がかかった感触。とっさにヤぁな予感がして振り向くと、黒のパンツスーツでビシッと決めた女の人が、あらぬモノを口から噴射していたのでした。「かかった…」と悟り、瞬間、ゲゲッと思ったものの、介抱してあげた方がいいだろうかとも。


とーころが!

その人は、自分の服も汚れてるし、たぶん、ほかの気づいてない人の服にもかかってると思うのに(私は脚に直接かかったから気づいた)、その人混みの中を、何ごともなかったように装いながら階段を下り続けていたのでした。


「強気…」。と思った瞬間、このような人に介抱必要なし!と判断。そのとたんに、自分の身に、文字通り降りかかってきた災難にゲンナリし、この運命ったらいったい何?という叫びとともに、自分の空きっ腹からも吐き気が来てたまらなくなりました。


その人は、階段の最後の方でもゲホっとなって、慌ててトイレに駆け込んでたけど、そんなに具合悪いなら、階段を勢いよくトントントンなんて下りてそんなに胃を揺すっちゃダメだってば、と、今さら言ってみたところで、もう遅い。


すっかり具合悪くなった私、改札を通る前に、自分の後ろをよく見てみたら、スカートにもかけられてて、凍りつきました。居酒屋で友だちが、とか、家で家族が、とか、そういうシチュエーションなら覚悟もできてるけど、あまりに突然の、見ず知らずの人の、となると…。想像以上の大ショックなものでした。


駅のトイレで自分の被害状況の確認をしようとも思ったけど、今行けば当の本人と鉢合わせることになるし、と、諦めました。

吐き気ですっかり涙目になりながらも、安くなる日だったので買い物しよう、と、スーパーへ。でも、食べ物を見ると気持ち悪いし、食欲もまったく失せてて、どうしていいか混乱した頭で、結局、カートに入れたのは牛乳だけ。


足には、あらぬモノの残骸がはっきりと見えていて、これ、触りたくないし、どぉしようと、相変わらずこみあげるムカつきにさらに涙目になりながら、ソロリソロリと歩を進め、家に着いてもすぐに中に入る気になれず、気持ちと吐き気を落ち着かせようと、夜風の中でボゥとしてました。


しばらくして気を取り直して、携帯で友だちに電話。別に、そのような許可を得なくてはならないわけじゃないのに、こうこうこういうワケなんだけど、このスカート捨ててもいいよね? と。


友だちの慰めを得て、なんとか家に入り、玄関でそっとスカートを脱ぎ捨て、ストッキングのままシャワーへ行って、恐る恐るストッキングを脱いで捨て、オニのように泡立てた石鹸で足を洗う。それでもなお、何とも言えない気分だったので、しばらく待って、少しは食べる気になってから梅茶漬けのみを流し込んで、念のためにセーターも洗い、頭の中で何度も繰り返し再生される、その瞬間の衝撃映像を忘れようと振り払いながら、ボロボロの気分で布団へ。


そのこと自体もショックだけど、そういう目に遭ってしまった巡り合わせっていうことの方が、もっとショックなのでした。

「そういえば、仏滅って言ってたなぁ」。

枕元の時計で、とっくに大安の日に突入してることを確かめて、これ以上の災難はもうないだろうと、ちょっと安心してから眠りました。


彼女も、もちろん十分に気の毒なんだけど、皆さん、具合が悪い時は素直にかがみましょう。立ったままクシャミみたいに飛ばすのはやめましょう。カンベンして。


※思えば、執拗にジッと見ていた女性は、私の上にそのような運命を見て取っていたのか、それとも、その女性に私は呪いをかけられてたのか? ああ、こわい。

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