映画の中の名/迷セリフ

******

2006年年明けに、ヨソに投稿したものです。

その後、セリフの字幕が別バージョンになってる作品もあったので、DVD化するとか何かの際に見直したり、別の翻訳家が手がけて「変わる」ということもあるようですね。

******

明けましておめでとうございます。

年の暮れは怒濤のうちに過ぎ去り、なだれ込むように新年に突入した格好です。


というわけで、どういうわけでもないのだけど、本日、正月休みの最終日(もうかぃっ!!って感じ)、新春特別企画をお送りします。


これまで観た映画の中から、心に留まったセリフ5題


数えきれないほど観た映画の中に、ふっと考えさせられたり、よくぞ言ってくださいましたと喝采したり、なるヘソ!とヒザを打ったり、それってヘンじゃないかと思ったりするセリフがあります。

今日はその中から5つ。


1.風と共に去りぬ~「明日は明日の風が吹く」

2.28日後~「もう、新しい小説は読めないのがさびしい」「新しい音楽も」

3.東京物語~「私、ずるいんです」

4.タイタニック~「君はベッドの上で死ぬんだ」

5.恋人達の予感~「一日の終わりにおしゃべりしたいのは君なんだ」


1.風と共に去りぬ~「明日は明日の風が吹く」

原語では、確か、Tomorrow is another day. (細かいところが違うかもしれません。すみません)と言ってるような…。

これに対する、この、字幕の日本語がピンと来なかったという意味で、私の中ではずいぶん揉んだセリフです。

スカーレットは、超が10個くらい付くほどの前向きで能動的なキャラクター。この字幕訳が引っ掛かったのは、平たく言えば、待てば海路の日和ありみたいな「明日の風」っていう人任せ、自然任せ的なイメージが、スカーレットのキャラに対してものすごく違和感があったから。

むしろ、直訳の方がピンと来たのでは?

明日は、また別の日。新しい、まっさらな日。つまり、今自分が泣いてる今日という日や、それ以前の過去は過去として、明日から新たなスタートを切るのよっ!!っていう、能動的な決意やエネルギーが、原語の方がズバリと言い切れてると思いませんか?

自然な日本語を意識するあまり、意訳しすぎて、的をハズしてる字幕って、時々ある。


2.28日後~「もう新しい小説が読めないのがさびしい」「新しい音楽も」

映画タイトルがあってるかどうか、あやしい。しかも、セリフもちょっとうろ覚え。だけど、内容的にはあってると思うので、とりあえず。

これは、ものすごく「わかる!」と思ったセリフです。

確か、この映画は、何かの感染症が蔓延してほとんどの人が死んだ(と思われてる)地球の話で、わずかに生き残った主人公たちが、自分たちはこうして生き残ったけど、もうこの世に新しい小説や音楽が生まれないので、それを味わうことができないってことを嘆いて、ぽつりと言ったセリフです。

これを観た当時、私は、状況はぜんぜん違うけど、今後の残りの人生で、自分が読みたい本や映画を全部制覇することはできないだろうというさびしい事実に気づいてがく然とした気分をずっと持っていた時期だったので、こういうことに言及した主人公たちの気持ちがすごくわかるなぁと、かなり響いたのでした。

もう生まれて来ないこともさびしいけど、あるものすべてを味わえないことを知るのもさびしい、ってことです。


3.東京物語~「私、ずるいんです」

有名な小津作品から。

亡くなった夫の父(義父)に、もう息子のことを忘れて、これからの自分の人生の幸せを考えてほしいと言われ、私はそんないい人じゃない、亡くなった夫のことだって、忘れてる時間がだんだん増えてきていて、そんなあたたかいことを言われる資格は自分にはないという思いから言った一言。

このセリフも、「わかる!」系。

大したことをしたり思ったりしてるわけじゃないことは自分が一番よくわかってる時に、誰かに褒められたりすると、私も心の中で「私、ずるいんです」(腹黒い?)的なことを叫ぶことがあります。


4.タイタニック~「君はベッドの上で死ぬんだ」

言わずもがな、Jキャメロン版タイタニックから。

このセリフも、ちょっと違うかもしれないけど。要するに、タイタニック号が沈み果てて、冷たい海に投げ出されたローズにジャックが、こんなところで死んではいけない、君はここから助かって、ずっと生き続けて、幸せな人生の後に幸せな最期を迎えるべきだというようなことを語りかけるシーン。自分は氷の海に浸かりながら(泣・泣)。

それまで私は、自分の最期の理想は愛する人の腕の中で、と、思ってました。そうじゃなきゃ、せめて畳の上で、と。

その一方、NHK大河ドラマの「利家とまつ」を見てた時、竹野内豊(役名は忘れました)の最期が戦の場で、倒れた土の上で目の前の一輪の小さな花を見ながら息絶えるという場面を見て、万一、最期が屋外だった場合は、目を閉じる前に名もない花を見られたら、せめてもの救いになるだろうと思ったこともありました。

しかしやはり。

このセリフを思い出すたび、幸せな最期が迎えられるような人生を、と、強く願い直すのでありました。


5.恋人達の予感~「一日の終わりにおしゃべりしたいのは君なんだ」

誰かと一緒になるとか、結婚するとか、そういう気持ちを表すのに、これ以上に言い当ててるセリフは、私の中では、ほかにありません。

「幼なじみ」とかいうフランス映画にも、似たようなのがありました。芸術家を目指す男の子が、普段は創作のことで頭が一杯で、時にはどこで何をしてるかわからないくらい没頭するだろうけど、一日の終わりには必ず君のところに帰ってくるとか何とか言ってたみたいです。

結局、一緒になるってことはそういうこと。かも。


というわけで、皆様、本年もよろしくお願い申し上げます。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る