第63話 ガンスリンガーのマント
俺たちは、師匠の館に帰り着いた。
そこかしこに、師匠との思い出があるのだろう。館にたどり着いた江奈はまた、黙り込んでしまう。
俺は、身支度を整えると、江奈に声をかける。
「ちょっとダンジョンの入り口に行ってくる。このダンジョンの入り口って入るときは門番とか見かけなかったけど、管理している人っている?」
江奈は気持ちを切り替えるように一度目を硬くつむり、顔を伏せる。顔をあげ、答える。
「ああ、アクアがダンジョンから出たかを調べに行くのね。入り口は常時監視されているわ。ナインマズルの8位、不動砲のマスター・ホルンパージが常時管理しているはずよ。門から入ってまっすぐに通りを進むとマスター・ホルンパージのお屋敷があるわ。」
「わかった。ありがとう。ちょっと様子を聞いてくる。話を聞いたら、いったん戻ってくるから、それまで休んでて。」
俺はふと思い立って、館におきっばなしにしていた荷物を漁る。前に宝箱から手に入れたポーションを取り出すと、江奈に渡す。
「これ、念のために渡しとくよ。」
「え、これって完全回復のポーションでしょ。クチキが持ってなきゃ。」
「エナさんに持っていて貰いたいんだ。俺の安心のためだと思って頼むよ。それにほら見ただろ、俺は怪我しても大丈夫だからさ。」
「そんな目で言っても説得力ないわよ。だいたい、そのままマスター・ホルンバーグのところへ行くつもりなの?」
そういうと、江奈はゆっくり部屋を出て、すぐに戻ってくる。
「これ、ガンスリンガーの見習い用のマント。フードがついているから顔を隠せるわ。着ている人多いから目立たないし。貸してあげる。」
「うん、ありがとう。」
私は受けとると、マントを羽織り、フードを目深にかぶる。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
氏名 朽木 竜胆(クチキ リンドウ)
年齢 24
性別 男
オド 27
イド 12
装備品
ホッパーソード (スキル イド生体変化)
チェーンメール (スキル インビジブルハンド)
カニさんミトン (スキル開放 強制酸化 泡魔法)
江奈の見習いマント
Gの革靴 (スキル開放 重力軽減操作 重力加重操作)
スキル 装備品化′ 廻廊の主権
召喚顕在化 アクア(ノマド・スライムニア) 送喚不可
魂変容率 17.7%
精神汚染率 ^D'%
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ふわりと、マントから昇る江奈の香りに包まれる。
「どう、目は、目立たない? これで俺もガンスリンガーっぽいかな。」
ちょっと江奈の香りにドキッとしてしまった俺は、照れ隠しに手を銃の形にして、かっこつけて聞いてみる。
「目はうつむき加減なら大丈夫ね。クチキも、鏡の間の試練を乗り越えているから、銃を取り返しさえすれば立派にガンスリンガーを名乗れるわ。あっ、でも、マスターの認定証がいるんだったわ……」
唇を噛み締める江奈。
(あちゃー。余計なこと言ってしまったよな、こりゃ。)
俺はぎゅっと江奈を抱きしめる。
「それじゃあ、行ってくる。すぐ戻るから。」
俺は腕のなかの江奈にささやく。
至近距離にある、江奈の瞳。
「うん。」
江奈の瞳に宿る意思を確認すると、俺は急ぎマスター・ホルンバーグの館へと向かった。
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