第64話 ダンジョンの変調
マスター・ホルンバーグの館を出て、急ぎ江奈の元へ戻る。
いろいろと凄かった。
マスター・ホルンバーグ本人には会えなかったが、代理人に師匠のことを含め、諸々の説明をし、アクアがこの焔の調べの断絶ダンジョンから出ていないことは確約してくれた。スキルに関わることなので詳細は明かして貰えなかったが。
多分、アクアはこのダンジョンの最下層に向かっていると思って間違いない。問題は、アクアがどれぐらいで最下層にたどり着くか、だ。
帰る間にも、辺りが騒がしい。
多分、マスター・ホルンバーグの代理人が、緊急避難の発令を出したのだろう。完全武装で駆け回るガンスリンガー達。家族を急ぎダンジョン外へ送る人で通りが混雑している。
ガンスリンガー達の殺気だっているが冷静な気配が伝わってくる。
後少しで師匠の館につくと言うところ。
それは、いきなりだった。
ダンジョンが、鳴動する。
震度7を超える揺れ。
俺は思わずその場にうずくまる。
視界のすみに、壁に建てられた建築群が、次々に崩落していく様子が映る。
轟音と立ち上る粉塵。
各種スキルや魔法とおぼしき光がそこここで見える。
どうやら防御系、結界系のスキル、魔法持ちが複数いるようだ。
揺れが、長い。
(く、間に合わなかったか。というか、こうなるか。)
これは多分、最悪の事態。
この鳴動は、ダンジョンに新しいダンジョンコアが設置され、新しいダンジョンマスターが生まれた証。
今まさに、現在進行形でダンジョンが作り替えられているのだ。
揺れがようやくおさまる。
ゆっくりと立ち上がる俺。
辺りは瓦礫が散乱し、ひどい有り様。
その時だった、俺の目の前に、モンスターがポップする。
瓦礫の隙間から這い出るように現れたスライム。人型を取ると、体を構成する粘体が変化し、その手には剣と盾が。そして体を覆うように鎧が現れる。
それはまるで騎士のような見た目だった。
俺は取り敢えず、騎士スライムと呼ぶことにする。
襲いかかってくる騎士スライム。縦一閃で斬りかかってくる剣を、ホッパーソードで受け止める。
斬撃は重い。
受け止めた俺の足が、ダンジョンの床にめり込む。
ただ、それ以上ではない。
俺は騎士スライムに、イドのブーストをかけた重力過重スキルをかける。
足止めにでもなればと思ったスキルだったが、俺の予想は外れてしまう。
俺の重力過重スキルがかかった瞬間、ぶちゅっと、騎士スライムは潰れてしまう。
スライム系だから、ここから反撃が来るかと身構える俺をよそに、騎士スライムは黒い粒子となって、渦巻く。
一つに集約し、そこにはひとつの装備品だけが残っていた。
「え、嘘でしょ。脆すぎる、いや俺が難敵とばかり戦って来すぎたのかな。もしかして、これが普通なのか。」
俺は拍子抜けしながらその装備品に手を伸ばした。
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