第29話 溺死の危機
辺りは薄青色のガスに包まれる。
その最中、俺はじたばた暴れながら、必死にアクアに訴える。
(死ぬ死ぬ死ぬ! 出して! すぐに出して!)
それを読心で読み取ったアクアは応える。
「今忙しいの。シアン化合物系のガスだから、クチキならそこから出てもどうせ死ぬの。さっさとエラを作るのだ。」
アクアはこちらも見ずに応える。アクアの、俺を包み込む右手の水が、表面で流れを作り始めている。どうやら溶け込んだシアン化合物が俺まで届かないように、体の方へ取り込んで処理している様子。
俺はそんなアクアの頑張りに気づく余裕もなく、必死にイド生体変化を作動させる。
(エラエラ! 何でもいいから早く!)
俺の首と肩の境、左右にエラのような何かが作られる。
ごっそりとイドを持っていかれる。
エラの出口から排水が始まり、何とか酸素の取り込みが始まる。
(うはっ。な、何とか息が出来るけど、気持ち悪い感覚だ、これ)
俺が何とか息をつなげている間に、アクアは左手一本で次々に投石を繰り返し、ついに一匹目の羽付きトカゲを打ち落とすことに成功していた。
俺はアクアの水に包まれたまま、持ち上げられてしまう。
体に巻き付く部分の液体の粘度があがって軽く締め付けられるようになり、運ばれているようだ。
アクアは俺をそのまま持ち上げたまま、薄青色のガスの中を走り出す。そして、投石で打ち落とし、落下してくる羽付きトカゲに駆け寄りながら無表情の顔で叫ぶ。
「クチキ、剣を正眼に構えるのだ。」
俺は揺れるアクアの手の中で、訳もわからずホッパーソードを取り出す。そのまま両手で握り、構える。
落下してくる羽付きトカゲの真下に来たアクア。大きく右手を振り、アッパーカット風に拳を打ち上げる。俺を、右手の中に入れたままで。
それまでとは比べ物にならないぐらいの揺れに翻弄されながら、俺は落ちてくる羽付きトカゲが眼前に迫るのを見てとる。
「剣を付き出すのだ。」
アクアの叫びに引っ張られる用に、剣を突き刺す俺。
アクアのアッパーカットの勢いをプラスした俺のホッパーソードは、易々と羽付きトカゲの鱗を貫通し、その心臓とおぼしき場所に突き刺さる。
羽付きトカゲが黒い粒子へと、変わる。
拡散しかけた粒子が一所にまとまり、一つの装備品へと結実する。
羽付きトカゲであったものは、黒い布のような形をとると、アッパーカットの勢いが消えていないアクアの右手の水の中へと飛び込んでくる。
俺の手元に来た黒い布。
(何だろ? この布。)
俺の心の疑問の声が聞こえたアクアが、別の羽付きトカゲに投石をしながら応える。
(それはターバンだから頭に巻くのだ。)
俺は言われるがままに頭に巻いていく。くるくると不器用に巻き付けていくが、留め方がわからない。とりあえず、すでに頭に巻いた部分に、端を巻き込んで処理する。
俺はステータスを開く。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
氏名 朽木 竜胆(クチキ リンドウ)
年齢 24
性別 男
オド 24
イド 6 (14) 3up
装備品
ホッパーソード (スキル イド生体変化)
革のジャケット
カニさんミトン (スキル 強制酸化)
黒龍のターバン (スキル 飛行)new!
Gの革靴 (スキル 重力軽減操作)
スキル 装備品化′
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
俺はステータスを見て、思わず水の中で叫んでしまった。
(全然トカゲじゃないじゃん! ドラゴンじゃん!)
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