第20話 部屋の外へ
俺は皮装の本を取り出すと、ゆっくりと棚の隙間に嵌める。
「ぴったりだ」
本から手を離すと、かちゃりと音がする。
どこか壁の奥の方で何かが動く音。からくり仕掛けか魔法によるものかはわからないが、駆動音と思われる低い音が壁越しに伝わってくる。
と、思った瞬間、急に動き出す本棚。ちょうど棚が目の前にあり、額にぶつかりそうになる。
慌てて後ろに下がる。
足元には片付けたゴミが。
ゴミを踏みつけ、バランスを崩して後ろに倒れそうになる。とっさに、目の前にちょうど飛び出してきた本棚の棚部分に掴まる。
残念なことに体を支えてはくれない。そのまま俺が後ろに倒れるにつれて、本棚が扉のように開いていく。
「うわっ」
結局そのまま地面に倒れ込み、もうもうと埃が舞い上がる。
「ごはっ。ごほ、うぇー。口に入った。」
俺は口に入った埃を吐き出し、立ち上がる。
もうもうと立ち込める埃が晴れると、目の前には本棚に隠れていた扉があった。
完全に壁と同化した作りの扉。壁と同じ材質とおぼしき取っ手っぽい出っ張りが、突き出している。
うっすらと見える扉の縁。壁と同じ材質で作られた扉が、一切の隙間もなく嵌め込まれ、壁と同化してようだ。それが皮装の本を棚にセットすることで、仕掛けが働き、僅かに壁と扉の隙間が出来て何とか扉の全体像が把握できる。
「押すか引くかする感じかな。でも、なんだろう禍々しい感じがそこはかとなくする。」
俺はすぐに扉を開けずに考え込む。ひしひしと危機感が伝わってくる。罠か敵なのかはわからないが、ここはダンジョンこの中。この先に、どちらか、もしくは両方であるの可能性が高い。
「よし。」
俺は小さく呟くと、部屋のすみにいき、少しだけ眠ることにした。
数刻後、座ったまま寝るっていた俺は目を覚ます。そして切った肉を一口食べ、ステータスを開きイドが回復したことを確認する。
「うーん」
大きく一つ伸びをして立ち上がる。
そして、ホッパーソードを構え、再び扉の前に立つと、唯一壁から飛び出した扉の取っ手に手をかけた。
ゆっくり引く。
動かない。
「あー。うん、ごほんっ。」
ゆっくり押し開く。
扉の先には、がらんとした空間が広がっていた。
俺は左右を見回しながら、踏み入る。
歩く度、コツコツと靴音が響き渡る。
音の反響からして、どうやらドーム状の空間らしい。
広間の中央付近に来た時、背後でバタンと音が響く。
急ぎ振りかえると俺が入ってきた扉が勝手に閉じていた。
嫌な予感が強まる。
急ぎ、左右を見回すが、何も見えない。
ぴちょんと水音がする。
鼻を刺す腐敗臭。
ふと、上を見上げる。
そこには見たこともないほど巨大なスライムが天井いっぱいに広がって張り付いていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます