第15話 イエロースラッグ戦
イエロースラッグは、ナメクジのように見えるが、大きな違いが1つある。それは触角が四本あることだ。
目の前の壁に張り付いているイエロースラッグも二対目の触角を振り回し、攻撃体制を取っている。
鞭のようにしなる触角を伸ばし、イエロースラッグが攻撃してくる。
俺は素早く自身に重力軽減操作のスキルをかけ、前に転がりながら迫り来る触角をかわす。
俺の立っていた地面を抉りながら、触角が通りすぎる。
「すごい威力。でも、本体の足が遅いのは致命的だね。」
俺は転がった勢いのまま素早く立ち上がり、イエロースラッグとの距離を縮める。
洞窟の壁の上の方に張り付いているイエロースラッグ。普通の冒険者であれば遠距離攻撃の手段がなければ攻撃しかねるような場所取り。
しかし、俺は軽くなった体で、洞窟の窪みに手をかけ、足をかけ、素早く登って行く。
その間にも振るわれる鞭のような触角。時にかわし、時にホッパーソードで弾き、ついにイエロースラッグが手の届く距離まで接近する。
俺はイエロースラッグの壁の上の場所を取ると、まずは伸びる触角の根本を狙って切りつける。次に、手のなかでくるりと逆手に持ち変えたホッパーソードを、突き刺す。
急所がわからないので、とりあえず何度も何度も様々な場所を突き刺していく。
みっちりと肉の詰まった感触が手のひらに生々しく伝わってくる。
イエロースラッグの全身を満遍なく突き刺し、一度ホッパーソードを抜くと、渾身の力を込めて足で蹴り落とそうとする。
粘液でべったり壁に張り付いたイエロースラッグ。
しかし、二度目の蹴りで何とか壁から剥がすことに成功する。
地面に吸い込まれるように落下していくイエロースラッグ。地面に激突すると一度大きく跳ね、そのままびたっと地面に張り付く。
俺は慎重に地面に降り立つと、イエロースラッグを両断しようとホッパーソードを振るおうとする。
その直前で息絶えたのか、粒子化し始めるの。
(装備化きたっ。)
俺はホッパーソードを振り上げたまま、その様子を見守る。
そして無事に倒せたことを理解すると、振り上げたままの姿勢でいたことがちょっと恥ずかしくなる。
軽く咳払いすると剣を収め、粒子の様子を見る。
イエロースラッグだった粒子は結実し、黄色い縄のようなものになる。
俺は急いで手に取る。
どうやら鞭のようだ。
ホッパーソードを一度外し、鞭を持ってステータスを開く。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
氏名 朽木 竜胆(クチキ リンドウ)
年齢 24
性別 男
オド 24
イド 7 (4down)
装備品
ツインテールウィップ (スキル MCドロップ率UP)new!
革のジャケット
カニさんミトン (スキル 強制酸化)
なし
Gの革靴 (スキル 重力軽減操作)
スキル 装備品化′
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「えっと、なになに。名前はツインテールウィップ?やっぱり鞭なのか。でもツインテール?」
俺は手に持つ鞭をよくよく調べてみる。
「この、先が二股に別れているのがツインテールってことか? でもどちらかと言えば、色的にもナメクジの触角だよな。いや、確かにあれも見ようによっては、ツインテールっぽいけどっ! でも断じてそんなに可愛いものじゃないだろ!」
俺は相変わらずの装備品のネーミングに脱力しかける。
「まあいい。それで、オドとイドは……。うん、オドが2上がるってことか。ホッパーソードの方が優秀だな。まああっちは三層の装備品だし当然か。スキルはよくわからないな。MCが出やすくなるってこと?」
俺はMCが何か頭を悩ませるが一向に思い付かない。
「……検証は一層でやろう。装備はホッパーソードにしておく。いざというときの回復手段も必要だしな。」
武器の装備が一種類しかステータスには反映されないので、俺は鞭をしまい、ホッパーソードを装備し直した。
それから俺は二層を探索し続ける。スマホ片手に迷わないように気を付けつつ、周囲の警戒も怠らない。
しかし、そんな警戒を掻い潜って、真上からイエロースラッグの触角攻撃が来る。
ギリギリで避ける。
(あ、焦ったー)
おればコロコロ転がりながら触角攻撃を避け続ける。
天井にべったり張り付いたイエロースラッグ。
(あれって、壁を伝っても届かなくね?)
俺は周りの様子を見るが、剣での攻撃は早々に諦める。
(さっそく出番か。)
俺は触角攻撃をかわしながらツインテールウィップを取り出す。
鞭での攻撃は初めてだが、なんとなくあたる直前に手首を返して先端に加速度を集中させるようなイメージだけはある。
とりあえず鞭を振り上げる。
長さは十分。しかし、全く別の天井の場所を叩いてしまう。
しかし、天井には軽く抉れた跡がつく。
(威力と距離は十分。しっかし扱いが難しい……)
俺は疎かになりがちな回避を気を付けつつ、何度も何度も鞭を振るう。
十数度目にして、ようやくイエロースラッグに命中する。
ピギャっと言う音をたて、イエロースラッグが地面に落ちる。
しかし、まだ死んでいないのがもぞもぞと動いている。
俺は練習も兼ね、何度か鞭をふるい、ようやく鞭が当たり始まる。しばらくすると、イエロースラッグは息絶えたのかおとなしくなる。
俺は鞭をしまい、ホッパーソードを装備してイエロースラッグに近づく。
「よっしゃ。倒した! 解体すっか。」
俺は新品の鉈を取り出すと、イエロースラッグの腹を裂き始める。
スマホを見ながら、小さな小さな魔石を取り出し、肉のおすすめの部位を切り取る。
「ここが、美味しいのか。なになに、エスカルゴ以上の旨みが詰まっているんだ。ふーん。」
俺は切り取ったイエロースラッグの肉をジップ付ビニール袋に入れ、しまうと次のイエロースラッグを探して探索を続けた。
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