裸の玲香

 その日の帰り、一人で帰っていたら、圭は閃光を浴びた。閃光は限りなく圭を襲った。圭はくらくらした。

 辺りの閃光が止むと目の前には鬱蒼とした暗い世界があった。森が現れて、他には何もない。圭の手にはバッグではなく杖があった。次の瞬間圭のすぐそばが閃光に覆われた。

 現れたのは玲香だ。玲香は裸で首に鎖がつながれていた。

「なによ? これ? 圭じゃない」と玲香が言う。

「何だろうね」と圭は言った。

 二人は森を歩いた。玲香は体が裸だと気づく。

「なんでこんな格好なのよ。それにどこ? ここは?」

 玲香は首に巻かれた鎖をいやそうに触りながら言った。裸の体を手で必死に隠していた。

「いったいどこだろう?」

「なんであんたの奴隷みたいにならなきゃならないのよ? しかも全裸よ?」

「さぁ?」

 二人で夜道を歩いた。玲香は頬を赤らめて手で大事なところを隠していた。

 歩いていると見たこともない巨大な獣が姿を現す。よく見るとそれは獣ではなく目の前にいるのは不気味なモンスターだ。

 圭は持っていた杖で必死に戦おうとしたが、モンスターは近づいてくる。この杖は魔法使いの杖ではないかという発想が浮かんだ。

 モンスターに向かって試しに呪文を唱えてみた。

「トロピカル・サンダー」

 しかし、杖の先から何も出ない。

 モンスターが口から放った閃光で圭と玲香は跳ね飛ばされた。

 地面に転がった二人は土だらけになる。玲香の大事な部分があらわになり、圭は目をそらす。

「ちょっと。ちゃんとしなさい! この世界で死んだらどうなるのよ」

 玲香は必死になっている。

「わかりました。わかりました」

 圭はもう一度呪文を唱えた。

「ファイヤー」

 圭がそういうと杖からオレンジ色の炎が飛び出した。炎はモンスターを包み焼き滅ぼした。

「何よ? トロピカル・サンダーって?」

「熱帯の雷って意味なんだ。俺もまだわからないんだ」

「ちゃんとして!」

 玲香は不機嫌そうに言った。

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