存在と時間
すこし
この星が人の住めない場所になったときに、星に残ることを決めた人々の間で決められた約束事だ。
地球の生きすぎた自然保護が結果として人類をはね除け、星で人が生活できる場所が限られるようになった。
大気の組成がかわり、酸素が異常に増えた結果、生物は適応性のない順に滅びていき、人類もそれに従うしかない所まで追い詰められた。
星で滅ぶか、新たな星へ旅立つか。
選択を迫られた人類は新たな星へと旅立つ道を選んだ。
つまるところはテラフォーミングだ。
人類がすむことの出来る星を探し、地球人好みにデザインをしてそこに移り住む。
太古の昔、ユーラシアの大陸で行われた
結果から言うと、その選択は成功に終わる。
太陽系近傍に見つけた程よい惑星へ、人々は自分勝手に住み着いた。
異常はなく、計画に遅滞はなく。
なんだか拍子抜けするほどにあっさりと、人類は地球人類であることを棄てる事に成功してしまったのだ。
ただ、そんな大進出の時代にだって外に出たくないという考えの人はいる。
地球という大地を離れたくない地元住民たちは、多くの人の説得にも首を振らず、限られた生活空間で人類という種を全うする決断をした。
いずれ自然に覆い尽くされ滅びの刻を迎えるその時まで、地球人類は必死に生きようと心に決めたのである。
その際、いくつかの決まり事が設けられた。
滅びをよしとしたからと言って、生存の放棄という自殺を選んだ訳じゃない。
生きるための努力のために、限られた資源と生活空間を守る必要があった。
その中の一つが「時間通貨」である。
国という単位が形骸化することを見越して、人々は共通する価値観を探し求めた。
貨幣という
考えた末に、人々は根本的な部分にたどり着く。
お金は、時間を掛けて働いたことに対する対価にすぎない。
ならば、時間をお金にすればいい。
人々が持つ時間とは何か。
それは、寿命だ。人として生きられる時間。生物としての
――人間には、賞味期限がある。
チクタク。ちくたく。時計の針が刻むがままに。
地球で生きる人々は、全員が時計を着用している。
自分の賞味期限を管理する「時間通貨」の端末だ。
時計の針は生まれたときに12時を示している。
そして死ぬときも同じく12時。
生物としての限界に限らず、個人としての時間を使い果たしたと判断して。
時計の針が12時を示すと、
この決まり事が設けられてから、既に3世紀。
地球人類は、当時の人々が思った以上に永く、続いている。
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