討伐隊の無謀さ

「討伐隊なんざを出しちまって、運良く魔族を倒しちまって見ろ。おっかねぇ復讐をされかねねぇ。あくまで今回は調査だ。その先はお強い軍隊を持っているこの国と貴族連中に任せるぜ。面倒なことはごめんだぜ」


 魔族の恐ろしさを知っているだろうジェガンが手をヒラヒラ振って討伐隊の結成を否定した。その発言に疑問を持ったルディがジェガンに質問する。


「でもよ、冒険者が魔族を倒した話はたまに聞くぜ。今回も冒険者で討伐してもいいんじゃねぇか?」

「そりゃ、相当腕に自信がある冒険者ならな。だが、駆け出しばかりのオカバコの連中には無理だ。その先のことを考えても荷が重すぎるぜ」


 その先、とは当然、魔族からの復讐である。ルディが言っている冒険者は吟遊詩人セージの詠う物語サーガに出るような一部の強者だけである。


 オカバコは駆け出しの冒険者が多く、冒険者の平均レベルも12に満たない。稀にレベル20以上の者もいるが、半ば引退に片足を突っ込み、後進の育成に力を注ぐロートルばかりである。そのような者たちで魔族からの復讐に耐えられる訳がない。


 だが、王や貴族が国を挙げて出張るならば、話は別だ。組織だった軍で魔族を討伐した事例は枚挙にいとまがない。それに国を挙げての討伐のため、魔族の復讐はに向けられる。


 二人の会話を耳にしながら、サラは唇に手を当てる。もう片方の手には一枚の紙を持ち、何事か考えていた。彼女サラが見ている紙はシャナンのステータスが書いてある紙であった。


 その紙を見つめ黙り込むサラの様子を訝しみ、ジェガンが“どうした”と言葉を掛ける。その声にハッとしたのかサラが気怠そうに応じる。


「…てっきり…その女の子がいるから……討伐隊を…組むと思ってたわ…」

「アン?何言ってんだ?シャナンがいるからだと?…おい、ちょっとその紙見せろ」


 ジェガンがシャナンのステータスを記載した紙をサラからひったくる。それを見て低く唸る。


「…シャナン。お前、一体何なんだ?」

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