勇者の素質
「このステータスは……紛れも無い!君は選ばれた勇者だ」
金属プレートに浮かび上がった文字を読み、アスランが驚愕の声をあげる。不思議そうに見つめる少女に、アスランが金属プレートを見せた。
名前:(未定義)
性別:女性
レベル:1
クラス:異世界の勇者
適正:天才万能型
精神状態:不安
<ステータス>
体力:1 成長率S
知性:14 成長率S
洞察力:21 成長率S
筋力:2 成長率S
敏捷性:12 成長率S
魔力:54 成長率S
精神力:40 成長率S
<魔法>
未習得
<スキル>
異世界適応
──異世界でも自分のいた世界と同様の言語・習慣・文字などが扱える
異常耐性
──精神状態が恐慌でない限り、全状態異常・能力低下が無効になる。
威圧
──敵対した相手を見つめることで相手の能力を40%低下および恐怖を与える。
恐慌発動
──自分の精神状態が恐慌になった場合、周囲100メートルの全生命体を
明日への絶望
──精神状態が“恐慌”の場合、全能力が大幅向上および敵対する相手の全スキルを無効化する。ただし、”見切り“を持つ相手には通用しない。
明日への希望
──精神状態が”希望“の場合、全能力が大幅向上および仲間の全能力が二倍となる
<エクストラスキル>──(未定義)のみ開示
猟奇
──詳細不明
無垢なる混沌
──詳細不明
「肉体的能力値が少ないのは君が少女だからだな。だが、魔力系の能力値は大人顔負けだ。それに知性もそれなりだ」
少女はアスランが言っている箇所を数字の高低でなんとなく察した。だが、この値がどの程度の強さを意味するのか理解はできなかった。
「それよりもスキルが独特だな。恐慌発動は良くも悪くも使い所が難しいスキルのようだ」
少女がその言葉の意味を知っていれば、また違った反応をしただろう。言われるままに言葉を受け入れた。
ふと見ると、同じスキルでも二つだけ別の枠に書いてあるスキルがあった。少女は疑問に思い、アスランに尋ねる。
「あ、あの…この二つのエクストラスキルって…なんだろう?」
その少女の疑問にアスランは驚きの顔を浮かべる。
「ほう。エクストラスキルもあるのか。それは私には見えないスキルだ。なんと書いてあるのだ?」
「わたしにもよくわからない。習ってない漢字だし。でも不明…とか書いてあるよ」
「漢字…?君の世界の言語か」
アスランは顎をさすりながら答えた。
「そうか。君のスキル“異世界適応”の力の一端だな」
「イセカイテキオウ……?」
「そうだ。“異世界適応”は召喚元の世界と同様の生活をするためのスキルだ。君が私と話しができるのも、そのスキルの恩恵だ」
「そうなの……?でも、この字は読めないわ」
「すまない。元の世界でできないことはこのスキルでは対応できないのだ。その“漢字”が読めないのは君が元の世界でも読めないからだな」
「そうなんだ。うーん。なんだろう?これ?」
「過去の異世界者が残した文献もある。その中にヒントがあるかもしれないな」
召喚された少女は自分が勇者である、という選ばれた思いにより、強い自負心を揺り動かされた。それと同時にアスランが言った三千年前の勇者の話を自分と重ねる。
魔王を倒す……喧嘩もしたことがない優しい少女は、元の世界に帰る思いを胸に、自身の宿命に身を委ねた。
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