第11話討論と喧嘩
「たしかにどっちかの肩を持ってしまうと、肩を持たなかった人とそのあと険悪になってしまう可能性があるので、そのアイディアはとてもいいですね! 他に何かありませんか?」
そう言って矢木澤は、俺をチラ見する。
何か言えと言わんばかりの柳沢の眼光に萎縮した俺は、適当に案を出す。
「えーと……ほっとく……とか?」
「あー、うちもその意見でいいよー」
俺のアイディアに、さっきま会話に参加せずに窓の外を見ていた
「では、二人とも何故そんな風に思われたのですか?」
そんなこと言われてもな……。
友達いたことないし。
それに自分が喧嘩するのはやだけど、他の奴が喧嘩してるところ見るのって、
すげー面白いし。
こんなふざけたことを言ったら、後で矢木澤に何を言われるか分かったもんじゃないから、俺は黙っていた。
「だってたかが喧嘩だよ? 時間が解決してくれるでしょ」
「そうですか。でもその二人はそのあともずっと仲が悪いままかもしれませんよ?」
「別にそれならそれでいいんじゃね。その程度で切れる縁だったってことでしょ?」
その言葉に、矢木澤は怒っているように見えた……。
「それに、たかが友達の一人や二人失ったところでどーでもよくない? みんなだってそう思うでしょ?」
そういわれた矢木澤は、自分の机を思いっきり叩いた。
「橋川さん、自分の考えを持つのは勝手だけど、その考えを他人にまで押し付けないでくれる?」
(ちょっと落ち着いて! これ討論であって喧嘩じゃないから!)
「は? 何急にまじになってんの? うちの意見に文句でもあんの?」
「えぇ、誰もがみんなあなたみたいに楽観的ではないの。あなたのように人に媚びて、楽して生きていきたいと思っている人間には分からないでしょうけど」
「うざ……。あんたにうちの何が分かんの?」
どんどんヒートアップしていく二人を、俺は止めることが出来ずにいた。
「分かるわよ。あなたみたいな、クラスの中心人物にくっついてるだけの寄生虫なら、何回も見たことがあるもの」
ちょっとー矢木澤さん。
怒りで素が出ちゃってますよー!
「はぁ、そんな奴らと一緒にしないでくんない?」
「一緒よ。強いものにまとわりついて、自分も強く見せたいだけの寄生虫……。自分じゃ何もできないから、権力者に媚びることしかできない無能……」
「――ちっ!」
「あら? 何も言い返せないの? それは自分に当てはまってるからよね……」
「うざ……」
そういって橋川は教室を出ていってしまった。
橋川との口論に勝った矢木澤は、誇らしげにしていた。
「あの矢木澤さん、周り見周り!」
周りを見渡すと、クラス全員がこちらを見ていた……。
まああんだけでかい声を出せば、それは注目されるに決まっている。
「んっん……。失礼、私としたことが取り乱しました。他に意見のある方はいませんか?」
この状況でもまだ続ける気があるとか、どんな精神力してんの?
もはやお通夜状態になってしまい、誰も発言する人がいなくなった……。
これどうすんの?
こんなにも早く授業が終わって欲しいと思ったのは、産まれて初めてだ。
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