第10話グループディスカッション

 六時間目。

 授業の最後の時間。

 この六時間目の終わりのチャイムが鳴った時、人はどう思うだろうか。 

 長くてつらい学校からようやく解放されると嬉しむか、楽しかった学校が終わってしまったとなげくか。

 もちろん俺は、前者だ。


「よーし、じゃあこの時間は交友を深める意味も込めて、簡単なグループディスカッションをやってもらう。議論を30分、発表を20分と考えている」


 で、でたーグループディスカッション。

 ”答えのないテーマ”に沿って、複数人で討論して結論を出すグループディスカッション。

 しかも、まだ入学してそんな時間が経ってないこの時期に……。

 こんなの誰も意見出さずに、一時間静かなまま終わるのが目に見えて分かる。

 こんなの交友どころかみぞが深まるだけだろ……。


「じゃあ役割等は、各班で決めてくれたまえ。じゃあテーマは『自分の友達二人が喧嘩をしてます。あなたならどうする?』だ!」


 なんてお題だしやがるこのクソ教師。

 友達がいない生徒のことも、しっかり考えてからお題を出しましょう!

 担任が近くの席の人達と班になるように指示を出し、俺達も四人で四角形に班を作る。

 

「ではまず役割を決めましょうか。司会、書記、タイムキーパーの中で、やりたいものがある方はいませんか?」


 そういったのは、隣の矢木澤だった。

 てかもうすでに進行してるし、コイツが司会でいいだろ。


「じゃあ私タイムキーパーやるよ!」


 手を挙げたのは、クラス委員の渡部さんだった。

 てっきりクラス委員だから、司会をやるものだと思っていた。


「分かりました、じゃあ後の二つですが……」


「司会……あんたがやりなよ。今だって勝手に仕切ってるし……」


 喧嘩腰けんかごしで言ったのは、いつも針谷の取り巻きにいる女だった。

 めっちゃ性格悪そう……。

 初対面で、俺の苦手なタイプだと判断した。


「分かりました。あとは書記ですが……」


 そういって矢木澤はこちらをにらみつけてくる。

 怖! 

 目で殺しに来てるよ!

 『さっさと手を挙げろ』と言わんばかりに、矢木澤がにらめ付けてくるので、仕方なく書記をやる。


「では各々の役割も決まったことですし、さっそく時間配分を決めましょう」


「やっぱ議論する時間を多めにとった方がいいと思うな!」


「では、議論を20分、まとめる時間を10分としたいと思います。何か意見がなければこのまま進めますが……」


「うん、それでいいと思うよ! 他のみんなもいいよね?」


「まあいんじゃない? うち会話する気あんまないし」


「そ、そう……。えーと矢須君はこれでいいかな?」


「うん、いんじゃないか」


 と、さっそく話しあいが始まろうとしているが……。


「では『自分の友達二人が喧嘩をしてます。あなたならどうする?』について、話しあいをしていきたいと思います。何か意見のある方はいますか?」


「うーんと、私ならどっちかの肩を持たずに、仲裁するかな」


 渡部さんの意見を、配られた紙に書く。

 書記なんてやったことないので、とりあえず意見を書いていくことにする。

 というかこのままじゃ、矢木澤と渡部さんの二人が議論して終わることになりそうだ……。

 突然のグループディスカッションに不安を感じづにはいられなかった。

 

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