第9話他人への興味
いつものように学校へ行き、教室に入ろうとするが。
(き……気まずい……)
昨日喧嘩別れみたいになってしまったので、教室に入りずらい。
まあでも一日たったし、大丈夫だろ!
何事もポジティブにいこう。
そう決意して、教室に入る。
俺はいつも通りに机に荷物を置き、ロッカーから教科書を取りに行こうとすると……。
「ねぇ、昨日からずっとあなたの言っていたことを考えていたわ……」
何と矢木澤から話しかけてきた。
今日一日はずっと無視され続けるものだと思ったが、案外何ともなさそうだ。
「考えてたって……何を?」
「昨日あなたが言ってたでしょ、説教みたいに……。あれから考えてた。私は誰から好かれたいんだろって……。でも分かんなかった、私が昨日言った別の人とはだれを指すのか、分からなかった……」
そんなこと俺に言われても、俺が分かるはずがない。
でも何か答えないとあれなので、適当に答える。
「興味がある他人……とか?」
「興味ね……。でも人って自分以外に興味がないと思わない?」
「そうか? そんなの人によるだろ……」
「そんなことないわよ、例えばあそこにいる針谷君」
そういって矢木澤は、5~6人の男女に囲まれている針谷を指さす。
「針谷君にいる周りの人達。多分だけど、誰も針谷君には興味ないと思うの」
「へぇ、何でそう思うんだ?」
「別に確証もないけど、あなたと違って私、今までたくさんの人と関わってきたから何となくわかるの……」
何故かさりげなく俺を遠回しにディスってきたが、聞かなかったことにしよう。
「でね、ああいうクラスの中心人物みたいな人達とも、一緒にいたことがあるから分かるのだけど、周りの人たちはみんな、このクラスでの針谷君の地位が高いから一緒にいるだけなのよ……」
「まあ確かに、スクールカーストの上の方にいる奴の周りには、大体人が集まるな」
「えぇそうよ、だからスクールカーストのピラミッドから除外されてるあなたの周りには人が来ないのよ」
え?
俺って最下層にすら入れてないの?
「それでそのスクールカーストの上にいる人の周りに人が集まるのは何故だと思う?」
「それは……暗い奴より明るい奴の方が、一緒にいて楽しいからじゃないのか?」
「まあ確かにそれもあるわ。でもそれだけじゃない……。みんな自分の評価のために、針谷君の周りにいるのよ」
「そうか? あそこにいる女とか、めっちゃ針谷にくっついてて好意とか持ってそうだけど……」
「それは、”クラスの中心人物と一緒にいる私”が好きなのよ。決して針谷君に好意を持っているわけじゃないわ」
そういうもんなのか?
「ほかの男子だってそう。針谷君と一緒にいれば、相対的に自分の評価が上がるから一緒にいるだけ……」
なんか人間関係って複雑だな……。
自分の評価のためにわざわざ好きでもない奴と一緒にいるぐらいなら、俺一生ボッチでいいや……。
「まあ最初の話に戻すと、結局私は誰から好かれたいのかよくわからないのよ。決して好かれたくないってわけじゃないのだけど、その相手がうまく言葉に表せないわ……」
自分がどんな奴から好かれたいか……。
そんなの、好きな奴じゃないのか?
そんなことを思うが、口には出さないでいた。
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