第5話彼と彼との差
そして朝を迎える。
小鳥のさえずりなんてものは聞けなく、聞こえるのは母親の声だけだった。
「優太―! 昨日といい今日といいもう学校始まってんのよ! 気持ち切り替えなさい!」
そうして母親から、布団を取られる。
「分かったから後20分寝かせて……」
「何言ってんのよ、もうそろそろ7時30になるわよ!」
「え?」
時計を見ると、もう25分だった……。
「何で起こしてくれないんだよ!」
「さっきから起こしてるわよ!」
俺はベッドから出るなり、すぐさま着替えて家を出る。
「くそー、前なら後30分は寝てたのに……」
そんな
「よ、よう……」
「あら、おはようございます」
え? 敬語?
そんな
そういえば今日からもう授業か。
「なぁ矢木澤、一限目の授業って何?」
授業の時間割を見るのが面倒なので、矢木澤に聞くと。
「前の掲示板に貼ってある時間割表を見れば分かるじゃないですか? いちいちそんなくだらないことで話しかけないでください」
うん……。
まあコイツが素直に教えてくれないことぐらいわかっていた。
仕方なく時間割表を見に行く。
「一時間目は国語か」
でも一回目の授業だぞ?
こういう場合は担当の先生が自己紹介とかをして、授業は次の時間というのが普通だ!
俺は教科書をロッカーに入れっぱなしにして、席に戻る。
『ガラガラ』っと扉をあけて入ってきたのは、40代ぐらいのおじさんだった。
おじさんは黒板に名前を書き始める。
「えー今日から現代文の科目を受け持つことになった、
そういうと教師は、持ってきたカバンから教科書を取り出す。
「まあ一回目の授業だが、特にやることもないので授業を始める」
まじかよ……。
この親父、一回目の授業は授業をしないという、暗黙のルールをいとも簡単に破りやがったー!
俺の教科書はロッカーだし……。
いや、でも『教科書取りに行ってもいいですか』なんて、クラス全員の前でいいたくないし。
仕方ない、見せてもらおう……。
俺は隣の矢木澤に、教科書を見せてもらおうとしたら……。
「すぴー、すぴー」
コイツ……一回目の授業から寝てやがる!
なんて度胸だ。
って関心してる場合じゃない!
コイツが寝てるとなると、俺はこの授業を教科書なしで受けなければならない。
でもほかの生徒に『見せてくれ』なんて、俺のコミュ力じゃ言えないし……。
俺は考えることを
別にコイツも寝てるし、俺も寝よ。
そして俺は机に突っ伏した。
結局50分丸まる寝ていた……。
授業間の10分休憩の時間に、俺はロッカーから次の科目の教科書を取り出す。
戻って席に座ろうとすると、クラスの男子が俺の席に座っていた。
(うぜぇ)
邪魔だから早くどけ!
そういってやりたいが、俺は平穏を好むから何も言わないでやる。
決して俺が話しかけられないとか、そういう理由じゃない。
というかあの男子、さっきから矢木澤と喋ってんな……。
矢木澤が俺以外の奴と、どんな会話をしているのか気になった俺は、近くで立ったまま聞き耳を立てる。
「いやー矢木澤さん本当にかわいいね! 部活動とかは決まったの?」
「いえ、まだ決まってないんですよ。えーと名前は何て言うんですか?」
「あ、俺
「はい、一年間よろしくお願いします。針谷さんはもう部活動とか、決まったのですか?」
「うん、俺は小学校からバスケやってるからな。バスケ部に入ろうと思ってる」
「まあ、小学校からなんて随分とキャリアが長いですね! さぞかしお上手なんでしょう」
「いや、まあレギュラーになれるぐらいの実力はあるけど、そこまでだよ……」
「いえいえ、そんな謙遜することないですよ。十分
「そうかなー。あ、もう時間だから行くね」
「はい」
何だこの対応の差!
コイツ誰だよ……。
あからさまな俺との態度の差に、驚きを隠せない……。
「おい、なんだあの会話!」
「なんだといわれましても……。普通の日常会話ですけど……? まあ家族意外と喋ったことのないあなたには、少し難しいことかもしれないですけど」
これだよこれ!
「なんだこの態度の差は!?」
「あの、もう時間ですので静かにしてください。うるさいのは目覚まし時計で間に合ってますので……」
このくそアマ……。
さすがにここまで対応が違うと、最初は困惑したが、だんだんイラついてきた。
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