第3話彼女と暴言
「よ、よう、久しぶり……。元気にしてた?」
久しぶりに会う幼馴染に、なんて声をかけたらいいのか分からないので、とりあえず適当に話しかける。
「? 初めましてカス君。あなたとはいい友人にはなれなさそうだけど、一年間よろしくお願いします」
ちょっとー、文章おかしくない?
「俺の名前は矢須だ。どうやったらそんなにひどい間違え方ができるんだ?」
「あぁ、これは失礼しました。見た目がカスだったので、つい……」
見た目がカスってどういうこと!?
何で俺は久しぶりに会った幼馴染から、こんな罵倒を受けているんだ
?
いや……そんなのは、分かりきったことか。
俺があいつに何をしたのか、忘れたわけじゃない。
それを許されるとも思ってないし、許してほしいとも思わない……。
「まあ久しぶりの再会じゃないか。とりあえずその、敬語じゃなくて、普通に話してくれよ……」
「――」
矢木澤花は少し沈黙してから。
「えぇ、そうさせてもらうわ。普通敬語って目上の人に使うものよね。あなたのような、目上どころか、足の下ぐらいの人に敬語を使う必要なんて、全くないわね」
ちょっと……、誰かこの、全自動暴言吐き機をとめてくれ!
このままじゃ、俺のガラスのようなメンタルが、高校生活一日目にして破壊されてしまう……。
「……」
沈黙がつらい。
「てかお前、この部活はいるの?」
「あら? 何であなたにそんなことを言わなくてわならないの?」
「まあいいじゃねえか、他に喋ることもないし」
俺は無理に話題を振る。
じゃないと沈黙に耐えられない。
一人でいるので、沈黙には慣れてるかもしれないと思うかもしれないが、それは違う。
むしろ沈黙することは、普通の人よりも苦手だ……。
普段あまり人と喋らないし、かかわらないので、人に気を遣わせることが少ない俺は、沈黙という気まずい状況を作り出してしまっているという罪悪感で、いっぱいだからだ。
だから何か、話題を振らないとやっていけない。
「そうね……今のところは全くないわね……」
「へー、なんで?」
「それはそうよ。ここに来た目的は新しい友人を作ることが目的だったのよ……。なのに、ここに来たのは私の知り合いを装い、私に近づこうとする変質者ただ一人……」
え? 俺ってそんな風に見えるの……?
てか本当に覚えてない?
いやでも、初対面にしてはさすがに、当りがきついとかそういうレベルじゃないぐらい罵倒してきてるし、やっぱ知り合いだよね……ね?
そんなことを考えていると、矢木澤は椅子から立ち上がる。
「もう帰るのか?」
「ええ、あなた以外に誰も来なさそうだし、あなたが来てから空気が臭いわ」
いやいや、毎日、朝と夜ちゃんと歯磨いてますから!
俺は手を口の前に当てる。
「はぁーー」
うん、多分大丈夫だよね。
いやでも自分の口臭とかって、自分じゃ分からないっていうし……。
「その臭い息を吐くの、やめてもらえる?」
え? やっぱ臭いの?
どうしよう……誰かに確認しようかな。
確認する友達いないけど。
「それじゃあ帰るわ。これであなたの顔を見ないと思うと、
そんなことをいいのこして、矢木澤は帰ってしまった。
おーい、まだ生きてますよ。
それに同じクラスの、隣の席だろ。
誰も来なさそうだし、もう帰るか……。
そうして矢木澤の後を追うように、国語研究室を後にする……。
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