第35話:神聖香

実は、クレオは転生者であった。転生前の世界で誰からも愛されずに死んだクレオを哀れんだ人々の魂を管理する神は、彼女の魂を別の世界へと転生させ、更に今度の世界では人々から愛されるようにと与えたのが、人々を魅了し、人に力を与える匂い「神聖香」を彼女に与えた。


しかし、結果それは劇物であった。故に神は「神聖香」を封印した。


だが、また更に数年後に新たな純真な想いをのせた魂がやってきた。神はその魂の純真な願いに心を打たれ、彼女の願いを叶える肉体を与えて、彼女をクレオを転生させた世界へと転生させた。


ところが、その魂の願いは肉体だけでなく、いい匂いになりたいのも願っていた。その強い願いに、封印された「神聖香」が反応し、「神聖香」はその魂と結びついてしまった。


その魂こそが……リーア・キャンベルであった。



そして、聖天大王カイゲンはそれを知っていた。彼がこの歳月になっても聖天大王として君臨出来るその理由こそ、神世の出来事を夢で見る事が出来る能力があったからだ。


ただ、夢で見たからと言っても、慎重派の彼は夢の出来事が事実かどうかきちんと証拠が無ければ動かないタイプだった。


故に、カイゲンはリーア・キャンベルの事を魔法省暗部に調べさせた。いくつかあがった報告では、確かに彼女の匂いに魅了されてる者は多いが、彼女の匂いが「神聖香」であるかは確認出来なかった。


そんな時、ふと、アルミナの魔法の事を思い出したカイゲンは、彼女を利用する手を思いついた。彼はアルミナにクレオの軽い情報を流し、彼女にリーアへの興味を持たせるように仕向け、そして、彼女が力を使ってそれを弾かれたという報告を聞いた時、カイゲンはようやくリーアが「神聖香」を持っていると確信したのだった。

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