第7話:明鏡止姉香 前編

突然、叫び声をあげたセリーナ。しかし、その後は静かに構えをとる。


「ハッ!?所詮はハッタリネ!やってしまうヨ!クロヒョウ!」


ハンジョーはクロヒョウにそう命じるが、クロヒョウは身体中から冷や汗を流して動けずにいた。


(何だ!?彼女から放たれる圧倒的なプレッシャーは!?)


拳法を極めたクロヒョウは敏感にセリーナから放たれるプレッシャーを感じていた。動けば必ず自分がやられる。そう感じてる程に……しかし、セリーナは一切動く気配を見せない為、やはり、先に仕掛けるしかないと判断し、クロヒョウは攻撃を仕掛けるが……


(なっ……!?)


先程までは危なげなく躱していた自分の拳を、セリーナはまるで読んでいたかの如く躱したのだ。それだけでなく……


(目を……!?目を瞑って躱しただと……!!?)


なんとセリーナは目を瞑った状態でクロヒョウの拳を躱したのだ。クロヒョウは次々と攻撃を仕掛けるも、セリーナは目を瞑ったままクロヒョウの拳をアッサリと最小限の動きで躱していく。


実は、セリーナがリーアの服の匂いを嗅いだ瞬間、セリーナは明鏡止姉香という極地に至ったのだ。今の彼女の心の水面には、リーアの匂いしかなく、それ以外のものを一切シャットアウトし、クロヒョウの攻撃も、まるで水のように簡単に受け流していた。最早、セリーナにとってはクロヒョウの攻撃など、そよ風にすらなっていない。セリーナ独自の究極の極地である。


ピン!ポン!パン!ポン!


「えぇ〜……前世の奴の名もなき親友です。この極地はこの度し難い変態だからこそ出来る事です。だから、良い子の読者さんは決してマネして、綺麗なお姉さんの匂いを追い求めないようにしてください。もしするなら、私が通報しますので」


ピン!ポン!パン!ポン!



(くっ……!?このぉ……!!?)


クロヒョウは焦りから次々と攻撃を繰り出してしまう。しかし、その焦りが、彼の隙のない攻撃に隙を作ってしまった……

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