第6話:切り札

クロヒョウと呼ばれた男と私はお互い構えながら睨み合い、そして……先に動いたのはクロヒョウだった。


「……ふっ!!」


鋭く速い拳を私はなんとか紙一重で躱す。


突然だけど、私はかつてアクション女優を目指していた。というのも……


「ヒーローになればきれいなおねえさんをまもれるんだ!!」


という、特撮を見てそう思ったからだ。別にアクション女優になったからといって、綺麗なお姉さんを守れる訳ないのだが……それに気づいたのは中学を卒業してからだった。まぁ、ここまできたら身体を鍛えるのは私の趣味のようなものになった。


故に、先程のクロヒョウの拳をギリギリで躱せたのも前世の影響によるものである。しかし、厄介ね……このクロヒョウ……恐らくは中国拳法の使い手ね……しかも達人クラス……割と厄介だわ……


私はアクション女優になるなら格闘技も色々マスターすべきだと思い、様々な武術にも触れたが、中国拳法は触れてこなかった……この独特な動きと構え……攻撃の隙がなかなか読めない……!


「俺の拳を躱せるのは褒めておこう。しかし、どうやら俺の動きを見切れないらしいな」


クロヒョウはそう言ってニヤリと笑う。しかし、私もニッと笑う。


「そうね……認めるわ。確かにあなたは強い。だから……切り札を使わせてもらうわ……!」


「切り札だと……?」


私は偶然にも会得した異空間を操る魔法を使い、異空間からある物を取り出した。


「……服……?」


「ただの服じゃないわ……これは………………昨日お姉様が寝る時に着ていた服よ!!!」


「えっ!?それがどうして切り札になるヨ!!?」


リーアお姉様を抱えて驚愕の表情を浮かべるハンジョー。って言うか、私とクロヒョウが戦ってる隙にさっさと逃げればいいのに……悪役はこういう時動かないルールのせいかしら?まぁ、私にとっては都合がいいのだけれど……と、今はそれを気にしてる場合じゃないわね……


「覚悟しなさい!この切り札の力を!!」


私は息を思いっきり吸い込み、そして…………余す事なくリーアお姉様の服の匂いを嗅いだ。


「ん〜……!!マーベラス……!!!」


そのあまりの素晴らしい匂いに思わず叫んでしまう私。


そして…………

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