第5話:ハンジョーの目的

ハンジョーは縄でグルグル巻きにしたリーアを抱えて必死に走って逃げていた。運ぶのは部下に任せればいいのに、ハンジョーのポリシーとして、大事な商売道具は自ら運ぶというのがあって、部下に任せずに、1人で抱えて走っていた。

しかし、そのせいで走るスピードが遅くなり、それが仇となってしまった……


「ッ!?ハンジョー様!?お気をつけを!!?」


「ん?どうしたヨ?クロヒョウ」




「まっでぇ〜ーーーーーーーー!!!!?ゴラアァァァ〜ーーーーーーーーーー!!!!?」


齢8歳の侯爵令嬢とは思えない猛ダッシュで、道行く邪魔な大木をなぎ倒し、セリーナ・キャンベルがハンジョー達の所までやって来た。




ふぅ〜!!っしゃあぁ!!?何とか追いついたわ!リーアお姉様の匂いがしなくなって、慌てて走って追いかけたんだけど、犯人はコイツらだったのね!よくも私をリーアお姉様にチャイナドレスの妄想で騙してくれたわね!


「なっ……!?何でヨ……!?象も1日グッスリな睡眠薬を使ったのに……!?しかもどうして私達の居場所が分かったネ……!!?」


「はぁ?そんなの……お姉様の匂いが遠のいたから、すぐに起きて、お姉様の匂いを辿ってここまで来たに決まってるでしょ!!!」


何を当たり前の事を……それぐらい普通でしょうに……しかし、ハンジョーとかふざけた名前の商人は驚愕の表情を浮かべていた。


「そんな!?アレだけ強力な睡眠薬使っても本能で起き上がり!?しかも匂いを辿ってここまで来たって!?お前本当に人間ネ!!?」


失敬ね!?ちゃんと人間よ!?って、今はそんな事よりも……


「どうやらお姉様が狙いでお父様に近づいたみたいだけど……一体何のためにお姉様を狙ったのよ?」


まさか!?リーアお姉様をいかがわしいお店で働かせる為とか!?そんなお店私が通いたい……じゃなくて!?そんなお店にリーアお姉様を働かせるものですか!!?


「フフフフフ……!いいネ。ここまで来た褒美に教えてあげるヨ……私達の目的……それは!このリーア・キャンベル侯爵令嬢の匂いヨ!!」


……はい?


「このリーア・キャンベル侯爵令嬢は抱えている間もずっといい匂いがしてるネ!この匂いの香水を作れば!全世界の女性は大喜び!私達もボロ儲けして大喜びネ!!」


……ふ……ふ……ふふふふふふふふ……


「ふざけるなぁ〜ーーーーーーーーーーーー!!!!?」


私はあらん限りの叫び声を上げた。そのせいで木がいくつか倒れた気がするがどうでもいい。

お姉様の匂いのする香水はチラッと欲しいと思ってしまったが、それを不特定多数の人物に売り渡す?ふざけるな!そんな事は絶対にさせるもんですか!


「お姉様の匂いは私だけのものよ!!」


そう!現時点では間違いなく私のものなんだからね!


「くっ……!?仕方ないネ……!?クロヒョウ!この令嬢を黙らせるネ!」


ハンジョーに命じられ、ハンジョーのボディーガードらしき人物が私の前に立ち塞がるように歩み出る。


「悪く思うな。コレも命令だ」


クロヒョウと呼ばれた男はそう言って構えをとる。その構えには一切の隙が見当たらなかった。


この男……!できる……!?


私もすぐさま構えて臨戦態勢に入った。

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