第5話 変心そして決心
……
先生役についてここまで聞いた時点で、俺は軽い違和感を覚えていた。話す直前のガキの様子から、この先生役の男こそ、年端も行かぬ子供に性的な意味で手を出す問題教師だと予想していたからだ。
それは先走りで、どうやら児童に暴力をふるったため、辞めさせられたようだな……と、印象を修正しかけた。
ところが、ガキが続けて語った内容を信じるなら、結局は同じ穴の狢であった。文字にして書くだけでもひどく腹立たしいため、簡単に記す。
この先生役は、お仕置きと称して児童に性的羞恥心を煽る罰を好んで与える、歪んだ精神の持ち主だったということだ。性的悪戯と一緒にされるのが迷惑だなんて、どの口が言えるのだろう。何の違いがある?
「――これで全部かな。質問あったら言って」
すっきりしたような、でも作ったような笑みを浮かべて、ガキが言った。
俺は先生役に関して把握するための質問をいくつかしたあと、一番気になっている点を尋ねた。
「三人の誘拐一味って言ったが、その中に先生役は含まれているのか?」
「ううん。誘拐犯が三人組で、先生役はあとから加わった」
「じゃあ死んだのは、誘拐犯の一人で間違いないな?」
「そう」
「一味は、他にも問題のある元教師を探していたようだが、本気で天罰を与えていたのか? さっきおまえが話してくれた犯罪ってのは、そういう元教師を懲らしめるためのものか?」
「だいぶ違う」
首を大きく水平方向に振った。
「さっき言った人殺しをしたって話。それで死んだのが、問題教師の一人。おとりになって、油断させて、誘拐犯の二人か三人かで殺した」
「……複数の問題教師に、一味は声を掛けていたんだな。罰を与えるんじゃないんなら、目的は何なのか、言っていなかったか?」
この問いに、ガキは自身の首を指差してから答えた。
「ここから下の裸の写真を撮って、問題教師の持ち物に忍ばせる。それからたれ込みっていうのをやっていたみたい。警察に直接じゃなく、教育委員会とかいうとこかも。隙を見せない問題教師には、そいつが好みのタイプを調べるんだ。条件に合う女子を見付けてきて、自分が声を掛け、親しく話しているように見えるシーンを写真に収めて、それを餌にしてた」
いかんな。またむかむかしてきた。
これを収めるには、根本からただす必要があるってか。乗り掛かった船を自ら操縦するのは趣味でも得意でもないが、付き合ってやるとしよう。ただ働きは覚悟の上、悪くしたら身に危険が及ぶ。それでも放っておけない。
「おい、ナナフシ。おまえが俺に最初に言った言葉に対する俺の返事、取り消すわ」
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