お話の時間『うらひと太郎』

乙音 メイ

お話の時間♪ 朗読『うらひと太郎』1

はなし時間じかん♪ 

   朗読ろうどく『うらひと太郎たろう』1   乙音おとねメイ


  

 あるところに浦人うらひと太郎たろうという名前の、漁業ぎょぎょう組合くみあいはたらく、とてもやさしいこころった男性だんせいがいました。

 あるのこと、太郎たろういえかえるために海岸かいがんあるいていました。すると、カメがすなくぼみにんで、あしをばたつかせているではありませんか。あおけの状態じょうたいで、甲羅こうらくぼみにすっぽりはまって、がることができません。

 よくると、うつくしい青色あおいろをした、とてもめずらしいカメでした。太郎たろうはカメをかわいそうにおもい、たすけてやりました。


「もう大丈夫だいじょうぶだよ。をつけておかえり」


 太郎たろうがそう言葉ことばをかけると、おどろいたことにカメの返事へんじつたわってきました。


「ありがとうございます!ゆうべからずっと身動みうごきができず、だんだんのどかわいてくるし、いったいどうなることかとおもっていました」


 カメがくちひらいて、実際じっさいにしゃべっているようにはえません。けれどたしかに太郎たろうあたまなか返事へんじつたわってくるのです。


水筒すいとうっているからみずをあげよう。さあ、どうぞ」


 カメは太郎たろうしたみずを、おいしそうにしました。


「これで元気げんきました。ありがとうございます。あなたはとてもやさしいかたです。おれいわたしいえ招待しょうたいさせてください。わたし背中せなかっていてくだされば、すぐにきますから!」


「おれいだなんて、たいしたことはなにもしていないのだからにしないでおくれ。でも……せっかくだからやっぱりちょっとらせてもらおうか」


「どうぞ、どうぞ! ぜひそうなさってください! うちではわたしのことを心配しんぱいしているでしょうから、あなたにたすけていただいたとったら、みんなきっと大歓迎だいかんげいします!」


 カメの快活かいかつさそいに太郎たろうこころもほぐれ、一緒いっしょってみるになりました。そして、うながされるままカメの背中せなかりました。


 あおうみおなじようないろをし、それをさらにうつくしくひかかがやかせた、まるで宝石ほうせきのようなカメの甲羅こうらに、ついうっとりしていると、いつのにか海底かいてい都市としいていました。


 不思議ふしぎなことに、そこは見覚みおぼええのある場所ばしょでした。ゆめなか何度なんどていたのです。あまりおどろいたため太郎たろううしなってしまいました。


 めると、とおるような亜麻色あまいろかみながらした、男性だんせい女性じょせいの、うつくしいひとたちが太郎たろうのまわりをかこんでいました。


大丈夫だいじょうぶですよ。なに心配しんぱいはいりません」


 くちうごいていないのに、ここでもまた言葉ことばつたわってきました。とつぜんなつかかしい気持きもちがきあがり、こうたずねてみました。


わたしはみなさんとおいしたことがあったでしょうか?」


じつは、わたしたちのべつ仲間なかまが…」


 何千年なんぜんねんまえに、太郎たろう今回こんかいおなじようにカメにってやってた、とらされました。それは前世ぜんせい太郎たろうで、そのとき名前なまえも「太郎たろう」だった、といいます。そして、びっくりするのはそれだけではありませんでした。

 

 銀河系ぎんがけいとりわけ地球ちきゅうは、かみさまの子供こどもたちのうちの志願しがんした勇敢ゆうかん冒険者ぼうけんしゃたちによる、いろいろな経験けいけんとおして意識いしき多様性たようせいひろげる実験じっけん場所ばしょで、大宇宙だいうちゅう拡大かくだい貢献こうけんしたこともあったというのです。また、何千年なんぜんねんまえ太郎たろうがここでにしたという「玉手箱たまてばこ」それはまぎれもない実験じっけん装置そうちのひとつだったというのです。


「で、結局けっきょく実験じっけん結果けっかはどうなったのですか?」

 

結果けっかは、あなたのきている時代じだいこっていること、そのことこそが結果けっかです。最初さいしょはこには『玉手箱たまてばこ』という名称めいしょうがありますが、別名べつめい『パンドラのはこ』とも言われています」


 地球上ちきゅうじょうきている様々さまざま出来事できごとを、太郎たろうおもこしてみました。それに、太郎たろうがいつかみたいとおもっている「グッドニュース」だけでめつくされた新聞しんぶん、これをまだんだことがありません。


 「地球ちきゅう転生てんせいしたかみさまの子供こどもたちは、なに記憶きおくたずにまれました。それは、『物質ぶっしつからだ』という容器ようきおさまってまれてくるため、以前いぜん自由じゆうな『エネルギーたい』の記憶きおくがあると、てつよろいけているようにかんじられてきっとこまるとおもったからです。それで、なにおぼえていないため、自分じぶんてられた子供こどもなのだとおもったのです。これが『原罪げんざい』の集合意識しゅうごういしき正体しょうたいです。しかしそのうち、子供こどもたちのなかには、ちからひとめしたり、他者たしゃのエネルギーをうばものまでてくるようになりました。それはかみっもとめ、かえりたいという気持きもちがつよまるあまり、駄々だだのようになってしまった、とかんがえるのがいちばんまとているでしょう」


 太郎たろうはそんなかみさまの子供こどもがかわいそうになり、すこきたくなりました。


「あなたはとてもやさしいかみ子供こどもです。今回こんかいあなたがここにたのは、あなたとかみさまの約束やくそくだったのです。つぎはこ、つまり最後さいごはこをおわたしします。このはこは『あい玉手箱たまてばこ』です」


 太郎たろうはずっしりとおもく、キラキラかがや装飾そうしょくほどこされた、それはそれはうつくしいはこりました。じっとているとまれそうながします。


「あなたがこまったときに、そのはこをおけなさい」


 太郎たろうは、女神めがみさまのようなうつくしいかおこえとおくにかんじながら、ねむりにちました。




つづく






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