第6話 殺す


 放課後。

 俺はシャルに呼び出され、誰もいない空き教室に行く。

 アンジェは部活動があるらしい。確か魔法薬学だったか。詳しいことは知らない。


 「何でこんな所に呼び出したんだよ?」

 「ルーくん、さっきの話のことなんだけど……」

 「ああ、調査の話か。実はメルのやつ擬態した魔人に惚れちまったらしくてな。殺そうと思ったんだけどメルにバレそうだったんで後で殺すことにしたんだよ。さっきはアンジェがいたから言えなかったけど、シャルなら言っても大丈夫だよな?」

 「ええ……。って!! そ、そんなことよりこの街に魔人が入り込んでいるのですか!?」

 「ああ、どうやらそうらしい。まぁそんなに慌てることじゃないだろ」


なにやらシャルがアワアワとし始めたが何をそんなに慌ててるんだか……。


「慌てるなって……魔人ですよ!? 100年前に王都を壊滅手前まで追い込んだあの魔人ですよ!!」

「その魔人が俺に半殺しにしたって言わなかったっけ?」


それを聞いたシャルは深呼吸して興奮を抑える。


 「それは安心しました。さすがルー君ですね。あの魔人すらも圧倒する強さ、我が王家に欲しいです。結婚しましょう」

 「アホか。俺は妹を永遠に守ると誓っているから結婚はしない。それにそんな理由で結婚する男が何処にいる」

 「あら、私と結婚できるなら国をくれるというお方までいるんだから」

 「馬鹿すぎるやつもいたもんだな。お前の本性を知ったら泣いて逃げちまうだろうに」


 こいつの本性はゴブリンの罠よりタチが悪い。

 普段のお嬢様のような振る舞いからは想像もできないほどヤバイ。悪辣で陰湿、自分の望みを果たすためならなんでも利用する奴だ。


 「それに私は本当にあなたのことが……」

 「ん? 今なんか言ったか?」

 「ふふふ、なんでもないわ……」

 「おい、どこいくんだよ?」


 教室の扉を開き、外に出ようとするシャル。出るときに頬が少し赤くなっている気がしたが気のせいだろうか。

 

 「お父様に今のことを報告にしに行くわ。さすがに魔人クラスが存在しているとなると放っておくことはできないもの。安心して、あなたのことはいつも通り黙っておくから」

 「ああ、助かる。それよりもお前……どこまで絡んでる?」


 教室から出たシャルに向かって声をかける。

 まだ魔力を感じるので俺の声は聞こえているだろう。


 「……さて、なんのことか分からないのだけど?」

 

 ったく、シャルが関わっているならまた面倒なことになりそうだ。

 まぁメルに関係がないのならどうでもいい。

 とりあえずあの魔人は処理しないとな。

 

 


 

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