第五夜・魔導具の秘めた力と女王様
仕込み杖、それは棒状のモノの中に刃を仕込むというモノでありその巽零のメイスもまたそういった類いの仕込み杖であり、抜かれたそれからは鋭く細く研ぎ澄まされた刀があり、それにより、巽零はスライディング抜刀術により喰狩誠也の片足を切り飛ばした。
ガクン、と喰狩誠也は倒れこみそうになるが、残った片方の足でふんばり、スライディングしていたが勢いが止まりつつある巽零の方へと跳躍して、抜刀、上から串刺ししようとして、刃を下に向け、刀の頭を片方の手で押さえ込みながら、自由落下していく。
その致命傷を負った後の攻撃を三竦みの均衡が崩れたと察した鬼神ヶ浦瀬徒は喰狩誠也にドガガッ!と乱射をし始めたが喰狩誠也はその弾丸の雨をものともせず落下を続ける。
そして、巽零の右膝小僧を刺し抉った。
「アイタァ!」
巽零はそう叫んだが、仕込み杖の刃をしまい、そして、また爆発するメイスとして、喰狩誠也のもう片方の足にメイスを当てて、爆発させて、もう片方の足もおじゃんにした。
「そのまま両腕もおじゃんにしたるでぇ」
しかし、喰狩誠也はその両腕を微動だにせず、巽零の右膝小僧を抉り続けた、まるでカカシになったようだが、彼にとって、自分を心の内側で人形扱いしていた巽零を殺さないといけない、その後で口に出して人形扱いした鬼神ヶ浦瀬徒も殺さないといけない。
「フーッ!フーッ!」
獣の唸り声という有り様だがこれでも人形である、そのまま微動だにしていたが、巽零は仕込み杖から刃を抜いて、抉られていた方の足を切り飛ばし、刃をしまい、メイスを杖代わりにして、立ち上がった。
「ふぅ………」
巽零は冷や汗を浮かべていた。
「まぁええわ………」
ブジャァッ!と切り飛ばされた方の足が生えてきた、巽零は白ランのホックを全て外し、胸にあった悪魔崇拝を意味する単眼のバファメットのタトゥーの中心部の目の部分に埋め込まれた赤い宝石のようなモノをグッドを表すポーズの親指で指し示した。
「これはのぉ、西洋式魔導具『ウロボロス』と言って『生と死を司り不死身を会得させる』モンや、瀬徒は東洋式魔導具のなんかを埋め込まれたはずやがおたくらのは再生型やろ?わいのはなんと『時間逆行』やで、終わりを喰らい、始まりに戻すっていうな」
「なるほど………
鬼神ヶ浦瀬徒が嘆息した後、二丁拳銃を巽零の方角へと向けて、そのまま乱射を続けた。
「そやなぁ、そんなけったいなもんより、もっとおもろいもん、見せてやろうかぁ?」
仕込み杖の刃を抜いた、もう片方のメイスの先っぽの頭部と刃をそれぞれ両手で持っているのは同じだが違うのは何をするかだった。
「これが鵺の力や、『崩解』!!!!」
そしてメイスの先っぽの頭部と刃が形を変えていき、どちらもメリケンサックに変わる。
「鵺は多数の魔導具を使うが、お得意の戦闘スタイルもんちゅーのがある、膨大な魔力を注いだ魔導具は持ち主の相応しい形へと変わってしまうんや、この『崩解』をした魔導具は二度と元の形には戻らんのやけど、そうやって『崩解』した魔導具は使いやすさと威力が倍増しまくるって寸法やからなぁ!」
そして巽零は鬼神ヶ浦瀬徒に爆弾魔の魔物だったメイス型魔導具の方のメリケンサックで殴りかかり、右ストレートは相手の左肩に当たり、爆発、そして右肩を肉片に変えていった、鬼神ヶ浦瀬徒は千切れかけた左腕で赤くカラーリングされた拳銃で標準を定めて、発砲したが、しかし、その攻撃は巽零が後ろに大きく跳び跳ねられて、避けられてしまう。
「ちぃっ!だが、こっちは『鵺を狩る鵺』としてもう一つの鵺の力を得ている、『崩解』は一時的な自己中リミット解除、対して『形態変質』は武器の形は変わるが元々の武器に近い形になる、
赤い拳銃が赤いグレネードランチャーに変わり、そこから放たれたグレネード弾は巽零の牽制のための爆弾魔の魔物だったメイス型魔導具の方のメリケンサックで殴られた時、爆発は二重になって、そして爆弾魔の魔物だったメイス型魔導具の方のメリケンサックが爆発の余波で砕かれて手も傷ついてしまった。
「流石、
傷ついた手をプラプラさせながら巽零は称賛した、もう片方の仕込み杖の刃の方のメリケンサックから電撃を放電させて握りしめた。
「おどれ、こっちは量産型やけど、元々、俺の『お気に入り』を元にしとるんやでぇ?」
「後ろに気をつけろ」
鬼神ヶ浦瀬徒のその警告によって、巽零が後ろを振り替えるといつの間にか両足を再生させていた喰狩誠也が刃を振り下ろしていた。
「あぶなぁっ!?」
巽零は後ろを振り替えりながら、腕で裏拳をしていて、喰狩誠也はそれを顔に浴びて、校舎の窓ガラスを割りながら外に飛び出した。
「あかん、ターゲットをほってしまったわ」
巽零がそう言うが鬼神ヶ浦瀬徒はそれを笑い捨てた。
「はは、貴様は俺のターゲットなんだぜ?」
「そやったなぁ………けど、俺のメインターゲットはおどれやない、勝手に撃っとれや」
裏拳の反動で背中越しに巽零は言った後、彼は走って、窓枠に足をかけて、喰狩誠也を追いかけて、校舎から外に飛び出していった。
鬼神ヶ浦瀬徒は慌てて窓に駆けよって、外を見るが二人の姿はもう見えなくなっていた。
「ちっ、逃したか」
そう言った鬼神ヶ浦瀬徒の足場が崩れた。
「いや、狩人の気分に浸ってはいけないな」
その崩れ方が刃物により切り崩されたと察して、そのまま落ちていて、床に着地する、前を見る、そこには両目を白く染めながら狂気と殺気を出しまくる一匹の人間の姿を獣がいた、もはや、それは刃を持った殺戮人形だ。
「俺様は少し獲物の気分を感じている、迂闊なことは言えないがそれでも勝つことは出来る、では、もう一発シェイド・フラップ!」
グレネードランチャーからグレネード弾が発射されたが、一匹の獣、殺戮人形、そんな有り様となってしまった喰狩誠也はグレネード弾を縦に真っ二つにして、彼の両側で二つとなったグレネード弾がそれぞれ爆発をした。
「ウウ!ウガァアア!」
喰狩誠也はそのまま切りかかって来るが、その時、鬼神ヶ浦瀬徒の前の空間が歪み、紫色のツインテールをしたゴシックドレスの美女が現れて、喰狩誠也にキスをしてしまった。
「貴女は私の『持ち物』よ」
「ウ、ウゥゥゥ」
「納品先がこのタイミングで現れるとはな」
「だって巽零の事を大好きでストーカーしてたらこの『不死式自動人形型魔導具』の情報を知ってしまったんだもの、しょうがないでしょ?それともなに?これを今、怖そうとしていたならおどれ、生きては帰れへんで?」
彼女から発せられたのは殺気はとてつもなく淀み濁っていて、『鵺』らしいものだった。
「玩具メーカーのタカラソギーの社長、曽木家の令嬢、しかし人間を玩具にしていたりするのが趣味となった『鵺』、
「それって貴様を玩具にしていいって事かしら?でも、まぁ、今は口づけした相手を虜にするリップ型魔導具と空間転移の魔導具を使ってるだけだからねぇ、残忍で攻撃的なのは家においてきてしまったんだよねぇ………」
その空間の歪みから女はまた空間の歪みに乗じて、喰狩誠也を持って帰ってしまった。
「じゃあね、貴方とは二度と会いたくないわ、だって
そう、言葉を言って、その場から消えた。
「あーーー!あのアマ!なにさらしとんじゃ!せめて『鍵』のあれぐらい捨ててってくれてーな、あーあ!くそったれ、ほんまに」
巽零が息をきらしながらその階に来て、去った二人の片割れに悪態をついた。
「ちっ、イライラするわ、おどれ、ストレス発散のためにボコボコにされてくれへん?」
どうやら巽零は八つ当たりしたいようだ。
「いや、それは違うな」
鬼神ヶ浦瀬徒がその言葉を否定した。
「じゃーなんや?」
巽零が問いをして、それに鬼神ヶ浦瀬徒はグレネードランチャー向けながら言った。
「お前が俺にこれからボコボコにされるんだよ、シェイド・フラップウウウウウゥゥ!」
鬼神ヶ浦瀬徒はまたグレネード弾を放った。
それを巽零はジャンプしてかわして、一回転して、天井に両足着地した、そうした後、斜め下に跳ね、鬼神ヶ浦瀬徒に殴りかかった。
「しばきあげたる!」
「やって見ろ!
青くカラーリングされた拳銃はショットガンになり、そこから沢山のつららが放たれた。
グサグサッ!と巽零に刺さった。
「あほんだらぁ………そんなのなしやろ」
巽零はつららが毒を固めて出来たモノだと気づいて、そのまま自由落下していった。
「あの女はとてつもない毒婦だったからな」
鬼神ヶ浦瀬徒はそう青い拳銃の『素材』となった女流将棋真剣師の事をふと思い返した。
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