説明してください!

 さらに二日が経過した。

 俺達は王都を出て既に七日。

 昨日、リトア達とは別行動となり、今はパーティメンバーである巨乳レジーナ、微乳ローラ、脳筋アルバート、そして俺の四人。

 あ、そういえばココもいるか。四人と一匹となった。


 ココは相変わらずだ。

 ローラの膝の上で腹を見せ、だらしない笑みを浮かべハァハァしている。

 まったく羨ましいやつだ。 

 

 俺も欲望のままに全裸となり全身を撫でまわされたい。


 ちなみに運転、馬車の御者はアルバートがしている。

 馬車の運転ができる上に地図まで読める。

 意外と多才なやつだ。リトア達と別れる時に、『悪魔殺』の拠点までの詳細な地図を貰っている。

 馬車は順調に走っており、時おり魔物もいるが今のところたいした魔物にも遭遇していない。


 俺の『索敵』があるからな。

 

 危ない魔物がいるときはさっと迂回だ。

 あとどれくらいでつくんだろうな?

 予定では討伐隊はあと二日で着く。俺達は一日出発が遅れているものの、近道を通っているので討伐隊と同じくあと二日で着くはずだ。


「アルバート、調子はどう? 予定通りに進んでる? 御者疲れない? 巨乳が好きなの? 」


「お? どうした? 調子はいいし、ほぼ予定通りに進んでいるよ。御者は疲れるし巨乳は好きだ」


 なるほど。

 調子はいいし順調に巨乳が好きって事か。

 好感が持てる。


 ローラの視線が、アイスピックのように鋭くこめかみ辺りに突き刺さっているのがわかる。

 

 痛い。


「けどなぁ、討伐隊とは別の道を使っているし、合流できるのはかなり『魔殺』の拠点に近づかないとだめだろう」


 俺達近道だもんな。


〈おい。 このまま直進すると魔物の群れがいるぞ〉


 おっとっと、それはまずい。


「アルバート! 迂回してくれ、このまま直進すると魔物の群れだ」


「またかよ、了解」


 アルバートは馬車を止めると地図を確認する。

 ぶつぶついいながら地図を見るアルバートにレジーナが近づいていき一緒に覗き込んでいる。


 二人の距離が近い。


 アルバートとレジーナの顔は十センチと距離がないだろう。

 吐息が当たる距離だ。

 何これ?


 実質子作りなのでは? 


 なんなん!?


 見せつけやがって!!


 まぜてもらおう!!


「よし、大丈夫だ。少し遠回りにはなるが迂回路もある。そっちから行こうか」


 これからって時にアルバートは再度馬車を走らせる。


 やはり森は魔物が多いな。これ間に合うかな…… 

 少し心配だ。

 迂回路に入り小一時間も走っただろうか? 

 アルバートが俺達に声をかける。


「そろそろ馬を休ませてやりたい。俺達も休憩にしよう」


 アルバートは適当な場所に馬車を停めるとさっそく昼飯の準備を始めた。


 料理担当はアルバートとローラ。

 レジーナと俺が狩り担当だ。


 意外なことに、アルバートの料理はうまい。

 素早い行動が得意で弓も使えるレジーナが狩りをして、アルバートが料理をする、という形がいつの間にかできていたらしい。

 俺が『索敵』すれば獲物もすぐに見つかるしな。

 リトア達から十分な食料は貰っているが、できるだけ節約したい。

 さっそく俺とレジーナは狩りに出かける事にする。


 さて、オセ! 頼みます!!


〈まったく。小動物でも探すか。 ん? 魔物が来るな。 ウォールベアが二体だ〉


 え? あのでかい熊かよ!

 少人数では戦いたくない相手だ。

 さっそくレジーナに声をかけて来た道を戻る。


「アルバート! ローラ! ウォールベアが二体! 向ってきている!」


「よりによってウォールベアかよ! 一体は俺が引き受ける! その間にもう一体を三人で倒してくれ!!」


 妥当だろう。レジーナもローラも異論はないようだ。

 さっそくローラはアルバートにかける防御魔術の詠唱を開始する。


 それにしても、よりによってウォールベアかよ。

 でかい熊なんだが、正直怖い。


 魔物との戦闘行為なんて慣れることがあるんだろうか?


 魔物の前に出ると震えてしまう。

 

 身体は正直だ。


 なんとか誤魔化しながら戦闘しているが、いくら訓練をしていてもまったく慣れる気がしない。

 実践と訓練の違いを戦闘の度に思い知らされる。


 ツンツン、と脇腹をつつかれる感触に目をやるとローラが杖で俺の脇腹をつついていた。


「陽介さん」


 そう言って、ただ微笑むローラ。

 俺が不安がっているのがわかったのだろう。

 見つめていると、ローラは薄い唇から舌を少し出してニコリと笑う。


 俺の中の恐怖心が小さくなると同時に、下半身が熱くなる。


 身体は正直だ。


 さっきアルバート達も、実質子作り行為をしていたわけだし、じゃあ俺達も


「陽介さん……」


 ジトリ、と見つめるローラの視線が痛い。

 ローラの視線にそのうち殺されそうだ。

 

〈そろそろ見えてくるぞ。備えろ〉


 あ、そうだったわ。


「そろそろ見えてくるぞ!」


 俺達が森の奥を注視していると遠めにウォールベアが二体、こちらに向かって来ているのがわかる。

 リトア達といる時に遭遇したウォールベアよりは小さそうな個体が二体。

 それでもアルバートよりは大きいだろう。

 

 ローラはレジーナにも、そして俺にも防御魔術をかける。

 このローラの防御魔術は【魔術壁マジックシールド】という魔術で、対象者の周りに魔術の壁を作る、この世界ではとてもポピュラーなものらしい。


 術者の能力によって魔術の壁の厚さは変わるようだ。

 ウォールベアほどの魔物だと一撃を防ぎきることはできないようだが、軽減させる事はできる。


 ローラに【魔術壁マジックシールド】をかけてもらったが、正直よくわからない。

 自分の周りになんとなく壁があるような気はするが身体には触れていないようだ。


 レジーナは馬車から弓を取り出すとさっそく構え、先制攻撃を仕掛ける。


「みんな! 行くよ!! 」


 レジーナの射撃を合図にアルバートがウォールベアに向って走り出す。

 レジーナの矢はウォールベアの胸元に深々と突き刺さりダメージを与えているのがわかる。


「アルバートはそのウォールベアを! 陽介!! もう一体を囲むよ!!」


「はい!!」


 なぜか敬語で返事しちゃったよ!!

 俺は弓を捨てて走り出すレジーナの後を追う。


 アルバートが囲まれないように、もう一体のウォールベアを少し引き離すレジーナ。

 考えてるな。


 レジーナは持ち前の素早い動きでウォールベアを翻弄する。

 ウォールベアの攻撃は当たらずに空を裂き、レジーナの細剣はウォールベアの体を切り裂いていく。

 これ、俺いるか!?


〈あの女の攻撃は浅いぞ。時間がかかる。女に気を取られている隙に死角から攻撃しろ〉


 ですよね!!


 相棒の鉄の槍を持つ手に力が入る。

 ウォールベアは素早く動くレジーナに苛立っているようだ。

 俺の事も見えてはいるだろうが気にされている様子はない。

 

 気取られないように後ろに回り込むと背中めがけて槍をいっきに突き出す!


「ガア!!」


 ウォールベアは後ろも見えているのか、身体を捻る。

 俺の槍は背中に深々と突きささらず、脇腹を抉るに留まった。


 だが、当たった!!


「ガアアアアアアア!!!!!」

 

〈馬鹿が!! 喜んでる場合か!!槍を手放して防げ!! 〉


 ウォールベアは標的をレジーナから俺に替えた。

 あっという間に間合いを詰められる。

 鋭い爪の生えたウォールベアの手が袈裟懸けに俺に振り下ろされる。


 間一髪、俺はオセの指示通りに槍を捨てガントレットに「身体変化」を這わせ硬度を上げる事に成功。強化したガントレットでウォールベアの攻撃を防ぐがその力で後方に吹っ飛ばされる。


「陽介!! 」


 レジーナはウォールベアにできた隙を逃さない。

 ウォールベアの喉元を細剣が貫き絶命させる。


「大丈夫! なんともない!! アルバートの援護に行くぞ! 」

 

 俺は即座に起き上がる。

 レジーナは俺に傷一つ無い事に驚いたようだが、無事を確認するとすぐにアルバートの援護に向かう。

 これで四体一。


 数で優位になった俺達はもう一体のウォールベアも倒すことに成功。

 ヒヤッとしたが、なんとか全員無事のようだ。


「陽介さん!! ウォールベアにやられましたよね!?」


 ローラが俺の体をぺたぺたとお触りしながら問いかけてくる。

 そんなに触られるとっ!

 

 あぁんっ


 身体は正直だ


「ちょっと! 陽介さん! 説明してください!」


 ローラだけじゃない、レジーナも、見ていなかったアルバートもどういう事だ?と気になるようだ。


「とっさにガントレットで防いだんだよ」


 俺はガントレットをみんなに見せてやる。


「そのガントレットそんなに丈夫なんですか? すごい高価なものとか?」


「え、陽介はガントレットでウォールベアの攻撃を防いだのか?」


「そうなんだよ。 私はてっきり死んだか、死なないにしても重傷だろうと思ったよ」


 説明しておくか。

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