私達の組織は

 五日後。


 初日に魔物に襲われて以降の野営は俺ともう一人になった。

 俺がいる事で襲撃に対する安全はほぼ約束されたようなものだが、念のため一人は交代で起きて見張りをする形となった。


 その後はたまに魔物に遭遇はするものの問題なく撃破。

 二日目からは俺達の馬車にレトアが乗っている。

 そしてなんとなくだが、襲撃以降レトアとその仲間達との距離が近くなったように感じる。

 やっぱり共にする時間が長くなった上に共闘する事で信頼も生まれてくるよな。


 特にレトアは俺の『索敵』と、ローラが何やら能力を隠している事に気づいているようで、話を聞きたがった。


 リトアは男、リトアは男、リトアは男………… わかっちゃいるんだがこいつは距離が近い。


 俺にはホモ属性もショタ属性もないが、あまりにも整った美少女顔で見つめられると……


 ローラの視線が痛い。


 落ち着こう。


 ローラちゃん大好きローラちゃん大好きローラちゃん大好き……


 ローラは片方の眉をピクッと上げて反応を示すが余裕そうな表情だ。

「もう陽介さんには驚いてあげませんよ」とでも言いそうな表情。

 成長したなローラ。


 リトアはまた俺に絡んでくる。


「なあなあ、陽介。その『索敵』はどうやって覚えたんだ? 私でも覚えられないのか? 『指導者』のスキルなのか?」


「うーん。たぶん俺の『索敵』は魔力がないからじゃないか? だから特殊に進化したんじゃないか? 」


「そうなのか? 私では無理か…… 」


 残念そうに体をすくめるリトア。

 ちょっとかわいそうだが仕方ない。

 なんとなくオセの事は言いづらいしな。


 なんとなくココのほうを見るとローラの膝の上にいる。

 最近はローラの膝の上がお気に入りだな。

 ゴロン、と仰向けにひっくり返っており、腹も股間も何もかもをローラにさらけ出している。

 

 これ………… 痴漢だよな?


 あの犬畜生め、犬の立場を最大限に利用してやがる。


 リトアも、俺が視線を向けたココを見ながら言う。


「そういえばその犬も不思議だ。魔力を感じないなんて。陽介とその犬以外では見たことも聞いた事もないな」


 この変態犬は気づいたらいたからな。

 俺も良くわからないが、俺になついている。

 なんとなく苦笑いで誤魔化しながら当り障りのない会話を続けた。






 しばらく森の中を通っていたが、唐突に森が開けた。

 森の中だというのにこの辺りだけ木が生えていない。

 丸で測ったかのようにサークル状に森が開けている。


 馬車は開けた場所に止まり御者をしていたリトアの仲間が声をかけてくる。


「着きましたよ皆さん」


 え!? 俺達のパーティメンバーは驚く。


 着いたって言った?


 俺達『魔殺』の拠点に向かってたんじゃなかったのか?

 十日はかかるって話だったと思ったが。

 

 とりあえず馬車を降りるが、周りには何もない。

 静かな森だ。

 『魔殺』がいるような雰囲気はまったく感じられない。


 オセ! 近くに魔物の反応は!?


〈ない〉


 他に反応はある? 人でもいいんだけど。


〈ある。 地下に人がいるな〉



 地下に人がいる?


〈人数は二十。魔術師が多いだろう〉


 

 地下に魔術師? やっぱり魔殺はここにいるのか?


 リトアの仲間達はわかっているのだろう。

 特に慌てた様子はない。


 レジーナは我慢が出来なくなったのか


「リトア? ここが…… 「魔殺」の拠点かい?」


 俺達の視線がリトアに集まる。

 

 リトアは一呼吸、大きく息を吸い込むといっきに吐き出すように


「すまない!! 私はお前達をだましていた!!」


 ガバッ!! と腰を折り頭を下げるリトア。

 長い髪が地面についてしまっている。

 そんなことは構わずに頭は下げっぱなしだ。


「どういうこと?」


「私達は優秀な人材を探しており、お前達を試させてもらったんだ。四人とも、私たちの組織に入ってはくれないだろうか?」


 これは……

 勧誘だったのか?


 俺達四人は顔を見合わせる。

 なんとも微妙な空気だ。

 リーダーのレジーナを期待の込めた目で見てみると全員がレジーナを見た。

 ココもだ。


「わ、私!? 」


 無言で頷いてやる。

 レジーナは堪忍したのか、ため息をつくとリトアを真っ直ぐ見据える。


「騙されたのも試されたのも気分が悪いよ。けど話くらいは聞いてみようと思うんだけど、どういう事なんだい?」


 リトアは頭も上げると上目遣いでレジーナを見つつ……口を開いた。


「私達の組織は……『魔殺』と呼ばれている」


「「「「ええ!?」」」」


「ワン!!」


 俺達の声の大きさに驚いたのか、ココまで吠える。


 『魔殺』だと!?!?

 魔術師団体を襲いまくってる奴らの事だよな!?

 そこに入れだと!?


「何言ってるんですかリトアさん??」


 ローラが厳しい目でリトアを視る。

 『読心』を使っているんだろう。

 ローラの視線がリトアに絡みつくようだ。


「……ローラさん。私は『読心』では読めません」


 なんだこいつ!? 知ってたのか?

 ローラはばつが悪そうにしている。

 レジーナは仕切り直すように話を進める。


「それで? この国の敵みたいな『魔殺』が私達を勧誘??」

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