もう!大丈夫そうですね

 リトアに協力をする事を決めた俺達は、さっそく王都を出発する事にした。

 よつば達討伐部隊は今朝出発したばかりだが、リトア達の準備が思ったより時間がかかり出発は夜になってしまった。


 俺が行ったところで何ができるって訳ではないが、よつば達が心配だ。


 よつばは寂しくて毎晩泣きながら俺に会いたすぎて震えているだろう。

 クローディアだってそうだ。俺の事を童貞呼ばわりするものの、本当は俺の童貞を奪いたいとか思っているはずだ。

 まぁ俺はクローディアのようなロリコンはお断りだがな。

 

 俺はおねいさんが好きだ!

 

 ナルシッソスは知らん。オセにでも会いたいんじゃないだろうか。

 魔神に対してホモみたいな所あるしな。


 まったく困った連中だ。



 『魔殺まさつ』の拠点までは十日もかかる。

 道中で何があるかわからないし、準備は大切だろう。

 しかも突然の出発だ。

 準備に時間がかかるのはしょうがないと自分を納得させる。


 王都の門が閉まる前に、なんとか滑り込みで王都の外に出ることができたが、なんとなく夜の出発って怖い。

 

 馬車に揺られるだけでする事がないと色々と考えてしまう。


 暇って良くないよな。

 人間暇だと余計な事ばっかり考えてしまう。


「陽介さん、お仲間が心配ですか?」


 ローラは心配そうな表情で俺の顔を覗き込む。

 そんな顔で見られたら……




 おっぱい


「……もう! 大丈夫そうですね」


 ローラは呆れた様子でそっぽを向いてしまった。

 照れ屋さんめ。


 それにしてもローラの『読心』ってどこまで読めるんだろう?

 なんとなく読まれている時は視線のようなものを感じるんだよな。

 聞いてみたいが今馬車には俺達以外にも人が乗っている。


 乗っているのは俺達のパーティ四人とリトア達の仲間が二人。合計六人が乗っている。

 加えて馬車の御者もリトアの仲間なので合わせると七人だ。


 リトア達の仲間は三人とも戦士。

 治療魔術を使える者もいるが、自己治癒しかできないらしい。

 あまり役に立たない治療魔術だな。


 魔術をまったく使えない俺が言えた立場でもないが。


 もう1つの馬車にはリトア達が乗っており、合計二台の馬車での移動となっている。

 リトア達の馬車には六人と食料等、度に必要なものが乗っている。


 さすがに今は仲間とはいえ、他人にローラの能力を知られるのは良くないよな。『読心』の話はしないでおくか。




 二時間くらいは進んだだろうか、唐突に馬車が止まる。


「この辺で食事と野宿をしたいと思います」


 御者をしていたリトアの仲間に声を掛けられる。


 森の中の街道沿いに俺達は降りる。

 降りると丁度リトア達も降りており、さっそく食事の準備を始めている。リトアを中心に動いているようだ。明らかに一番ガキなのにな。


 いったい何者なんだろう。

 

 出来ることを手伝いながら野営の準備は進んでいく。

 食事は簡単なスープとパンに、なんかの肉を焼いたものが出てきた。

 リトアの仲間の一人に聞いてみる。


「お肉なんか出るんですね。なんか豪華じゃないですか?」


「日持ちしない食べ物から食べていきますから。日持ちしない食べ物が終わると質素になっていきますよ」


 なるほどね。今のうちに楽しんでおくか。


 そんな事は当たり前なのだろう。

 俺以外はあまり気にしていないようだ。

 

 俺がしっかりと味わいながら食べているとリトアが手を叩いた。


「みんな、聞いてくれ。これから野営に入るわけだが、交代で見張りを立てる。陽介達も協力してもらえないか?」


「もちろんさ! 私達も仲間だと思って使ってくれよ! 」


 レジーナは即答で答える。


 見張りか… オセ!


〈なんだ?〉


 オセって寝るの?


〈睡眠は必要ない〉


 俺が寝てても起きてる?


〈ああ〉


 なら……


〈吾輩に見張りをさせたいのだろう? それくらいはやってやろう〉


 話が早いな。

 俺は寝ながら『索敵』ができるとでも言っておくか。


「リトア! それなんだけど。俺は寝ながらでも『索敵』ができるから、見張りは無くても大丈夫だ」


 全員が一斉に俺をみる。

 えっち!


 リトアは驚いた表情のまま俺に問いかける。


「え? 陽介の『索敵』はそんな事が出来るのか?」


「出来る。心配なら誰か起こしておいたらいいけど、俺がいるから大丈夫だ」


 周りは半信半疑だ。

 俺のパーティメンバーもそう。

 まだ見せたことないしな。


 みんなが言いたいことを代表してレジーナが俺に追撃をかける。


「陽介ってほんとにそんな事できるの!? 寝ながら『索敵』!? それって寝てるの? 起きてるの? どういうこと?」


 ほんとどういう事!?

 オセの事はなんかいいづらいしな……

 ココが教えてくれるって事にするか?


 ココはお肉を食べ終わると早々にローラの膝の上でくつろいでいる。

 ローラの膝の上がお気に入りのようだ。


 時おりクンクンとローラのにおいを嗅いでいる。

 うらやましいなあいつ!

 どんな匂いなのか教えてくれないかな。

 ココと意思の疎通がしたい。


「俺の『索敵』は寝てても自動的に働くんだよ。普通の『索敵』よりは便利かな」


「そんな『索敵』あるんだね……」


 レジーナは納得したようだが、リトアの仲間はいまいち納得していないようだ。『索敵』を使えるやつもいるだろうしな。気持ちはわかる。


「いきなり信用しろってのも無理だと思うから、一応俺が『索敵』している以外にも見張りは誰かしようか」


 リトアもそれがいいと思っているのか俺の意見に賛成する。


「そうだな、申し訳ない。陽介の『索敵』が特別だって事はわかるんだが、そこまでできる『索敵』なんて聞いたことがない。『索敵』にだって魔力を使うはずなんだが、陽介は魔力がないしな。信用しない訳じゃないが見張りはこっちからも出させてもらおう」


 こっちのパーティでは俺が代表して見張りに立つことになった。

 といっても俺は寝てるけどな。

 オセが頑張る。

 リトア達からは交代制で見張りを担当するようだ。


 俺達は食事を食べ終わるとさっそく明日に備え休む事にした。







 深夜。


〈起きろ〉


………………


〈おい! 起きろ!! 魔物がいるぞ!〉


 …………


〈吾輩は起こしたからな。あとは知らん〉


 え!? 待って待って!?

 それはないだろオセ!! 

 ちゃんと起きるまで責任持ってよ!!


 俺はオセの警告を受けてさっそく周りに知らせる


「出たぞ!! 魔物だ!!」


 一斉に各馬車から飛び出す仲間達。

 外にいた見張りは俺の声に驚いているようだ。


「魔物の気配はありませんが、ほんとですか?」


 オセ! 魔物は何!?


〈東から2匹。 距離百。 ウォールベアだ〉


「東から2匹! 距離は百! 魔物はウォールベアだ!!」


 俺の声に反応した『索敵』を使えるヤツだろうか、東に向けて視線を集中している。

 

「……確かに。魔物の気配あります!2匹です、種類まではわかりませんが大型ですのでウォールベアの可能性があります!」


 ほらな? 

 俺がドヤっていると


「やっぱりすごいな陽介の『索敵』は! さすがじゃねーか!」


 斧の感触を確かめながらアルバートは素直に褒めてくれる。

 ふふふ。


 アルバートはほんといいやつだな。


 俺達は迎撃態勢万全に魔物を迎え撃つ。

 戦士達は前へ、俺は中距離に、ローラや魔術を使えるやつらは後方だ。

 最前線は、レジーナにアルバート、それからリトアの仲間達が四名加わり六名。

 中距離には俺ともう一人。

 後方にはリトアとローラ、さらにリトアの仲間が三名だ。



 総勢十三名での戦闘だ。

 人数が多いから楽勝……だよな?


 リトア達強そうに見えるが……


 俺の心配をよそに、林の奥にウォールベアが見える。

 二体だ。


「来ました!」


 リトアが吠える


「戦闘準備!! 遠距離攻撃準備! 合図まで待機!」


 ウォールベアは俺達を餌だとでも思っているのだろう。

 舐めた様子で近づいてくる。


 体長は三メートルはあるだろうか。

 でかくておっきい熊だ。 

 普通の熊と違うはわからないが知能があるように見える。


「攻撃開始!!」


 後方から魔物に向けて一斉に魔術や矢が放たれ魔物達に着弾、最前線の戦士達が魔物に向って走り出す。

 

 ローラはどうやら支援魔術なのだろう。

 前線の戦士達にうっすらと障壁のようなものが見える。

 

 俺も行ったほうがいいの!?


〈行け。前線の戦士が負傷したら代わりに前線を維持しろ〉


 なるほど、そりゃそうだよな。

 俺は一拍遅れてしまったが慌てて戦士達を追いかける。

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