王国からの依頼内容
ギルドでの食事を終えた俺達はさっそく城へ向かう事にした。
城を守る城壁はまた一段と高い。
都市を守る城壁よりも一段高く作られている。
最後の砦ってやつか。
それにしてもかっこいい。
よつばはその大きさに ほへー っとした顔をしている。
エアロの冒険者ギルドに来た兵士と同じ格好をした、青白く輝く鎧を着込んだ門兵に声をかけることにした。
「すいません。冒険者ですが、ギルドの依頼で来たのですが」
俺は兵士へ依頼書を見せる。
「『加護』持ちの方が来て下さったのですね。ご足労ありがとうございます。 軍舎へ案内致しますので少々お待ちください」
そう言うと兵士は隣にいた兵士へ指示を出す。
どうやら奥から別の兵士を呼んでくるようだ。
チラリと見える門の中は、城以外にも建物が見える。
早く門をくぐりたいな。
そういえば犬も入っていいのか?
「すいません、私達のパーティには犬もいるんですが、入っても大丈夫ですか? 」
「犬? あぁ、大丈夫ですよ。 パーティメンバーに『テイマー』がいらっしゃるのですね? 」
テイマー? そんなのいないがな……
テイマーっていうのは、魔物使いとかそんな感じのジョブの事か。
テイマーなんていないし、ココは
ちょっとした危険物だな。
城で…… うんこしたらやばいな。
ココを見ると縄張りを主張したそうな顔してる。
いやいや、ほんとここで縄張り主張とかやめてね?
城なんかでおしっこしたら
俺かばわないからね?
『指導者』でごまかせないかな……
「え、えぇーと、テイマーはいないのですが、『指導者』なら……」
「し、『指導者』ですか? 冒険者で指導者は珍しいですね……」
ちょ!? 冒険者で指導者!? マジで!?
ぐらいに思ってそうだがそんなそぶりは見せない。
教育されてるな。
けど俺は気づいちゃったよ?
心が痛い。
別の兵士から声がかかる。
「お待たせしました。 軍舎へ案内致します。そこでお話を聞いてください」
俺達は兵士の後に続いて門をくぐる。
門を抜けて真っ直ぐ直進すれば城なのだが、俺達が案内されたのは城の外にある建物だ。
軍舎って言ってたな。
石造りの堅牢そうな建物だ。
案内された部屋は作戦会議でもするのか、それなりの広さのある会議室のような部屋だ。
部屋の奥には兵士がいる。
これは、兵士というより騎士か?
兵士の恰好も青白く光る鎧で決まっているが、この兵士はさらに鎧がゴージャスだ。
兵士というよりは騎士に見えたのはそのためだ。兵士より偉そうだ。
このゴージャス鎧の騎士は左腕がない。
他にも俺達と同じような冒険者が何人かいるが女性の割合が多い。
『加護』っていうのは女性しか与えられないのか?
俺の知ってる『加護』持ちはよつばとママ、二人とも女性だ。
神っていうのはエロいな。
「わらわはクローディ」
やめて!?
あわててクローディアの口を押えて羽交い締めにする。
一瞬注目が集まったものの騎士がうまいこと取りなしてくれる。
「冒険者の方々よ! 座ってくれ。俺はこの国の騎士団、第二騎士団・隊長のシュナウザーだ」
挨拶もそこそこに席に座ることにした。
俺達が最後だったのだろう。
隊長のシュナウザーは話始める。
「わざわざ貴重な『加護』持ちの方々に集まってもらった理由を話そう」
そこから長々とシュナウザーの話は続いた。
話の内容はある程度予想通りだった。
国内の魔術師団体が襲われている事。
襲われた団体は『火の魔術師団体』そして『魔の魔術師団体』。
加えて魔道具を作成するクラフターも狙われているらしい。
王国の騎士団・魔術師団で襲撃者を追っているが未だに行方を掴めていない。
分かっている情報としては、襲撃者は魔術に高い耐性を持っている事。
中級級魔術までは通用しない、上級魔術でやっと通じる程に耐性が高い。
しかし、『加護』持ちの魔術は全て通じ、加えて『加護』持ちの付近では襲撃者は目に見えて力が落ちていたらしい。
火の魔術師団は加護持ちがいたおかげで魔の魔術師団と比べて、被害を抑えることができたとの事だ。
ほぼ知っている内容だな。
まぁ襲われた当事者のナルシッソスがいたんだ。
そりゃそうか。
現在はまだ正体が判明していないが、現在国の威信をかけて追跡している。
近いうちに襲撃者は判明する。
その時に『加護』持ちの方へ同行をお願いしたい。また、しばらくは王都を拠点に冒険者活動を行って欲しい。
との事だった。
滞在費としていパーティあたりに10,000Gの支給、調査に十日以上かかるようであれば追加もしてくれるというおいしい話だ。
おいしい話だが、危険はある。
加えて必要なのは『加護』持ちであるよつばだけだろう。
俺達はどうなるんだ?
俺が疑問に思っているとさっそく他のパーティが質問をした。
「質問があるんだが、俺達のパーティでは『加護』持ちは一人だけだ。『加護』持ち以外のメンバーはどうするんだ? 」
「可能であれば一緒に同行をお願いしたい。パーティ内での連携もあるだろうし、慣れたメンバーのほうが戦闘もしやすいだろう。その辺はパーティごとに相談させてくれ」
質問をした冒険者は納得したように自分達のメンバーを見回す。
特に異論はないようだ。
なるほど。
うん。
なるほど。
これさ! 相談の結果、陽介さんはいりません!! フラグじゃないよね!?
『指導者』はいらん! と斬って捨てられそうで怖い。
質問は続く
「報酬は出るんだよな? 」
あ、やっぱりそこ気になるよね。
ちょっと気になっていたんだけど、がめついだろうか。
お金は大切だよね。
お金がないとパンツだって買えないしミルクだって飲めない。
「もちろんだ。仕事に見合った報酬を出そう」
他にも色々と質問は出ていたがそれほど重要そうな質問もなかった。
他の冒険者グループは冒険者っぽい恰好をそれなりにしており、ランクが高そうだ。
俺達ぐらいだな。
見た目も貧弱で犬連れなんていうのは。
はっきり言って俺達は浮いている。
クローディアが最初にやらかしたこともあるが、冒険者っぽいのはナルシッソスだけだ。
俺はどう見えてるんだ?
「以上だ。他に質問はないか? 」
沈黙が流れる。
「ないようであれば、早速だがパーティ名とメンバーを台帳に記入してもらってもいいだろうか。こちらのほうでもメンバーを把握しておきたい」
兵士達が俺達に用紙を配りにきた。
なんとなくリーダーっぽくなっている俺に用紙が回ってくる。
用紙を見てさっそく
『パーティ名』……。
「『偉大なるクローディア・ボトルフィット』にするがいいゾ!! 」
「またそれかよ!? それやめて!? 」
「なぜじゃ!? パーティ名無いんじゃからええじゃろ!! 」
「そんな名前は良くない! 」
俺達が揉めているのを見て隻腕の騎士が声をかけてくる。
「お前達、パーティ名がまだないのか? 」
「そうなんですよ、まだ組んだばっかりでして」
「あるゾ! 『クローディア・ボトルフィット魔術師団』じゃ! 」
さっきと違うじゃねーか!
俺は魔術師どころか魔力すらないのにその団体に入ってていいの?
隻腕の騎士、シュナウザーは困った顔をしているが、名案が思い付いたのか
「ならば 『クローディア・ボトルフィット(仮)』 とでもしておこう」
え!?
かっこ仮なの!?
「なんじゃそれは! ダサいの! 」
ふんぞり返りながら偉そうなことを言うクローディア。
文句いってるよこの子!
そんなこと言える立場か!?
それでもそれなりには納得したのか
「まあよい! それでいいゾ! 」
その後も揉め続けたが、結局シュナウザーの一声で俺達のパーティ名は「クローディア・ボトルフィット(仮)」となった。
続いて俺達は自分達の名前、ジョブ、冒険者ランクを記入していく。
スキルは特に記入する欄がない。
個人情報だからか?気をつかってくれているようだ。
ただ『加護』だけは記入することになっている。
そりゃそうか。
よつばの欄に『聖神の
これはどれほどの評価を受けるんだろうな。
よつばはココを膝にのせ耳を上げたり下げたりして遊んでいる。
緊張感ないな。
てかうちのパーティメンバーの女性陣はちょっとアレな娘達だな。
用紙を回収にきた兵士はそれを見て
「せ、『聖神の寵愛』って書いてますか? 『加護』でも『恩恵』でもなく? 」
言っていいのか? この場には『加護』持ちばかりだしいいか?
「そうです。よつばは『聖神の寵愛』持ちです」
よつばは自分の冒険者カードを兵士に見せる。
兵士も初めて見たのか、何度もカードを確認している。
「確かに、『寵愛』ですね。初めて見ました。今回募集した中ではお一人だけですよ」
やっぱり珍しいんだな。
国中に声をかけて、集まった中で一人か。
まぁこれから集まる中にもいるかもしれないが。
改めて周りを見てみると『加護』持ちのいるパーティだからだろうか、どのパーティも人の良さような連中に見える。
ギラギラとして何日も風呂に入っていない、浴びるようにビールを飲み性欲の強そうな荒くれ者、のような感じはない。
そんなパーティには『加護』持ちは入らないのだろう。
プリーストのような恰好をしているのが加護持ちだろうか?
どのパーティにもいるな。
その後パーティごとに呼ばれ簡単な面接というのか、どこの宿にいるとか、戦闘に参加するとか、お金の受け渡しとなった。
俺達も呼ばれて別室に行く。
「改めて、わざわざ来てくださりありがとうございました。 早速ですが、どちらに宿泊されてますか? 」
そういえばまだ決めてないな。
門の兵士がいっていた、冒険者ギルドの隣の宿でいっか。
門の兵士の名前なんだっけな?
もうすっかり忘れてしまった。
「冒険者ギルドの隣の宿にする予定です。ギルドで簡単な依頼を受けながらしばらく滞在したいと思います」
「あそこですね。わかりました。そもそもなんですが…… これから協力をお願いすることは可能でしょうか?」
さてさて、どうしたものか。
まぁここまで来たら協力するしかないか?
ナルシッソスは一人でも参加しそうだし、よつばもクローディアも異論は無さそうだ。
「協力します」
「ありがとうございます。失礼ですが、まだあまり戦闘経験はないのではないでしょうか?」
あ、わかっちゃいます?
にじみ出るものがあるんだろうなぁ。
まいったなぁ。
「あまりないですね。ですので後方にいさせていただけれると…… 」
「なぜじゃ!? わらわは偉大なる大魔術師であるぞ!? 」
「陽介氏! 私は前線で戦えます! 」
「私は先輩の意見に賛成です」
ココは地面のにおいをクンクン嗅いでいる。
意見が割れたな。
クローディアとナルシッソスだけ前にいてもらおう。
俺とよつばは後ろで応援だ。
兵士さんも困っている。
「私達は邪魔になるかもしれないので後方にいますので! 」
「『寵愛』持ちのよつばさんがいるのです。邪魔だなんてそんな。王都の冒険者ギルドでは初心者向けの指導も行ってますので参加してみてはいかがでしょうか」
なんと! さすが王都だ。初心者向けの指導があるのか。
それに参加しない手はないな。
ナルシッソスはともかく、残りのメンバーは必須だ。
クローディアは嫌がりそうだがそこは騙して連れて行こう。
俺達は兵舎を後にし、冒険者ギルド隣の宿に向うことにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます