よつばとジョブ
おばあちゃんはよつばが鑑定をするでかい石に触れている事を確認すると、詠唱を始める
「触れたる者の可能性を示せ!! 鑑定!!」
石はうっすらと青白く発光したかと思うと、石の表面になにやら文字が浮かび上がる!!
俺の時と同じだ。
一点、違う点があるんだが……
表面に浮かび上がる文字の数がとんでもなく多い。
もうなんかね、明らかに文字数が俺と違う。
どうなのオセ。やっぱりすごい?
〈数が多い。しかしこれは…… 〉
なんだよ? もったいぶりやがって!
〈あの娘が望む『パン職人』は無いな〉
そんなもんあってたまるか!
あんなの冗談だろう。まさかよつばも本当にパン職人になろうだなんて思ってないはずだ。
おばあちゃんは浮かび上がる文字の多さに
「スフレ! 紙と筆を持ってこい! 」
呼ばれたスフレさんは、ハイ! と返事をすると急いで部屋を出ていった。
ありすぎるんだろうな。
よつばはなんとなく居心地が悪そうだ。
不安そうにおばあちゃんを見つめている。
まーたよつばの鑑定でこれか。
「さてさて、娘、いやよつば。お前の『ジョブ』適性を言うぞ」
「は、はい。お手柔らかにお願いします」
おばあちゃんは深呼吸をし一拍溜めると
「まずは、戦闘職・主に物理型の職として 『戦士』『斧術士』『槍術士』『弓術士』
テクニカルな職として『スカウト』『吟遊詩人』『テイマー』
魔術系として『魔術師』『治療術師』『プリースト』『召喚師』『付与術師』に適性がある」
…………
あまりの多さに言葉も出ない。
何種類あったんだ今?
チートだとは思っていたもののここまで俺と差があるのか?
「さらに」
「まだあるの!?」
「ここまでは基本職じゃな。『プリースト』は基本職とも言い難いがまぁいいじゃろう。
そして、上級職の兆しもある。ユニーク職としては『魔法戦士』『聖戦士』もある。
さらに」
まだあんのかよ……
「『
「『神託者』?」
「わからん。 ユニーク職じゃろう。『賢者』というのは攻撃魔術と治療魔術を得意とするジョブじゃ」
よつばはそわそわしている。
何か気に入ったのがあったか?
「あの……おばあちゃん。非・戦闘職はないんですか? 」
期待の籠った眼差しでおばあちゃんを見つめるよつば。
前のめりでおばあちゃんに接近している。
あればブラチラしてるな。
おばあちゃんずるい。
「うむ…………ない」
よつばの表情は固まっている。
よっぽど非戦闘職が良かったのか、『賢者』も『神託者』もまったく興味がないようだ。
『賢者』に『神託者』。どちらも明らかに特別なジョブだ。
普通の冒険者ならすぐにでも飛びつくであろうジョブだと思うのだが……。
よつばは不満そうにしている。
とりあえず選ばせないとな。
「よつば。ジョブはどうする?」
スフレさんが紙と筆を持って帰ってきた。
おばあちゃんはよつばにそれを渡すと、今上げたジョブ名のメモを取らせる。
それを見ながらよつばはうんうん
「よつば、ジョブの特徴わかる? 」
「なんとなく名前から想像しているだけですが・・・」
「だよね。ちょっと詳しく聞いて見たら?」
「わらわ程の天才でも賢者は出なかったゾ! アーッハハハハハ!! 」
クローディアでも賢者はでなかったらしい。
こいつは治療魔術の才能は無さそうだしな。
妥当だろう。
「おばあちゃんとしては、おすすめは何ですか? 」
「お前さんがどのように生きていきたいか、であろう。前線に出て剣を振るうのか、後衛でサポートをするのか。『賢者』か『神託者』ならばステータスの補正も高いし、無難じゃと思うがな」
よつばは話を聞いてもいまいちピンときていなそうな顔をしている。
自称ゆるふわ愛されパーマを指先でくるくるさせながら考えこんでいる。
「決めました!」
お! 視線がよつばに集まる。
「ジョブに就きません!! 」
「え!? なんで!? 」
どうしてよ!? 就かない選択肢はないでしょ!?
どうしてそうなるのよ!?
みんなが驚くもんだからよつばは悪い事をしたかのようにすまなそうにしている。
「だって……なんかピンとこなくて……パン屋さんないし……」
「よつば! さてはおぬしアホじゃな!? まあそんなところも良いゾ!! アハハハハハ!! 」
クローディアはなぜか納得したようだが、どうして納得しているのかわからない。
よつばとアホの部分で通じ合うところがあるんだろう。
結局その後、おばあちゃんもスフレさんも、俺もナルシッソスで説得したがジョブには就かなかった。
まぁよつばの場合ジョブなんて関係ないかもな。
聖神の
ジョブ程度の補正なんて必要ないと思ったのかもしれない。
おっぱいと頭にはもう少し補正が必要だがな。
それ以外はチートだ。
俺達が鑑定部屋を出ると真っ青な鎧を着た兵士がギルド内に入ってきた。
兵士は受付に来ると軽く挨拶をする。
会話の内容が聞こえてくる。
「コモンドール王国から来ました。ギルド長はおりますでしょうか」
王国? そういえばこの世界にももちろん国はあるのだろう。
初めて国というものに触れたな。
「わしがギルド長のヨランダじゃ。 わざわざ国から来るとは、どうしたのじゃ? 」
兵士は軽く敬礼をする。
礼儀正しい兵士だ。ちゃんと教育されているのがわかる。
挨拶が体に馴染んでいる。
常日頃から挨拶をちゃんとしているのだろう。それだけで好印象を相手に与えることができる。
「最近冒険者の鑑定で『加護』持ちが出た、と聞き及びました。その方を紹介していただけないでしょうか?」
なんとなく視線がよつばに集まる。
あ、まずいな。兵士によつばが加護持ちだと気づかれたっぽい。
おばあちゃんはよつばを差し出すような事はせず兵士に理由を聞いた。
「なぜじゃ? 何かあったのかの? 」
兵士もなんとなくよつばがそうなのは感じ取ってはいるが、おばあちゃんを無視はしない。
「実は最近国内の魔術師団体が襲われる事件が発生しました。火属性の団体に魔属性の団体です。どちらの団体も壊滅に近い被害を受けております。 魔術に高い耐性を持つ集団だったようです。
ただ、火属性の団体には『加護』持ちがいまして。 その加護持ちの力が大いに役に立ったと」
なるほど。
『加護』よりも上位の『寵愛』持ちのよつばだ。
防衛なのか、討伐なのか、協力を要請しに来たんだろう。
となると教会のママにも要請は行っていると考えていいな。国中から加護持ちが集められているのだろうか。
「その方にご助力を求めたく参りました」
これは。 どうしたらいいんだ?
この国というものがそもそもわからない。
この世界にきてまだ
「そういうことかえ。その『加護』持ちの冒険者に話はしておこう。協力する場合にはどうしたらええんじゃ? 」
礼儀正しい兵士は腰に下げた革袋からさらに革袋を出した。
革袋、イン、革袋。
ジャリジャリと音がしている。おそらく金だろう。
「ご協力いただけ無くとも話を聞いていただくだけでもかまいません。
ここに5,000Gあります。国までの旅費にしてください。不足分は国で
なるほど。この街の加護持ちを集めるならそれが賢いな。
依頼として掲示されていれば冒険者の目にも止まるし国行って話を聞くだけでお金がもらえ、依頼達成の実績にもなる。
これはおいしい。
兵士はよつばを
「ギルド長。今何が起きているのかはわかりません。もしかしたら今後は何も起こらないかもしれません。 それでも実際に人が襲われ命を失った者もおります。国としても私個人としても、なんとかしたいのです。 その方に何卒よろしくお願い致します」
そう言うと兵士は頭を下げ、ギルドを後にした。
さて。どうしたものか。
これはまた会議が必要だな。
悩みの種が増えた。
お金を貰えるし、王都に行けば色々な情報が集まるだろう。
旅費まででるし、損はない。
ナルシッソスは何も言わないが内心は行きたいだろう。
行くべきか?
「すいません、陽介さん達はパーティなんですよね?」
スフレさんは俺達に問いかける。
何をいまさら?
「そうですが、どうしてですか? 」
「パーティの名前とか考えないのですか? 」
ほう!! ほうほう!!
パーティ名!!
「陽介ボーイ! わらわに決めさせえ!! 」
クローディアは口から火を吐きそうな勢いでまくし立てる。
「わらわが決める!! わらわが決めるゾ!! 」
必死だ。なぜこんなに必死なんだ?
何かこだわりがあるのか? この必死さは普通じゃない。
何か事情があるんだろう。
仕方ないな。
「だめだ!! 」
「なぜじゃ!? いいではないか!? 」
ガーーーン! といった効果音が聞こえてくるようだ。
「ガーーーン!! 」
口で言いやがった。
「一応聞いておくけど、何?」
「『偉大なるクローディア』じゃ!」
こいつは何言ってんだ?
パーティ名って言ったよね?
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