どういう事!?
まったく変わってないってどういうこと!?
不良品掴まされた!?
これ詐欺だわ!!
「先輩・・・・」
「元のステータスが高かったし!? だから上がってないだけだし!? 魔力以外はステータス勝ってるし!? 」
「・・・・・・」
「これ壊れてるわ。もういらん、こんなもん」
「それ100G払ってるんですからね!捨てちゃダメです! 」
まだ単純に鍛え方が足りなかっただけか?
よつばは複雑そうな顔で俺を見ている。
訓練の時間は槍を使うだけじゃなく走り込みもしているし、それなりに努力はしているつもりだったのに。
俺の身体なんなのよ・・・・
いや、待てよ?
まだ【ジョブ】でワンチャン・・・・・・あるか!?
伝説級のスキルも特殊な能力もなかったが、まだ【ジョブ】がある。
いきなりとんでもない【ジョブ】に就けるチャンスはまだ・・・・・・ある!
金だ。金が必要だ。
ジョブの適性検査に1000G,就くのに1000Gで一人当たり2000Gもかかる。
高いな、まだ先になりそうだ。
しかしまだワンチャンある。きっとある。絶対ある。それまで訓練の手を抜いてはいけない。
腐らずにいこう。
俺はよつばに慰めされながらバイトをしにキール亭に向かった。
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キール亭でバイトを始めて10日目。
ついに最終日を迎えた。
毎日豪華な夕食が出てバイト代ももらえる。そんなおいしいバイトも今日で終わりだ。
若干の寂しさを感じながら最終日のバイトをこなす。
十日も毎日休みなく働いているとさすがに慣れてくる。
俺は今【皿洗い(初級)】というスキルがあるのであれば修得しているだろう。
食堂でのバイトで引っ張りだこだ。
人気者はつらい。
最終日もそつなく仕事をこなす。
バイト終わりの食事の時、クローディアが俺達に声をかけてきた。
「よつば! チェリー陽介ボーイ! わらわとパーティを組むこと許すゾ? 許すゾ? どうだ? どうだ? 」
こいつはことあるごとに俺達を誘ってきていた。
正直、戦闘能力の乏しい俺達を誘う意味がわからない。
組んだところでよつばはともかく俺は約に立つ自信がない。
「クローディアさ、誘ってくれるのは嬉しいんだが、俺達弱いぞ? Eランクの童貞とエターナルアホだぞ? それから、今度俺のことをその二つ名で呼んだらもう話聞かないからな? 」
「弱いのであれば強くなったらいいだけではないか? わらわが引っ張ってやろうゾ」
「そもそもお互いのこと知らないのに? 」
「そこは安心せい。わらわはお前たちが悪いヤツではわかる」
そういうとクローディアは冒険者カードを俺達に見せてくれた。
【名】 クローディア・ボトルフィット (人族 妖精族)
【ランク】 E
【ジョブ】 魔術師
【ステータス】 体力 30 魔力 78 知力 48 力 15 俊敏 18
【スキル】 風属性魔術 水属性魔術 妖精話術
【属性】 風◎ 水〇 火×
【特殊】【ジョブ効果 魔力上昇 魔術威力上昇 消費魔力軽減 】
魔眼
魔術師のジョブ就きなうえに、魔眼!?
いやいやそれだけじゃない、人族と妖精族?
「わらわの魔眼は【魔力眼】じゃ。たいした魔眼ではないが、視た物の魔力とほんの少しじゃが性質がわかる。お前達、陽介はわからんのだが、よつばの魔力はとても良い性質じゃな。陽介はなぜか見えないがよつばと一緒にいるのだ、童貞じゃし悪いやつではないじゃろう」
「そうなんだ! くーちゃんすごい!! 」
よつばはとても嬉しそうにしているが反応するところはそこだけじゃない。
「妖精族というのは?」
「ふむ? 珍しくもないだろう。人族と妖精族のハーフであるゾ。妖精族の血が強いがな。 アハハハハハハ!!」
うむ。
「わからん」
「アハハ・・・は? わからんと? 人族の街から出たことがないチェリー陽介ボーイだと? 」
こいつの話は聞かなかったことにしよう。
俺は帰り支度を始め
「待て待て待て待て!! 嘘じゃ! 妖精族もいればエルフ族、獣人族、いろんな種族がおるのだゾ! 」
「なるほど、それでお前は妖精族とのハーフってこと?」
「そういうことだ。それでどうだ? 魔術師は貴重だゾ? 」
よつばを見ると先輩に任せますよ?と耳打ちしてくる。
正直依頼を受けるなら二人よりも三人だ。
悪い話ではないよな?
しかも魔術師だ。明らかに俺より戦えるだろう。
アホそうだが・・・・・
「どうする? よつば。悪い話ではないと思うけど」
「いいと思います! くーちゃん元気ですし!」
そこか? そこなの?
まぁ異論がないならいいか。
俺達は自分たちの冒険者カードを見せた。
「ほうほう。 陽介は・・・・・・ 」
「・・・・・・」
「・・・・・・あれだな。【算術】できるんじゃな。あと【指導】? なんじゃ? 【指導】は? 教えるのうまいのか? 」
「そういうことかな・・・ よくわからんけど」
「指導で戦うのか?」
「いやいやいやいや、槍を訓練中だ」
クローディアは俺の能力の無さはそれほど気にしていないようだ。
飽きれるような雰囲気もない。けっこういいやつかもしれん。
よつばの冒険者カードを見ると
「ほうほう!? 光属性魔術か。そして弓に、属性がどうなってるんじゃ?なんじゃこれは? それに【聖神の寵愛】だと!? 」
「えへへへー。【聖神の寵愛】がどんな効果かはよくわからないのですが、言語理解とか聖神系の加護とか恩恵持ちと一緒にいるだけで魔力増幅の効果とかあるみたいです」
魔力増幅の効果? 初めて聞いたな。
「ママが言ってたの? 」
「はい。 ママのお手伝いしている時に教わりました。 あたしと一緒にいるだけでママはだいぶ魔力効率、治癒魔術の効果が高くなるみたいです。教会の仕事で治療もありますからね。お手伝いしてますよ」
「他には?」
「他に?」
「陽介さんと一緒にいるだけで興奮してくる、とか。言ってた? 」
「先輩は今日から外で牛さんと一緒に寝るか、お尻にビビビビされるのどっちがいいですか?」
よつばはニコニコしながら死の宣告をしてくる。
お尻関係は勘弁してほしい。
それにしても【聖神の寵愛】ってそんな効果もあるのか。
すごいな。
「それにしてもすごいでないかよつば!! かっこいいゾ!! アハハハハ!!!! 」
もうこいつは笑いたいだけだろ。なんでも笑う。
うんこ、って単語だけでも笑う小学生のようだ。
その後俺はクローディアに、気づいたらこの世界、南の森の小屋にいたこと、この【聖神の寵愛】のこともあり教会にお世話になっている事、お金を貯めて情報を集めたい事を話した。
クローディアは小屋にいたことを聞いて多少驚いていたものの嘘はついていない、と思ってくれているようだ。あまり気にしている様子はない。
魔眼もあるのでその辺はわかるのだろうか。
そんなことよりも笑いどころがないか探っているように見える。
「気づいたら森にいた、か。まぁそんなことは些細なことだゾ。情報集めるのにも金がいるし、いろんな街に行くのなら丁度いい。わらわも追放・・・・修行のためにいろんなところに行きたいところだったゾ。丁度いい! 」
結局押し切られる形でパーティを組むこととなった。
まぁいいだろう。
戦力アップには違いない。
ただ名乗りはうざいので1回ごとに罰金でも取ってやろうか。
翌日の昼に教会に集合することを約束して俺達は教会に、クローディアは宿に戻ることになった。
ママに説明してクローディアも泊めてもらえないだろうか。
クローディアの稼ぎの一割を寄付、それからお手伝いもさせよう。
明日からはいよいよちゃんとした冒険者らしい依頼、討伐系の依頼を受ける。
ちょっとテンションが上がるな。
新しい事が始まる時、それからスカートがめくれる時というのはわくわくするもんだ。
====
翌日。
午前の算術指導も調子良く進んでいる。
なんといっても指導時間が長い、かつすでに十日以上指導している。
足し算、引き算は十の位の繰り上がり、繰り下がりまでもう完璧だ。
指導するとき、指導する相手はかしこくて優秀なやつと思うことにしている。
指導する立場のものが相手をどう見ているか、これはすごく大切だ。
こんな話がある。
とある実験が行われた。
その実験は低学年クラス担任の先生に、A君は学力テスト結果、このクラスで最高点を出した優秀な子だと伝える。
それを聞いた先生はA君はできる子なんだ、と思う。
一年後、改めて学力テストを実施した結果A君はとても良い成績を叩き出した。
しかし、実はA君は最初の学力テストで最低点を取っていた生徒であった。
という話だ。
教える立場に立つものが出来る子だ、と思って指導するとその子は本当に出来る子になる。
出来ない子だ、と思えばますます伸びないだろう。
先入観は危険だ、という警告でもある。
この話が真実なのか偽なのか、真実は不明だが俺は好きな話だ。
教える立場の者は少なくとも出来ないやつだ、なんて思いながら指導してはならない。
子供相手にならなおさらだ。
俺のステキな指導方針の結果、子供達はすっかり俺の信者だ。
「ママのパンツを盗ってこい」と命令をした場合、命に代えてでも盗ってくるだろう。
優秀な陽介チルドレンと化している。
ついでに今は算術のついでに俺が覚えた槍の使い方も教えている。
俺のスキルに【槍術】はないけどね・・・・
運動も大切だ。
昼を食べてからはママからの指導だ。
いつものように俺は槍の指導を受け、よつばは弓の指導を受け、ココは昼寝だ。
ココはとにかく俺が見える位置にいないと気がすまないらしい。
うんこの時にでもついてくる。
これから先起こるであろう、子作りの時までついてくる気じゃないだろうな・・・
早急に首輪を買う必要がありそうだ。
教会の外で訓練をしているとクローディアがやってきた。
すぐに俺達に気付き駆けよってくる。
「わらわの名はクローディア・ボトルフィット!荒ぶる暴風を手なずける魔術師であるゾ!! アハハハハハハハー!!!! 」
これから毎日聞かないとダメか?
俺はこいつに関してはアホな子だ、との先入観が全開フルバーストだ。
この認識は間違ってない。
ママもちょっと引いてるがそんなママもかわいい。好きだ。
「陽介さん、こちらの方は? 」
「えっと、紹介します。クローディア・ボトルフィット、Eランク冒険者で魔術師。俺達とパーティを組むことになりました」
「あらあら。そうなんですね」
「これからこいつも一緒に依頼を受けていきたいと思っているのですが、依頼料の一割をお渡しする条件でこいつも教会に寝泊まりできませんか?」
「よつばさんのお手伝いはとても助かってます。かまいませんよ」
わりとあっさり許可がでた。俺の嫁は心が広い。よつばの【聖神の寵愛】の恩恵も役に立っているのだろう。
その後も俺達は訓練を続けた。
クローディアもよつばを見て弓の練習を始めたが、弓を引くのも辛そうだ。
単純に腕力が足りないな。
武器訓練の後の魔術の訓練ではついに
「あたしはよつば!よつばの名において願う!あたしの魔力を使い傷を癒して欲しい! 【ヒール!】」
よつばの手のひらに淡い光がともって・・・・・・消えた。
よつばは額に汗を浮かばせているが、ママの反応を見るとどうやら成功らしい。
「やった! 治療魔術・初級の【ヒール】使えるようになりました!! 」
「やりましたねよつばさん。これからは治療も手伝ってもらいましょうか」
治療魔術は属性魔術と比べて扱いが難しいらしい。
また、基本的に【ヒール】は自分にしか効果がないのが普通で、他者にまで効果を及ぼすことができるのは【加護】持ちやジョブで【プリースト】等の治療系ジョブについていること、もしくは治療魔術の適性が高いものしか扱えないようだ。
治療魔術を他者にかけることができる能力持ちは冒険者パーティでは人気らしい。
よつばはレア人材といっていいだろう。
頭の中はアレなくせになかなかどうして羨ましい。
俺達は訓練を終えるとさっそく3人、+1匹で冒険者ギルドに向かった。
===
とりあえず昨日までのキール亭の依頼報酬を受け取る。
これで現在の手持ちはママに渡す分の差引くと5210Gになった。
ずいぶんと金が増えたもんだ。
こんなに金があると考えちゃうよね。
エッチなお店はないのか? リサーチが必要だ。
とりあえず武器を揃えようと思ったのだが、ママが訓練に使っている槍と弓を貸してくれるとの事なのでとりあえずは間に合いそうだ。武器、高いし・・・・。
3人で依頼書を見ていると
「お? 陽介達じゃない! 」
赤毛のショートカットで巨乳、この世界に来て最初に出会った人間、アンドラから声をかけられた。
「アンドラさん! こんにちは」
「陽介達は依頼受けるの?どんなの探してるのさ? 」
「今までは掃除とか食堂とかの手伝いしてたんですが、戦闘訓練も少しできたのでそろそろ討伐系の依頼を受けようかと思いまして」
「そうなんだ? じゃあこれなんていいんじゃない? 」
そう言っておススメされたのは
依頼内容:素材収集・コーンウルフの角※注意
依頼人 :アングローク
受注制限:なし
報酬 :一体に対して 200G
依頼者から一言:コーンウルフの素材・角を集めている。 部位は角の中央にある垂直の角のみ。討伐から3日以内のもののみ買取たい。ある程度の数が集まりしだい終了とする。
「素材収集? 」
「これはね、依頼を受ける必要はなくて、素材を集めたいって依頼なんだよ。 このコーンウルフはあの南の森であった角が生えた狼だよ。 コーンウルフは基本的には単独行動だし、やってみたら? 」
なるほど。 単独ボッチ行動ならかなり戦いやすそうだ。
三対一で勝負ならさすがに死傷者はでないだろう。
よつばも治癒魔術使えるようになったし、俺達には丁度いいな。
よつばとクローディアに依頼内容を伝えると
「あの時のリベンジですね! 」
「コーンウルフなどわらわの暴風で世界の果てまで吹っ飛ばしてやろうゾ!! 」
「世界の果てまで吹っ飛ばしたら素材回収できないだろーが・・・・・・」
どうやらやる気十分なようだ。
よつばはガッツポーズを、クローディアは笑いだした。
ご近所迷惑だからバカ笑いはやめて欲しい。
アンドラも行かないかな、巨乳枠として一緒にいって欲しいところだが、どうやら別パーティを組んでいるようでそっちと行く予定らしい。
ラッシュさんとも別のようだ。
冒険者っていつも同じパーティでいるってわけじゃないのかな?
なにはともあれ俺達はこの依頼、コーンウルフの素材回収をすることに決め、街に買い出しに出かける。
薬草は森で集めながらコーンウルフを探せばいいか?
と思ったのだが回復薬という飲み薬が薬草以上の効果があるらしい。
品質は色々あるのだが低品質なものでも300Gもする。
高いが命には変えられないので一人1個づつ買うことにした。
他にも皮製の水筒を二つ、食料を3人分、夜道を歩くためのカンテラを3つ買ったら2000Gも飛んだ。
金かかりすぎじゃない!?
旅は金かかるのね・・・・・・
目的地には車とか電車でブーンと。
カードでサクッと買い物して。
腹が減ったらコンビニへ。
夜はネットでステキな動画検索。
そんな世界がなつかしい。
それにしても驚いたのがカンテラだ。
このカンテラはようはたいまつの代わり、懐中電灯なんだが燃料は魔力だ。
手持ちOK、腰に吊るすのOK,水洗いまでOKで熱くない。
一度の点灯で数時間持つらしい。
俺はもちろん灯りを点けることができなかった。
魔力ないしな。
点けるときはよつばにでも点けてもらおう。
俺達は買い出しを済ませたあと教会に戻り作戦会議だ。
「さて、おふたりさん。素材の回収が無駄にならないように明日には森に入りたいと思ってるんだけど、大丈夫? 」
「かまわん!! わらわらはクローディア・ボト」
「わかったからクローディアちゃん!暴風暴風!ステキだよ!!」
よつばもいい加減にクローディアの名乗りはうざいらしい。
そもそもなんでこのタイミングで名乗りを上げるのか。
「じゃあさっそくだけど、基本的に行動は俺を戦闘に後ろによつば、クローディアと続く感じでいいかな? どこまで抑えられるかわからないけど、俺が槍で牽制しつつ後方からよつばの弓と魔術、クローディアも魔術で攻撃。
とにかく全員で索敵をして、先制攻撃で狼を倒していこう。そして危ないと思ったらすぐに帰る。いい?」
よつばたちは真剣な顔でうなづいている。
槍はリーチがあるのはいいんだけど、両手で扱うから盾が持てないのはちょっと不安だ。
主に馬上で使うランスといった突進用の片手槍もあるようだが俺には高度すぎるし、教会にはなかった。
「とにかく作戦は『命を大事に』だ。 危ないと感じたら森の入り口まで行けなくとも引き返す。たとえ治療魔術で治っても重傷を負えば撤退」
「ビビりだのー陽介は。チェリー陽介ボーイの名は伊達じゃないの」
「ビビりでけっこう。ビビりマンでいこう」
俺はクローディアのケツを引っ叩く。
チェリー陽介ボーイと口にする度にケツを引っ叩くことにした。
最後にクローディアが何が出来るのかを確認した。
仲間が何を出来て何が出来ないか、知っていることは大切だ。
色々な経験があるのかないのかも確認しておこう。
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