「初仕事と成長」

「おっきろー!!! 」


「待て待て待て!! 毛布の中にココもいるから!! 」


 アレクのバカでかい声とダイブ起こされる。

 ダイブしてくるもんだから一緒に寝ていたココが圧死するんじゃないかと心配になる。

 名前をつけてやった翌日に圧死。

 さすがにそれはかわいそうだ。


 食堂に行くとすでによつばもシスター達もいた。

 丁度いい。


「ママ、午後は依頼を受けるのですが、そこから1割を生活費としてお渡ししたいと思います。少ないですが、これからお世話になっている間お渡しさせてください」


「あらあら、ありがたくいただきますね」


 ママは快く受け取ってくれそうだ。

 断られても渡すつもりだったけどね。

 俺の童貞も快く受け取ってくれないだろうか。


 さっそく子供達を集めて午前中いっぱいを使って算術指導をした。

 遊びながらの指導だから内容は薄い。

 ゆっくりしっかり教えていこう。


 俺は指導を終え、よつばはお手伝いを終え昼食を取る。

 さっそく午後は初依頼だ。


 午後の昼下がり、俺達はさっそく依頼主・メメットさんの家に向かう。

 俺達が教会を出ると、ココがついてきた。

 「教会にいなさい!」と何度も何度も、二千回くらい言ったのだがどうしてもついてきてしまう。

 首輪もしてないしリードもないから繋げとくこともできない。

 仕方ないから好きにさせた。

 よつばはついてくるココに感激して、3歩ごとにココを振り返ってはぴょこぴょこ飛び跳ねている。

 やっぱりスイーツ脳だな。


 メメットさんの家は教会からさほど離れているわけではなかった。

 10分も歩くと到着。古い木造2階建ての一軒家だ。

 さっそくノックをし声を掛ける。


「すいませーん! 冒険者ギルドの依頼を引き受けました、陽介とよつばと申しますが、メメットさんはいらっしゃいますかー!」


 しばらくすると家の中から物音が聞こえてくる。

 ゆっくりと扉が開き顔を出したのは六十代くらいのおじいちゃんだ。


「おお、今回は君達が引き受けてくれたんだね。依頼主のメメットだ。今日はよろしく」


 俺達はメメットさんと軽く握手を交わし依頼内容の詳細を聞いた。


 メメットさんはこの一軒家で一人暮らしのようだ。

 身内は息子が一人いるが、王都で鍛冶師をしているらしい。

 けっこう優秀なようで、息子自慢がすごい。


 息子は10歳で鍛冶師ジョブについた 鍛冶以外にも斧を振るい魔物も狩れる 頭も良く商才もある

 わしに似て女にモテる 14歳で童貞卒業した 等、自慢がすごい。


 十四歳で童貞卒業とかすごい、と思う反面それを親父に報告すんのか?

 メメットさんの息子はファザコンだな。

 ファザコンのリア充野郎だと言うことがわかったが、ここまでの情報全部どうでもよい。

 問題は依頼内容とマネーだ。


 依頼内容は簡単なことだった。

 一軒家に一人暮らしのメメットさん。年も年なので使ってない部屋まで掃除するのはとっても大変。


 年に数回、ギルドに依頼を出して大掃除をしているようだ。

 部屋数は多くはないものの、1階には大部屋、リビングと呼ぶべきか。

 4部屋ほどあり2階にも同じ構造で4部屋。

 普段は1階部分しか使用していないため2階は手付かずだ。

 俺達は分担しながらほうき掛け、雑巾がけをしキッチンまで掃除する。

 テーブルから出窓、家具の上のほこりまで丁寧に掃除をした。


 掃除時間は2時間くらいだろうか。

 あまり大きい家でもなかったので二人で分担するとあっさり掃除は片付いた。


「メメットさん。掃除終わりましたがこんな感じで大丈夫ですか? 一応各部屋を確認してください」


 膝の上にココを乗せ、本を読んでいたメメットさんに声を掛ける。


「ああ、ありがとう。今行くよ」


 メメットさんはゆっくり席を立つと俺達に続き各部屋を回る。

 思いのほかきれいになっていることに驚いているようだ。


「こんなにきれいにしてくれたのは初めてじゃ。お前さんたち、掃除職人じゃなぁ」


 メメットさんは笑う。


「満足してくれたようでよかったです。また機会があれば仕事を引き受けさせてください」


「メメットおじいちゃん、今度は指名してね指名! 」


 よつばはキャバクラ嬢みたいなことを言う。

 指名して欲しいそうだ。

 依頼の出し方には指名依頼というものもあるようで、引受人を指名できる。

 指名依頼が多いとギルドの評価は上がるらしいが、掃除で指名されてもなぁ。

 この世界で伝説の掃除職人にでもなるつもりか。


「ほっほっほ。すごくきれいにしてくれたお礼じゃ。特にキッチンがすごい。丁寧にありがとうよ」


 メメットさんは依頼書に完了サインをしてくれた上で、さらに追加で100Gくれた。

 完了サインの入った依頼書をギルドに提出することでギルドからお金がもらえるらしい。


 俺達はメメットさんに挨拶をしてギルドに向かう。

 ギルドにあいつ・・・・・・ アホ丸出し子はいないよな・・・・・・


 警戒していたもののアホ丸出し子はおらず、すんなり受付カウンターに行けた。

 もちろん俺の嫁、スフレちゃん目がけて一直線だ。


「すいません、依頼が完了したので報告です」


「かしこまりました。報酬を準備しますね」


 スフレちゃんは俺にしか見せないであろう、愛情がてんこ盛りな笑顔で応える。

 かわいい。ほんとかわいい。

 スフレちゃんのためにも稼がないと。


 俺はサインをもらった依頼書をスフレちゃんに渡すと200Gを受け取った。

 今回の報酬は追加報酬と合わせて300G。

 30Gをママに渡して残りは270G。

 もともと持っていたお金が140G。合わせて410Gか。


 うむ。

 あれだな、あれ。


 こんなん金貯まるか!?!?

 宿と食事を教会にお世話になってなかったら詰んでるぞこれ。

 真剣にお金を集める方法を考えるべきだ。

 改めて依頼書が貼ってある依頼ボードをよつばと眺める。


 討伐・素材回収系の依頼はEランクでもそれなりに高い。

 どんな魔物かはわからないが、


【スタンドウルフ討伐 10体 2000G + 素材買取 報酬見込み3000G】

【フール―ローバー討伐 20体 2500G +素材買取 報酬見込み4000G】


 そこそこ高い。

 高いが戦闘力のない俺達には無理だろう。

 うーん・・・・・・。



「先輩先輩、今度はこれにしましょう!」



 俺の思考を中断するようによつばが依頼書を持ってきた。

 依頼内容は


 依頼内容:食堂キールの手伝い(急募)

 依頼人 :キール

 受注制限:なし 数名募集

 報酬  :一日  400G

 依頼者から一言:スタッフが抜けてしまい緊急で2~3名募集。夕方から夜まで、十日程頼みたい。食事の準備や注文取り、食事出しの仕事となる。男性・女性・種族・年齢を問わないが料理経験者、愛想がいいと助かる。うちの自慢の夕食も出そう。


 夕食付!!


 夕方からというのもいいな、昼間はママからの訓練を受けたい。

 この仕事を受けながらしばらくは訓練に力を入れよう。

 よつばの分と合わせれば二人で一日800Gの稼ぎだ。

 毎日80Gづつママにお渡しすることができる。 教会の負担も軽くなりそうだ。



「この依頼いいね。さっそくこれを受けよう。」



 よつばと一緒に受付カウンター・スフレちゃんの元に向かう。



「依頼の受注ですか? 」


「はい、よつばと二人でこれを受けたいと思います」


 依頼書を渡す。

 スフレちゃんは依頼書を見ると


「それではさっそく依頼主に連絡入れておきます。明日からお店に行ってください。急募でしたので喜ばれると思います。依頼主のお店、わかりますか? 」


 俺達はスフレちゃんからお店の場所を聞いた。

 お店は街の入り口付近にあるようでここから少し歩くようだ。

 大通りに面しているようなので迷わずいけるだろう。


「そういえば、スフレちゃんは休みの日とか何してるの? 」


「え? お休みですか? そうですね、最近は掃除したり、料理の作り置きしたり、家のお手伝いしたり」


「ほう。 家庭的なんですね」



 さすがスフレちゃんや。俺の嫁なだけある。

 俺も一緒に家事やるからね。家事が女の仕事だなんて思ってない。

 俺は家事男子なのだ。

 はやくスフレちゃんと子作りをしたい。

 子供の名前も考えないとな。


「あとは、息子の世話とー 」


 人妻かよ!!!!!! 

 結婚詐欺じゃねーか!?

 彼氏がいるとかさ!? 夫がいるとかさ!? 

 先に言っとけや!!


 それから!!

 彼氏持ちが合コンに来るなや!!

 なんで彼氏持ちが合コンくるの?!

 バカなの!? ビッチなの!?

 スフレちゃんのアホ!!


 俺は適当に会話を切り上げてニヤニヤ笑ってるよつばと、足元に絡みつくココと一緒に教会に帰った。



===



 さっそくママにこれからの予定を報告・相談しておく。

 俺の心にはもはやママしかいない。

 俺は一途な男なのだ。


「ママ、これからなんですが、明日から十日間『キール亭』で食堂の仕事を夕方から数時間したいと思います。報酬は一日当たり一人400G。二人分で80G毎日。そして夕食付なのでこれからは私たちの夕食はいりません。それからママは人妻じゃないですよね? 」


 最重要事項の確認もしておく。


「あらあら、ありがとうございます。キール亭はとってもおいしいですし、いろいろな方が出入りするのでこの国を知るには丁度いいでしょう。それから人妻じゃないですよ」


「そうなんですね。それは楽しみです。明日からは午前は算術指導、お昼後はママから訓練を受けられたらと思います。その後キール亭に行ってきます」


 ママは女神だ。


 その後、よつばが俺がスフレちゃんに振られたことをママに告げ口したり、ココの話をしているうちに夜はふけた。

 犬っているだけで会話の種になるよな。

 家庭の会話を増やす貴重な存在だ。


 そんな事を思いながら、今日もココと毛布につつまれママの夜這いを期待しつつ眠りについた。



====



「おっきろー!!! 」


「待て待て待て!! 毛布の中にココもいるから!! 」


 これ毎日やるの!? 前日と同じ会話を起こしに来たアレクと繰り広げる。

 こんな小僧に起こされるよりもママに起こされたい。

 上も下も。

 まぁ下は勝手に起きてしまうやんちゃボーイだが。


 午前中は2桁の足し算を教える。3桁まで覚えたら次に引き算だ。

 ゆっくりじっくり。

 素人ははすぐ先に進みたがるからな。

 童貞はこれだから困る。


 午後はママから訓練を受ける。

 俺は槍、よつばは弓。そして今日からは二人で魔術の基礎も教わる。


 魔術の話、理屈はわかったが魔力がない。

 魔力を集中して、とか、魔力をイメージして、とか。

 まったくわからん。


 理屈としては、体内にある魔力を指先や手のひらに集中させ、イメージを固める。

 さらに魔力を込めた詠唱することによってこの場所に現象を生み出す、らしい。

 なるほどな、とは思う。


 しかし、体内にある魔力の話になるとまったくわからない。

 よつばは魔力の感覚がわかるようで


「先輩! 魔力の練習をするとお腹がすきます!! 」


 との事。

 魔力の使用は腹が減るらしい。

 よつばがアホだからお腹が減るのか、そういうものなのか。

 わからん。


 魔力の練習をしているとココが怖がって近づいてこない。

 何か感じるものがあるのだろうか、あきらかに怯えている。

 犬のくせに俺より敏感なようだ。

 いや、犬だからか? 人間にはわからない第六感みたいなものがあるのだろう。


 よつばが魔術の練習をしている間に俺は槍の練習や体力作りをする。

 あっというまに訓練時間は過ぎていく。


===


 訓練が終わった俺達は体を拭いて身支度を整えると、さっそく『キール亭』に向かった。

 あいかわらずココは俺の後をついてくる。


 食堂に犬。さすがにダメだろ。


 この世界がどんな食材で料理をしているかはわからないが、へたすりゃ食材にされるな。

 その時はあきらめよう。


 そんなことを考えているうちに『キール亭』に到着した。


 キール亭はそこそこの大きさの食堂だ。

 木製カウンターに6人掛けができそうな大きめなテーブル席が八つ。

 建物は少し古いものの丁寧に掃除されておりとても清潔感がある。

 店内は数組客がいるようだ。

 さっそく俺はカウンターにいた角刈りのおっさんに声を掛けた。



「すいません。冒険者ギルドで依頼を受けました、陽介と、こっちはよつばです」


「きたか!! 助かるぜあんちゃん達! 俺がこの店の店長、キールだ! さっそくだが料理の経験はあるか?」


「私は昔調理の仕事を少しだけしたことがあります。よつばは? 」


「あたしは料理できますよ!! なんて大きな声では言えませんが、それなりにはできるかと」


 おっさんは俺達を順番に見ると


「そうかそうか、なら陽介は料理担当、よつばじょーちゃんは注文受けてくれや!」


「はーい! 」


 よつばは元気に返事をしているが、まぁ妥当な人選だ。

 俺でもよつばを注文受け担当にするだろう。

 さえないアラサーの俺なんぞ料理担当でキッチンに引っ込めておくに限る。

 よつばは見た目いいしな。


「一緒に働く仲間を紹介しておこう、くーちゃん!!」


 キールおっさんはテーブルを片付けていた女の子に声をかけた


「なんであるか!! アーハハハハハッ!! 」


 聞き覚えのあるバカ笑いが店内に響き渡る。

 まじかよ・・・・・。

 元気なのはいいことだがこれは元気すぎるだろ。

 バカ笑いの主はキールのおっさんに呼ばれ俺達の前にくると


「わらわの名はクローディア・ボトルフィット! 荒ぶる暴風を手なずける大魔術師であるゾ!! アハハハハハハハー!!!! 」


 クローディアと名乗るアホ丸出しの子は腰に手をあててふんぞり返っている。

 恰好はギルドで見た時のまんまだ。

 腰までの短いローブにビキニと短パン。杖は持っていない。

 その格好に『キール亭』のエプロンを付けていた。


 やっぱりこいつか!!

 冒険者ギルドで俺のことを童貞扱いし近づいてきたロリ女!

 アホ丸出し子は俺に気付いたのか


「おやぁ? お主は冒険者ギルドで見かけた童貞だな? 奇遇であるゾ!! 」


「は・・・はぁ」


「お、くーちゃんの知り合いだったか。なら丁度良かったな、仲良くやってくれ」


 知り合いではないがわざわざ否定することもないだろう。

 俺達は改めてクローディアに名乗る。


「俺は陽介。花岡陽介だ」


「あたしは小春よつばです。よろしくお願いしますね」


「ほう? それだけか? 」


「それだけ? というと?」


「わらわは『荒ぶる暴風を手なずける大魔術師』であるゾ。お前らもなんかあるだろう? 」


 ねーよ・・・・・。 

 よつばは必死に考えているようで、うんうん唸りながら自分の冒険者カードを見ている。

 そのうち何か思いついたのか


「あたしは! 神に選別されしエターナル・フォーエバー! よつばであるぞ!!」


「ほう!! ほうほう!!!! ほうほうほう!!!!!! なかなか良いではないかよつば!!気に入ったゾ!! 」


 エターナルもフォーエバーも永遠って意味だろ・・・・・・頭大丈夫かこいつは。

 こんなバカに付き合ってられないので俺は頑なに二つ名は無いと言い張っていると


 「孤高なるチェリー陽介ボーイ」という名を二人から与えられそうになったが丁重ていちょうに辞退した。

 こいつらいつか絶対泣かしてやるからな。ベッドの中で。

 エターナルフォーエバーしてやる。


 キールのおっさんから仕事の内容を聞き俺は厨房、よつばとクローディアのアホ共は注文係だ。


 ファミレスのキッチン担当、フロア担当って感じだな。

 俺のメインの仕事は皿洗いや盛り付けになりそうだ。


 エターナルアホ共は注文取り、料理出し、片付けがメインの仕事。

 メニューは多くないのですぐに覚えることができそうだ。


 さっそくキールにエプロンをもらった俺達も仕事に取り掛かる。

 しばらくすると客も入りだし忙しくなってきた。

 けっこう流行ってるなキール亭。

 客層は冒険者風の恰好をしたやつや多かったが町民もいた。

 主によつばが、まれにクローディアもナンパされていたが、その度に


「わらわの名はクローディア・ボトルフィット! 荒ぶる暴風を手なずける大魔術師であるゾ!! アハハハハハハハー!!!! 」


 名乗りをやるもんだから次第にナンパされなくなってきた。

 鉄壁だなクローディア。バカはこういう時に真価を発揮する。

 バカの壁は厚い。


 みっちり4時間ぐらい仕事をすると落ち着いてきた。

 俺達の仕事ぶりは上々らしく、キールのおっさんも満足そうだ。


「お疲れ様だ、お前たち。 しっかり働いてくれたな、お待ちかねの夕食だ、腹いっぱい食ってくれ」


 出されたのはステーキ。 肉、肉が出た!この世界初めてのお肉!!

 2センチはあろうかという厚さに、手のひらサイズの大きさがあるステーキだ。

 付け合わせには野菜サラダ、ふやかしてある麦。

 米が無いのは残念だが、この際どうでもいい。

 肉は塩とソースで味付けがしてあり絶品だ。

 麦は味がないがまぁいい。

 これはキール亭一番人気のステーキだ。

 まさかこれを食えるとは。



 無我夢中むがむちゅうで食べ始める。

 クローディアがおかわりを要求したら、キールのおっさんは気前よく2枚目を焼いてくれたので俺もついでに頼む。

 バカのおかげで俺も乗っかることができた。

 クローディアはできる子。


 食べ終わるとキールのおっさんは依頼書に今日の分のサインをくれた。

 明日ギルドに持っていって400Gもらおう。


 すっかり日も暮れているので教会に帰り今日も一日を終えた。



========



 キール亭で仕事を初めてから5日が経った。

 俺達の所持金は4010Gになっており生活に必要なものを揃え初めていた。

 お互いの下着の替え、リュック、それからママに最初に買うことをおすすめされた靴だ。


 よつばに


「パンツは毎日同じの穿いてるの? それとも洗濯してる間はノーパン? 」


「お、同じの穿いてませんしノーパンの日もありません!! ママに借りてますよ!!」


 どうやらママに借りていたらしい。

 どんなパンツ穿いてるんだろう。


「ちょっと見せ」


「ません!! 」


 よつばの右手が光を放ち ビビビビビッ!! とスパークする。

 こいつはいつのまにか光属性魔法の初級、ライトアローを覚えたようで、たまにビキビキさせている。

 いいなぁ。魔術。


 いいなあああ!!!!


 パンツは見せてくれなかったが粘り強く丁寧ていねいに魂を込めて土下座をしていると色だけ教えてくれた。


 黒だ。黒好きだなこいつ。


 あいかわらずチョロいなよつば。

 チョロチョロだ。



 そんなわけで、下着や肌着、皮の財布用袋、リュック、ブーツを買った。

 俺のリュックはグレー、よつばのリュックは赤だ。

 俺のリュックに薬草が一つ入っているだけで他には財布しか入ってない。

 革製のブーツは俺が黒、よつばは茶色だ。

 何の革でできているのかは知らないが俺の履いていた革靴とはわけが違う。

 とても丈夫、かつ動きやすい。

 革製の運動靴って感じだ。


 ここまでの使用金額は2400G。 残り1810Gとなりすぐに半分なくなった。

 ここからお小遣いとしてよつばに200G渡しておく。好きに使ってくれ。

 残金は1610Gか。


 今日もいつものルーティーン、午前は指導、午後は訓練、夜はキール亭でバイトだ。


 だんだん槍の扱いも慣れてきた。

 走り込みで体力もついただろう。

 午後の訓練が終わりよつばが自分の冒険者カードを眺めている。


「先輩・・・・・・ 私のカード変わってません!? 」


「え? 見せて?」


 よつばのカードを見て見ると


 【名】 小春 よつば (人族)

 【ランク】 E

 【ジョブ】 ==

 【ステータス】 体力 31 魔力 77 力 22 知力 44 俊敏 20  

 【スキル】 弓術(初級) 算術 解体 光属性魔術  

 【属性】 ∞

 【特殊】 聖神の寵愛   


な!?!?


ステータスが微妙に上がってるし、スキルに【光属性魔術】が増えてる!?


「ステータス上がって光属性魔術が増えてるじゃん!!」


「えへへへ~ 今治癒魔術の練習もしてますから、さらに増えそうですよ~。 先輩はどうですか?」


 俺のは!? あわてて自分のカードを見ると


 【名】 花岡 陽介 (人族)

 【ランク】 E

 【ジョブ】 ==

 【ステータス】 体力 42 魔力 × 知力 59 力 36 俊敏 27  

 【スキル】 算術 指導

 【属性】 ==

 【特殊】 


 ん?

 変わった・・・・か?

 前回のステータスは確か・・・・


 【名】 花岡 陽介 (人族)

 【ランク】 E

 【ジョブ】 ==

 【ステータス】 体力 42 魔力 × 知力 59 力 36 俊敏 27  

 【スキル】 算術 指導

 【属性】 ==

 【特殊】 



 一ミリも変わってねえ!!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る