「魔力!!」
「魔力!!」
本当にあるとしたら? 魔法が使えるだなんて夢のようだ。
散々これまでゲームの中で使ってきた魔法。
ド派手な爆発で辺り一面を消し飛ばし俺ツエ―をする魔法を使ってみたい!!
攻撃魔法だけじゃない、透視や透明化、極めつけは時間停止!!
この三つは男子なら毎日考えているであろう魔法だ。
一度も考えたことがない、とか言うやつはホモかホモだろう。
魅了魔法も捨てがたい。気になる女子は全員俺に惚れてすぐに休憩できるところに行きたがる魔法だ。
魅了魔法さえ使えれば俺の卒業式も近い。
魔法が本当にあるとしたらぜひ一度見たいし使いたいし味わいたい。
「魔力? それって魔法とか魔術が使えるってことですよね? さすがにそれはないですよー 」
半信半疑のままかなり期待しつつ俺はアンドラに言い放ったが、アンドラは「見てなよ?」と言ったかと思うと俺に手をかざし
「私の魔力を糧としここに具現してみせよ!【
詠唱!? アンドラのかざした手から俺のほうに向かって勢いよく水が噴き出す。
「水!? 」
俺は飲んだ。
とにかく飲んだ。
飲めるのか確認もしていないが喉が渇いていたのだ。
アンドラから出ている水だと思うといくらでも飲める。
「飲んでるの!? 喉乾いてたなら言えばよかったのに! 」
よつばが羨ましそうにこちらを見てる。
「よつばも濡れ濡れのクチュクチュにしてやってください!」
「え!? 飲めるだけでいいですから!! 少しだけでいいです!! あと先輩その言い方すごくイヤ!! 」
この水は調整できるのか、アンドラは自分の荷物から小さなコップを取り出し、水を入れるとそれをよつばに渡した。
「先輩、本当に魔法がある世界なんですね……」
「うん、これはさすがにびっくりするわ…… けどこれで完全に元の世界とは違うってわかっちゃったな」
言われてよつばも気づいたのか、複雑な表情をしている。
こうなると【日本に帰る】のではなく【元の世界に帰る】となり、ハードルがとんでもなく上がった気がするな。
便座にでも座ってきばっていればそのうち帰れそうな気もしないでもないが、とにかくまずはこの世界で生活できるようにしよう。
「ほんとになにもしらないんだね? 」
「はい…… 私も魔術使えるようになるんですか? 」
「魔力はさ、この世界全てのものにあるんだよ。動物でも直物でもなんでも。だから陽介にもあるよ。あとは人ぞれぞれ適した属性ってもんがあるよ。適性がなくても魔術は使えるんだけど、使える魔術とかは限られるみたいだね。ちなみに私は水ね。そっちのラッシュは土、らしいけどそもそも魔力が少ないからたいしたものは使えないみたいよ」
「適した属性? どんな種類があるんですか?」
「私もそんなに詳しいってほどでもないんだけどさ。【火 水 風 土 光 闇】 が基本だね、光は、聖とも言われるし、闇は魔、とも言われてる。他にも呪術とか付与とか召喚、けっこう色々あるみたいよ」
「せっかく魔術が使えるのに、何でそんなに適当なんですか? 」
「適正があっても魔力がある程度ないと使いこなせないからね。魔術は覚えるのも大変だし、基本的に高いんだ。その辺は街についたら調べれるよ。適性とか能力、調べてみたらいいんじゃない? 」
おおおお!? なるほど!! とりあえずま魔力さえあれば俺も魔術が使えるってこと!? そういえばこの世界にきてから絶大な力が宿ったかのような雰囲気を感じないでもない。荒ぶる力が俺の中に渦巻いているのをギンギンに感じる!! ような気もする。
これから俺は伝説の魔術を使いこなし賢者とか勇者とか呼ばれちゃうわけだ。
賢者で勇者の俺様にかかればアンドラへの借りなんてあっという間に返せそうだし、近いうちに乳も揉めるだろう。
異世界チョロい。チョロゲーや。
こっちの世界で英雄として脱童貞を目指し第八婦人くらいまで娶るのもいいな。
よつばも希望するならその中の何番目かに入れてやらんでもない。
「先輩…… なにか気持ち悪い事考えてる顔してますよ……… 」
「いや、俺とかたぶん大魔法使いじゃん? 国を救う英雄系じゃん? 伝説の勇者とかじゃん? 」
「は…… はぁ。そうなんですか?」
「だから今ここにいる、みたいな。わかるわぁ」
ほんとわかるわぁ。
自分で納得していると、よつばは俺と会話する気を無くしたのか
「アンドラさん、あとどれくらいでつきそうですか?」
「だいぶきたから、もう三十分もあればつくと思うよ。それから二人とも敬語はいらないよ、私だって使わないし」
森を抜けると街までの道があった。道には細い車輪の後がついている。
車はないようだが馬車くらいはあるのか?
アンドラ達が角狼を狩りながら進んできたおかげで帰り道は平和だ。
そうこうしているうちにエアロの街が見えてきた。
あまり高くはないが、2メートルくらいの石の塀で街全体が囲われている。
外敵から街を守る必要があるってことだろう。とにかくこれでなんとか一安心できそうだ。
街並みはまさに中世ヨーロッパ。
石と木を中心に家が作られており、赤茶色の屋根が雰囲気を出している。
門には守衛がいるもののフリーパス。
特にチェックすらされなかったが、俺とよつばの恰好が珍しかったのかチラっと見られたくらいだ。
まぁ、恰好もそうだが両手に抱えた薬草も異様だろう。
リュックくらいは欲しいものだ。
「ここまできたらもう安心だよ! 二人ともお疲れ様! お礼は薬草を売ったお金から100G貰うことで手を打とう! 」
満面の笑みでアンドラは俺達に提案してくる。
俺も特に反対するつもりはない。
命の恩人だしな。
よつばも異論はないようだ。
「それでいいですよ、本当にありがとうございます」
「敬語はいいってば。商店街行ってから冒険者ギルドに行こうか、適性と能力見て見たいんでしょ?」
そうだった、敬語止めるんだったな、最初に敬語使っちゃうとどうもそのまま敬語になっちゃうんだよな。なんか変な気を使ってしまう。
それにしてもアンドラは俺のことを本当に考えてくれている。これはもう完全に俺に惚れたな。
俺は鋭いのだ。
「敬語はやめるよ、商店街と冒険者ギルド、よろしく! 」
俺はこれから始まるであろうアンドラとのラブロマンスと、英雄道に胸躍らせながら商店街への道を歩き始めた。
街の商店街は門からすぐ近くの場所にあった。
色々な看板が見え、描かれている絵からなんとなくどんな店なのかわかる。
例えば剣と盾の看板。 まぁこれはそのまま武器や防具ってとこだろう。
本の看板。本屋かな。 杖の看板。杖?? 杖の専門店か??
他にもパンっぽいものや薬草、ジョッキ、いろいろな看板がある。
えっちそうな看板を探したがそれはなかった。
まぁえっちそうな看板ってなんだろうな?
パンツの看板か?それともブラ?
そもそもアンドラ、パンツ穿いてんのか?
もしかしてパンツなんてものが無い世界じゃないのか?
俺得!!
ほんとこの世界は俺得な世界だな。
ノーパンアンドラは薬草の看板の店の前で
「ここでその薬草は売れるよ。あんたら何も持ってないし仕事もないよね? 」
「うん。何にもないね……金も仕事も……」
ついでに女性経験もない。
アンドラにはパンツがないんだろう。
「まぁ、とりあえず薬草売ろうか」
アンドラはそう言いながら店に入る。
前掛けをかけた性欲の強そうな顔のおっさんがカウンターにいた。
チラっとこちらも見るも「いらっしゃいませこんにちは!! 」なんて声もない。
この世界の店はこんなものなのだろうか?
アンドラはさっそくおっさんと交渉している。
「南の森の摘みたて薬草だよ。さっき取ってきたんだ、高く買ってよ♡」
「見せてくれ」
店員の前に俺とよつばは持っていた薬草を全て乗せる。
俺は念のため少しだけポケットに残しておいた。
何があるかわからんしね。
「全部まとめて薬草22個分ってとこだな、440Gだ。」
性欲の強そうなおっさんは薬草22個分と見たようだ。ちょろまかしてないだろな?
この世界での金銭の単位はG(ゴールド)と呼ぶらしい。
「一個当たり20Gってことか。相場はそんなもの? 」
俺はアンドラに聞くと、アンドラはちょっと驚いた顔をしたものの
「まぁそんなものかな。妥当なところ。相場は一定じゃないしね」
そんなものか。と納得しているとおっさんはアンドラに
「お前さんの持ってくる薬草はなかなか質がいいからな。なかなか良い目をしている」
「まぁねー かあちゃんが
おっさんから440Gをもらう。
「それじゃあそこから100Gだけもらっておくよ♡」
アンドラに100Gも持っていかれたが、まぁいいだろう。
正直、物価がわからないので高いも安いもさっぱりだ。
その金でパンツでも買ってくれ。
なんなら俺が選んであげよう。
「よつば、とりあえず二人で割って、170Gづつ持ってようか。それともまとめて俺かよつばが持っておく? 」
「とりあえず先輩が持っててください。私ポケット浅いので」
「おい、そこのお前、算術ができるのか? 」
性欲の強そうなおっさんが会話に割り込んできた。
「四則演算はもちろんそれなりに。あ、よつばもできますよ」
となりのよつばを指さして応える。
「四則演算?」
「足したり引いたり、割ったり掛けたりですね」
性欲のおっさんは俺達に興味を持ったのか、上から下までジロジロみられる。
よつばの時には乳を中心に見ていた。エロ助め。
「まぁいい。これからも利用してくれや」
俺たちは店を出たが、さてどうしたものか。
これからの当てがまったくない。
今は何時ぐらいだろう。日の傾き加減からそろそろ夕方ってところだろうか。
アンドラを見ると目が合い
「さて、次は冒険者ギルドで適正と能力見てもらおうか」
「そうだった! 俺の勇者発現イベント!! 」
そうだった、そうだった、メインイベントはこんなちんけな雑草売りじゃない、俺の勇者発現イベントだった。
この世界の国中からちやほやされるハーレムイベントの最初の一歩を今から起こす。
よつばは俺の顔がにやにやしているのにあきれているが、適性を見ることについては楽しみなようだ。
こいつにはどんな適正や能力が見れるのだろう。
それにしてもどんなのだろう? シンプルに
【勇者】とか【賢者】とかか?
【全属性適性】とか【全属性耐性】、【超絶魔力】とかか?
どう考えても無双だと思える適性があるはずだ。
じゃなかったらこんなとこに飛ばされる理由がない。
アンドラの後をわくわくしながらついていくと、ドラゴンの看板が掛った割りと大きい建物についた。
ウエスタン風のドア、と言えばいいのだろうか。
両開きの扉を開けると奥にはカウンター、手前には冒険者と呼ばれる人達が打ち合わせでもするためだろうか、テーブルとイスがそれなりにある。
ざっと見ただけでも20人くらいの人達がいる。
食事も出しているようで気の早い人達が料理をつついている。
見てたら俺も腹が減ってきた。
適性みたら食事にしたい。
「とりあえず、あんた達身分証もないでしょ? 冒険者登録しておけば何かと便利だよ。場所によっては冒険者割引もあるし、買取も高くなる場合もあるしね。仕事がないなら登録しておいて損はないと思うよ。」
「適性だけ見てもらうことはできないの?」
「登録時に適性と能力検査をするからね。検査だけでもお金かかるよ。だったら登録したほうが得だよ」
まぁそんなものか。よつばも異論はなさそうだ。
アンドラはさっそくカウンターから声をかけると、受付嬢がこちらに来た。
「こんにちは~。アンドラさん、お仕事の完了報告ですか? 」
「いや、森で会ったこいつらの登録をお願いしたいんだ。説明からお願いできる? 」
受付嬢は20代前半だろう。長い金髪を頭の上でお団子にしている。
ギルドの制服だろうか、襟付きのシャツの真ん中にリボンのついたかわいらしいデザインだ。
ブルーの瞳でこちらを値踏みするようにジッと見つめてくる。
シンプルにかわいい。
嫁候補に入れておこう。
「それでは登録について説明いたします」
長々と説明が続いたが要約するとこうだ。
冒険者登録をするとギルドの依頼を受けることができる。
冒険者はランクごとに分かれており、下から
E 駆け出し D 初級 C 中級 B 上級 A 超上級 S 最上級
といった具合だ。
Cランクになってやっと童貞卒業、みたいな感じだろう。
冒険者の多くはBランクを目指しているらしい。冒険者ギルドや関連機関での割引購入等特典を受けることができるみたいだ。
ランクの上がり方は依頼の達成数・貢献度、狩った魔物、偉業、ダンジョン踏破等、様々な要素で上下する。
童貞だからといって不当に評価されることもない。
公平な制度だ。
ランクが低いからといって受けられない依頼はないが、難しい依頼はランク指定があることがほとんどだ。ランクが高いと受取れる報酬も高い。といった具合らしい。
冒険者には魔術のかかったカードが配布され、そこにステータスやランクが表示される仕組みだ。
他にも細々と「依頼には誠実に取り組むこと」とか「冒険者同士は助け合いましょう」とか、そんな道徳的なことを言っていたが対したことは言ってなかったのでまぁいいだろう。
「それでは最初の登録料は一人100Gです。こちらの石板に手を置いてください。」
一人100G!? 高すぎると思うが金銭感覚がわからない。二人分払ったらもう残りは140G。これで何ができるんだろう。
だがしかし、俺は勇者だ。これぐらいでケチケチしてらんない。二人分のお金を素直に払う。
それにしてもあれだな、前座が必要だ。
「よつばさん? あなたからやってみたらどうですか? 」
「え!? 先輩すごい楽しみにしてたじゃないですか? 先輩からでいいですよ? 」
「そ、そう!? よつばからにしない!? なんか怖いわぁ! ビリビリしたらどうすんの!? 」
「先輩ビリビリしそうなものを私からやらせるんですか!? この童貞!! 」
童貞言うなや!! アンドラと受付嬢ちゃんに聞かれるだろ!!
なんとなく周りからの視線を感じる。
よつばは俺が童貞なのがよっぽど嬉しいのか、事あるごとに童貞呼ばわりしてくるようになった。
昨日までは尊敬されている先輩だったはずなのに、だ。
童貞ってそんなに罪か?
会社ではちょこちょこついてきては俺のことを質問攻めにしていたくせに。
誰のおかげで仕事を覚えたと思ってるんだまったく。
石板を見ると、手のひらサイズの大きさでそこまでの大きさはない。
「いいの? 俺からでいいの? 」
「いいですよ、どうぞどうぞ」
「ほんとに? ほんとにいいの?」
「はやくしてください童貞勇者様」
このガキ!!縛り付けて四つん這いにしてやろうか!!
仕方ないので手を添えてみる。
ビリビリとか……しないよね?
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