中二病の隣の席に中二病が転校してくる話
ぼくのクラスはそうぜい27人だ。
教室には机がたてに六列並んでいて、二列づつくっついている。
おさっしだろう。
あぶれ者が存在する。
くじびきで一番後ろの席を勝ち取ったぼくは、それと同時に孤独も勝ち取っていたのだ。
まあ、もっとも。
幼稚なクラスメイトが周囲に何人いたところで、ぼくの心はいつでも孤独を感じているわけだが。
おろかな有象無象とたわむれるのも悪くはない。
しかし、彼らは純粋すぎるのだ……ぼくとくらべて。
穢れきった世界につかれてしまったぼくは、彼らと分かりあうことができない。
ぼくの席は、ぼくの存在そのものを表しているのだ…… 。
しかし、まぶしい朝の光にてらされた今日の教室は何かがちがう。
ぼくの席のとなりに、机があるのだ!
みんながぼくの席に、いや、ぼくのとなりの席に注目している。
転校生かな。男子かな。女子かな。どこから来たんだろう。
ざわざわする中で、ひときわやかましいタケルの声が教室中にこだました。
「女子だ!」
ランドセルをしょってない。
タケルの席を見ると放りなげられた形のまま机の上にのっていた。
職員室まで見に行ったんだととくいげに語るタケル。
話を聞くがはやいか、おろかなクラスメイトたちはタケルと同じ行動をしはじめた。
たかが転校生ごときにはしゃいで、のんきなものだな。
ぼくは大きなため息をついて自分の席に座った。
ランドセルから出した本を開いて机の上に広げる。
重たいハードカバーの本だ。
人類の過去のあやまちについて詳細に記されている。
こういう高度な書物は、学校や、近くにある公民館にある図書館には置いていない。
幼稚なクラスメイトのさえずりから耳をふさいでぼくは本の世界にぼっとうした。
それから五分もたっていないだろうか。
先生に連れられて、小柄な女子が教室へと入ってきた。
スカートは見たことのない色とがらだったけれど、シャツは白い丸えりでぼくたちと変わらない。
うでにハンカチをまいている。白いハンカチだ。
前の学校でのはやりだろうか。
どこの学校も幼稚な小学生にあふれているのだろう。
先生が黒板に名前を書いていると、女子がそれを止めた。
「名を知られるとまずい……オレのことはアレクと呼んでほしい」
黒板には、田口と書かれている。
口は小さくて横長で、ふんいきてきにいって、中になる予定なんだと思う。
こまった顔の先生に背をむけて、田中アレクさんがぼくのほうを指さす。
「あれがオレの席だな? ああ、いいぜ、言わなくても分かる……」
ふふんと笑う田中さんに、ぼくは何だか言い知れない巨大な不安を感じていたのであった……
ぼくたちは、きっとあいいれない……そう本能が告げている……
ふるえるぼくの耳にタケルのやかましい声がとどいた。
「似たよーなヤツが来てくれてよかったなコトネ!」
うるさい一緒にするな!!
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