第45話

 朝になって、僕はなかなか布団から出ることができなかった。

(あれはなんだったのだろう、夢であって欲しい……)

 そればかりを願っているうちにまた睡魔に襲われた。仕事が休みの僕は、抗うことなく全身を甘い誘いにまかせた。

 ――

 どれくらい眠っただろう、ドアがノックされる音で目を醒ました。

 ジャージ姿のまま急いでドアを開けると、そこに立っていたのは制服姿の若い警察官だった。手には黒い表紙の台帳のようなものを持っている。

「高井戸署ですが、住民調査でおうかがいしました。ご協力お願いします」

「はあ」

「こちらは鈴置拓さんでよろしいですね?」

 警察官は台帳を広げながら訊いた。

「はいそうですが……」

 僕は怪訝な顔で答えた。

「こちらは、おひとりで住んでらっしゃる?」

「ええ、僕ひとりです」

「年齢は?」

「28になります」

「わかりました。この建物はお宅1軒だけですから、空き巣とか放火に注意してください。もし不振なことがあるようでしたら、すぐに署のほうに連絡お願いします」

「はあッ! 嘘でしょ?」

 警察官のいっていることがすぐに理解できなかった。

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