第42話
あくる日から僕の生活は2本立てとなった。でもまだそうなったばかりなのでどこで歪みが顔を出すのかわからなかったが、そんなこといまの僕にはどうでもよかった。
なぜならば、どん底を見て来た者にとってこれほど華やかな明日があることは言葉につくせないほどの喜びがあるのだ。
僕は思わず左の中指の指輪をそっと撫でた。
その冷たい感触に自分が蘇ったような錯覚をした。
――
琴ぶきには朝10時までに顔を出し、ランチ用の仕込みに入る。
僕の仕事はえび天用のための下拵えがもっぱらで、延々とその作業をやる。それがすんだら今度は天つゆに入れる大根おろしを拵える。
客が集中するのはだいたい1時までで、その間ひっきりなしにさげられて来た器を洗う。
戦場のような昼の営業がすむとやっと食事にありつける。毎日これの繰り返しだった。
仕事を終えてアパートにもどるのは3時くらいで、それから3時間ほど休憩してから夜の仕事に向かう。はたから見たら大変そうに見えるのだろうけれど、僕にしてみれば忙しいなかにも充実感のある日々を送っている。
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