第36話
「サンキュウ、ああよかった。そしたらいつ教えてくれる? なるべく早いほうがええんやけど」
「僕だったらいつでもいいですよ、夜以外だったら」
「おおきに。そしたら、きょうはあかん?」
「いえ、きょうと明日は店は休みですからかまいませんよ」
「そしたら、うちご馳走するから、いまから一緒にお昼食べて、それからアパートにもどろ」
西野ネエさんは、いい終わるか終わらないうちに歩きはじめていた。
駅前を離れてアパートに向かって歩いている途中に、1軒の中華料理屋があった。
「ここでええ?」
西野ネエさんは店の入り口にさげられた赤い暖簾に手をかけながら訊く。すでに入ることを決めているようにも見えた。
店のなかに入ってみると、時間が少しずれたせいか客は少なかった。
「なに食べる?」
西野ネエさんは油で薄汚れたメニューを見ながらたずねる。
「僕はチャーラーでいいです」
するとネエさんは、店員を呼んでチャーラーと餃子を2人前、それにビールを頼んだ。
「昼からビールですか?」
「そやかて、餃子いうたらビールがつきもんちゃうの」
ネエさんはそれが当然といった顔でタバコに火をつけた。
昼をすませてアパートもどると、荷物を部屋に置いて僕はすぐ2階に向かった。
ネエさんの部屋に入ると、すでに赤いボディのパソコンが用意されてあった。まさにネエさんのいっていたとおり、まったくの新品だった。
僕は早速電源を入れ、システムを立ち上げるとひととおり内容をチェックする。
別に問題はなさそうだった。ネエさんにもらった広告の裏側に、ネットとメールの手順を書き込み、
「ここにやり方を書いておきました。もしまたわからないようでしたら聞いてください」
「ほんま? おおきに。ほなまた教えてな」
ネエさんは淹れたてのコーヒーを僕の前に置くと、広告を手にしていった。
簡単に野菜炒めで夕食をすませると、買ってきたテレビをダンボールから出して組み立てにかかった。ざっと取扱説明書に目をとおしてアンテナをセットし、わくわくしながら電源を入れた。
久しぶりに観るテレビに嬉しくなって、リモコンを持ったままチャンネルを変えまくった。画面に番組表を出して、なにか面白そうな番組はないかと探していると、9時からアクション映画があることがわかった。
映画に集中することができるように、片づけ物をしていつでも寝られるように布団まで敷いて時間が来るのを待った。ところが、あと15分ではじまるとなったとき、突然の睡魔に襲われて、いとも簡単に埋没してしまった。
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