第18話

「指輪ドウデスカ? トテモ安イネ。ダッテ、コレ本物ノシルバーナンダカラ」

「いくら?」

 弟が欲しそうに眺めているのを見て、僕はつい訊いてしまった。そこを見逃さなかった外人は、

「タッタ7千円デス。ドウデス安イデショ? ソレト、コレハナイショノ話ナノデスガ、コレハナニヲカクソウ『ラッキー・リング』ナンデス」

「ラッキーリング?」

「ソウデス。見テクダサイ、ホカノトハ別デショ」

 そういわれれば確かにほかのとは別の場所に置いてある。

「モウスコシハナシシテイイデスカ? ドリームキャッチャーヲ知ッテルデショ? ソレヲ最初ニコシラエタ、インディアン・オジブワ族ノ祈祷師ニ特別オイノリシテモラッタ指輪ナンデス。ソンナニタクサンハアリマセン」

 弟は説明を聞いてさらに興味を持ったのか、何度も手にして見回していた。

「祐二、買ってやろうか?」

「だって、7千円もするんだぜ、兄貴」

「いいよ。おまえになにもしてやってないからこれくらいいいさ」

 僕にとったら確かに高額だけれど、あとから母親に貰えば同じことだとそのとき思った。

 茶髪の外人に左手の中指にはめてもらった弟は、はじめて身に着けるアクセサリーにとても嬉しそうな顔を見せた。

 半年後、その龍の指輪の効験こうけんがあったのか、名古屋ではそこそこの大学に合格をした。

 自慢じゃないが、学力は僕のほうがまさっていて、どちらかといえば弟は勉強をあまり得意にしていなかった。

 そんな弟がすんなり志望校に合格できたのは、ひょっとして指輪のせいだったのかもしれない。それ以外にも、彼女ができたとか、テストのヤマが大当たりだとか、聞かされた数は枚挙にいとまがない。それが自分でもわかっていたのか、いつのときも肌身離さず大切にするようになったと嬉しそうにいっていた。


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