第13話 4
子供が騒いでる声ではっとして目が醒めた。慌てて時計を確認する。時間は10時を過ぎていた。
(――ああ、そういえばきょうは日曜日だった)
でもこのアパートに子供のいる家族は住んでいない。だとしたらあの嬌声は夢かそれとも空耳だったのか……?
おそらく近所の子供が遊びに夢中になってアパートの敷地に迷い込んだのだろう――そんなことを考えながら部屋のガラス戸を目一杯開けた。少し風が強い。
このころなるとあの気怠さを持った冬の陽射しが姿を消し、想像できないくらいキラキラと耀く陽光が部屋中に弾む。1年でいちばんいい時期だと思った。
休日の午前中にしかない独特の匂いをたたえた清冽な空気を胸に吸い込んだ。そしてゆっくりと吐き出そうとして地面に目を移したとき、僕は薄いラベンダー色の布切れが落ちているのに気づいた。
その艶やかな布切れを手にしてみると、それは女性のショーツだったのだ。あまり覚えのない布の感触を愉しみながら周囲を見回すと、204室の庇に洗濯ものがびっしりとぶらさげられたハンガーが風でクルクルと回っているのを見つけた。
しばらく考えたあげく、このままでいたら変質者と間違えられかねないと思い、見えないように手のひらのなかに丸めて、2階への階段を昇った。
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