第10話
「よくみなさん集まって飲まれるんですか?」
僕はビールを半分ほど飲んでから誰とはなしに訊いてみた。
「そうだなぁ、どうだ1週間に2回ぐらいか」
野田老人はほかのふたりの顔を交互に見ながら焼酎の水割りを口に搬ぶ。
「まあそんなペースかしら。あのね、ここではみんな役割分担があるの。野田さんは場所と焼酎の提供で、井上さんはビール担当。このわたしは惣菜屋さんっていうわけ」
「そうなんですか。知らなかったので僕は手ぶらで参加しちゃいました、すいません……」
「いいのよ。たまには変わった顔ぶれで飲みたいじゃない。だって毎度毎度同じジイさんの顔見てたんじゃ飽きちゃうから、ちょうどよかったのよ」
「おいおい、お嬢ずいぶんじゃないか。オレだってたまには若いオネエちゃんと飲んでみたいさ」
井上さんは手にしたグラスを置きながら坐りなおした。
「そんなに若いのがよかったら、高いお金出して飲みに行ったらいいじゃない。そんな甲斐性もないくせに、贅沢いうんじゃないの」
「まあまあ、そのへんにしときなさい。このふたりは普段仲がいいのに、酒が入るとこうなっちゃうんだからな」
「いいですね、こうやっていいたいことがいえる仲間って」
僕は井上さんと花木さんに缶ビールを注ぎながらいった。
「鈴置クンはどうしてこのアパートに引越して来たの?」
花木さんがビールを注いでくれた。
「はあ、まあいろいろとあるんですが……」
「いいのよ、いいたくなければ無理にいわなくても。誰にでもそれなりの事情ってもんがあるんだから」
「いえ、そんなんじゃないんですけど、なにから話したらいいのか……」
僕は本当になにを話したらいいのかわからなかった。
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