0117 女性
「これは?」
「これは
「これは?」
「これは
「じゃあこれは?」
「これは
「これも好き」
「これは
「いろのなまえ、たくさんあるんだね」
「
「いけなみさん、すごいね」
「私の年長さんの時より、陸くんの方がすごいと思うよ~」
「えへへ。そうかな~」
「はーい、じゃあ今日はこの4つを陸くんにあげまーす」
「いけなみさん、ありがとう。どれか、ななみちゃんにあげてもいい?」
「いいよ。陸くんが好きな人にあげるといいよ~」
俺たちは『
「陸くん、またね」
「またね、いけなみさん」
池浪は陸くんに優しくハグをした。そのふたりの笑顔は
「もう、いいのか?」
「はい、ありがとうございます」
先にデカい門の手前で待っていた俺にそう告げ、静かに歩き出した池浪の表情は、先ほどまでとはまるで違う
初公判の日の、その裁判所へ向かう前ここに寄らせて欲しいと言って来た池浪の本心は、俺には当然分かる
地方裁判所までの道のりは、何か特別な緊張感があった……例えて付け加えるならば
つい先ほどまで秋晴れを感じさせてくれていた空は、次第にその様子を変え、透き通っていた
俺は、自分たちが知った『
――当日開廷の少し前に交付される裁判の傍聴券は、傍聴希望者に対する抽選が行われ、予定数を少し余し締め切られた。
俺も池浪も、裁判を傍聴するのは初めてではない。大抵は新人の頃、先輩に連れられメモ係を命ぜられる。裁判の傍聴では録音や録画は禁止されているためだ。
「鳥嶋さん、今どんな気持ちですか?」
池浪がしばらくぶりに言葉を発したように思えた。俺は何も考えず正直に今の気持ちを述べた。
「腹が減った」
「どないやねん」
池浪がけたたましく
裁判所の入り口を入って
3階には俺たち同様にマスコミの姿もあり、他社の見たことのある顔も見えた。ただ俺は他社の連中が超嫌いだ。
――「あれ、カナブンのバードじゃね?」「え、マジ?あの?」
それでヒソヒソ喋ってるつもりか? 誰がバードじゃ、しかも、カナブンじゃねえ!
――場所が場所だけに、無表情に心の中だけで相手を
303号法廷という部屋の傍聴人入口の横には、開廷表にあった裁判名が書かれている。
被告人名<蒼井果奈>
今日この女がどんな人間なのかが明らかになる。
法廷内は正面に法壇、その前に証言台があり、右の弁護側席の前に被告人が座る形になっていた。俺は検察側席に近い、傍聴席の左の方に座った。次いで池浪は俺の右隣に座る。見るとその手には薄緑色の石が握られていた。
やがて、両脇に刑務官が付いた被告人が法廷内に入ってきた。長い黒髪を後ろで結んでいる蒼井果奈は、写真画像で見た印象よりやや線が細いように感じた。
続いて検察官と弁護人がそれぞれ入廷した。
蒼井果奈の弁護人は『女性』だった。
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